今年も「暑い」を通り越して「暑すぎる」日が続く夏。どうしても「涼」を求めて涼しいエアコンの効いた室内での生活が多くなり、冷たい飲み物の消費量も増えていき、食事にしても火を出来るだけ使わずに調理をして、食べるときも熱くない物になりがち。そうめん、冷やし中華、ざるそば、冷やしうどん等、麺類で冷たい出汁で食べる食事の割合がどんどん増えている気がします。ご飯を食べるにしても、炊きたてよりは常温まで冷めているお握りとかの方が嬉しいかもしれない。
今では製氷技術や流通が発達していて、コンビニに行けばいつでもロックアイスは購入出来ますし、多くの冷蔵庫には自動製氷機が付属していて、こちらもいつでも氷を調達することが可能。私が子供の頃の半世紀前でも、冷蔵庫に製氷室みたいなものがついていて氷を作る事は出来たけれど、四角い窪みのある製氷皿に水を入れて氷を作るだけなので、一度に作る事の出来る氷なんて、グラスに数杯分程度。冷やすために氷を入れるというよりは、清涼感を出すために氷を一つ入れる程度でした。あの頃の「冷たい物」ってどうしてたかなと記憶を辿ってみると、うちは当時は簡易水道で井戸水を使用していたから、夏になると結構冷たい水が出ていたんですよね。だから、大きな薬缶一杯に麦茶を作り、その薬缶を大きなタライに入れて水をちょろちょろ流しながら冷やしていて、これが結構冷たくて美味しかった。麦茶の薬缶だけでなく、やはりタライに水を張り、スイカだとかキュウリなんかを冷やしていたこともあり、昔は水の冷たさ、多分10数度くらいの水温が「冷たい」の規準だったような気がします。今は、氷がいつでもどこでも手に入るから「0度」近くまで冷やされている物が当たり前ですけど、昔は冷たい井戸水がその代わりだったような気がします。
考えてみたら、日本人って「冷たい食事」を気にしないというか、この時期は逆に好んで食べますよね。今のように技術が進む以前から、氷だってそんなに潤沢に簡単に入手出来ないような時代であっても、井戸水だったり湧き水みたいな自然の「冷たい水」を利用して「冷たい食事」を作って食べていたんじゃ無いだろうか。よく見るYouTubeのコンテンツの一つに、海外から日本を訪れて、日本の観光地とか滞在の様子を配信している動画をよく見ますが、その中には食事の風景とか様子を映しているものも多く有ります。そんな様子を見ていると、結構「冷たい食べ物」に戸惑う様子が伺えるんですよね。ラーメンは、もう海外でも有名な日本の食べ物だけれど、最近だと「冷やしラーメン」なんていうのも結構出てきているけれど、それが以外というか戸惑いを感じるらしい。そば、うどんにしても、温かいものと冷たいものが並んでいたり、大体「冷製パスタ」なんていうのは、日本人が作り出したんじゃ無いだろうか。本場のイタリアでは絶対生まれない気がする。冷やし中華だって、元々元祖の中国では「冷たいものは体に悪い」ということで、お握りだって食べないような国ですからね。それをわざわざ冷やして食べる何て、何を考えているんだという事かもしれない。
あくまで個人の勝手な想像ですが、日本の場合結構湧き水が多くて取水しやすく、また湧き水の場合夏は冷たく冬は暖かくなるので、特に夏はその冷たい水を利用して少しでも涼を感じる食べ物が発達したんじゃ無いだろうか。「暖める」事は、何か燃やせば簡単にできるから、昔から可能だったと思うけれど、「冷やす」事は昔だと「氷室」とかで氷を保存するしか無く、それは極々限定されたもの。一般的には、やはり冷たい井戸水あたりが「冷やす」限界だったと思うんですが、それでも夏の暑さと比べたら、当時としては「十分に冷たい」と感じたのかもしれない。京都だったかな、水ようかんを器に入れて、それを流水に入れて冷やして食べるものがあったと思いますが、ああいうことが多分全国的にどこでも可能で、そこにそうめんを流したり、野菜を刻んで入れて味噌で解いてみたり(冷や汁だったかな)とか、冷たい食べ物も多く生まれたんじゃ無いだろうか。それが製氷技術や冷蔵技術が発達してくると、日本人の拘り精神に火がついて、さらに「冷たい食べ物」がどんどん発達していったというのが、今の状況のような気がします。単に、冷たくするだけでは無く、「冷たくて美味しい」という所を追求するのが、日本食の拘りであり初めて食べるであろう訪日観光客の舌も満足させる品質と内容になっている。そのうちに、「夏の暑い時期は、日本に行って日本の冷たい食事を楽しもう」みたいな目的の観光が定着するかも。






