中国人民解放軍機による、空自F-15へのレーダー照射事件。中国側は事前通告したという音声通話記録を公開しましたが、当該機の通信記録では無く、艦船同士の連絡内容と思われる内容で、且つその通話内容にも疑念が生まれるくらいの内容。ただし中国側の主張は、中国艦船からの訓練開始通告に対して、日本側艦艇から「了解した(I copied)」という確認があったと主張して居るけれど、これは既に日本側から指摘されているように、この返信は通信の受領(受信)を意味して、その内容の了解・了承を意味しない事はしっかり認識しないといけない。言ってみれば、お客様から電話があり一方的に仕事の依頼なりを要求された後で、こちらから「お電話ありがとうございました。」と言ったら「じゃぁよろしく」と全て完了したと思って電話を切られるような話。こちらは、電話を受けたことに対して「ありがとうございました」と言っただけで、相手の要求を受け入れたわけじゃ無い。
"I copied you message."と言えば、「貴方の通信を(ノイズや不明瞭な部分無く)受信した」という意味で、これは昔は通信環境もそんなに精度が高くなかったから、まずは通信内容が相手に伝わっているのか、その確認からする必要があったからなんですね。今回公開された通信記録は、中国側の音声は兎も角日本側からの音声にもノイズや歪みみたいな物が無い、 凄く鮮明な音声に聞こえるんですが、その辺りも日本側の録音していたであろう通信記録と比較すれば自衛隊的にはいつどこで本当にあった通信記録なのかは直ぐに分かるでしょうね。しかも公開されているのは、中国側からの送信と、それに対して「受信した」という日本側の返信だけで、通常ならばその後に続く通話があったと想像出来るのにその部分が無いのが不自然。
やはりこの「I copied」を調べたこちらの方の記事だと、「"I copied."には"I understood."の意味もある」と書かれていて、それ故に「理解した、了解した」というニュアンスもあると言われているけれど、日本語では「Understand=理解した」だけれど、英語的には「Understand=(相手の言い分を)聞いた(同意するかどうかは分からない)」という意味の方が強いともう。「I understand ≓ I see, I hear」くらいの感じじゃ無いだろうか。相手に同意するなら「I agree with you.」とか「I have no objection against your thought.」みたいな言い方をすると思う。電信通信の時代には、トンツー(単音、長音)の組合せで通信していたから、その組合せを紙テープに穿孔して居た時代もあって、確かその頃は「Do you read me?」というのが「受信出来た?」の確認なんですよね。"Copy"も同様で、要するに「送信した文章と同じ物がそちらにも届いているよね?」という確認だから「Do you copy me?」「Yes, I copied.」というやり取りが成立するわけで、
そこで互いに文章内容が一致したことが確認されて初めて内容に関しての確認に進むわけです。但し、軍隊だと一通信士がその内容に関して質問することは無い(出来ない)ので、送信文書と同一の内容を受信したことを確認したら、それをそのまま上官に提出するだけ。だから通信担当者としては、内容に関して「同意する」も「了解する」も無いはずなんですよね。当該通信が、両軍の責任者同士が直接対話していたならまだしも、一般的な通信であればその通信担当者が内容判断をして決定する事は無いはず。中国側だって、指定された命令内容を通信担当者が日本側へ送信しているだけで、言ってみれば宅配荷物を届けに来てくれたクロネコのドライバーさんに、その品物の内容を聞いても分からないのと同じ。同様に荷物を受け取った側としても、荷物は受け取ったけれど開けて見て問題があれば送付元にクレームするように、受け取っただけでトラブルが無いとは限らない。公開された通信記録が本物の通信記録の一部だとしても、本来の意図とは全くかけ離れた部分をいかにも本物らしく言うしか反論材料が無い中国側の苦労がうかがい知れる状況じゃ無いだろうか。で、日本側が反論すると、後はもう恫喝と無意味な論点のすり替えで自分達の正統性だけを声高に主張するだけという、いつもの「中国仕草」で終わりそうな気がする。