2026年7月22日

Game Changer

NHKスペシャルで放送された「インサイド・トヨタ」が結構話題になっています。トヨタ方式に関して賛否有る中で個人的に見た範囲では、中国勢7:トヨタ3位の割合で中国勢有利トヨタ劣勢みたいな印象を受けます。その中でも一番の理由が、中国企業の「スピード感」と「選択と集中」。スピード感では、兎に角作っては失敗し作っては失敗して完成度を上げていく工程。これを24時間回しているという話も聞くけれど、本当か否という印象も。選択と集中では、自動車ではBEV(Battery Electric Vehicle)に全振りして、国家も含めてインフラから置き換えるわけですからね。BEVでは世界トップメーカーのBYDだって、最初はバッテリーメーカーだったわけですから。

そんな中で「24時間体制の開発」と言われているんだけれど、本当だろうか。例えば、時差を利用して世界各地で分散開発することは、私もやっていました。昼夜がほぼ反転している日本とアメリカの東海岸の開発拠点で、日本の朝-アメリカ夕方と日本の夕方-アメリカの朝でそれぞれ引き継ぎをして、「仮想24時間開発体制」みたいなことはやっていました。但し、その場合でも分散の仕方が重要で、例えばソフト開発なんかでも一つのコードを複数で開発するようになると、必ず不整合が発生したりコンタミネーション(コード汚染)が発生したりして難しい。昨日分散しても、予めしっかりとインターフェース回りとか共通項目や共用ライブラリーみたいなところを確実に定義しないと、勝手な変数が使われたり、ローカルライブリーがいつの間にか挿入されていたりと、中々これも大変。よほどPMとかチームリーダーがしっかりしていないと、かなり難しい。それでもソフトの場合は、コード自体は複製して各所に置けるから良いけれど、車のようにハードウェアとなるとそうも行かない。一箇所で24時間開発体制をとるとすると、8時間交代としても最低3チーム必要だけれど、そうすると作業時間帯が固定されてしまうから、最低でも4チームは必要。幾ら人材豊富な中国と言えども、中々大変じゃ無いかなぁ。

それでもスピード感を加速させるためには、そういう開発体制だけで無く、文字通り製品品目を絞って効率的に資源投入しないと無駄は逆に増えてしまう。その為にも「選択と集中」が重要で、その狙い所が外れると一気に消滅してしまうことも。トヨタもそうすればと言われるけれど、トヨタはトヨタでそのスケールメリットを生かして、有る程度のメリハリは付けるけれど、可能性は残しておく戦略なんじゃ無いかと思います。要するにリスク分散ですよね。で、実際のところ世界がBEV一色だったけれど、結局はHVとかPHVというところが今はまだ主流なわけですから。とは言っても、いずれはBEVに向かうことは確実だと思うけれど、その為にはまだまだブレークスルーは必要だと思うし、膨大な数残っている内燃機関ベースの自動車を、それをすててBEVへ移行しようという「動機(インセンティブ)」が、まだまだ少ない気がします。個人的には、インホイールモーターが実用化されて、今の自動車では出来ないような移動方法、例えば真横に移動するとか、回転半径が凄く狭いとか、そう言う精度の高い動作ができる様になると、自動運転とかAIによる運転補助みたいな所が今よりも生きてきて差別化に繋がると思うんですよね。

BEVのネックは、やはり「給電設備」だと思うんですよね。それは、給電可能地点の数と給電時間が、まだガソリンスタンドの数や給油時間と比較するとまだまだ足りない。急速充電の仕様も出てきているけれど、対応している場所は限定的だし安全性とかもまだ不安が残るところ。日本では、確か200V系が最大値で、これで30分間給電で100km分充電出来るんだったのかな。30分100kmは、やはり物足りないですよね。あと、給電可能地点数も少ない上に、それなりに時間が掛かるから、30分の給電が終わっても前の車が移動しないと自分の車への給電は出来ない。長距離ドライブなどの場合を除けば、自宅に給電設備を設置すれば、就寝中に給電して、毎朝出掛けるときには満充電状態という環境も可能だけれど、その自宅給電設備設置にもそれなりにお金が掛かるわけだし。ディーラーによっては補助も出してくれるらしいけれど(確かLexusはそんなサービスがあった)、その後の維持費だって考える必要があるし、マンションなんかだと厳しい状況も。例えば、BEVの未使用時間帯に、BEVが自動運転で近くの充電場所へ移動して、自動的に給電をして自宅まで戻るような仕組みとか出来たら、急速充電設備を集約しつつ、「バッテリー切れ」をそんなに心配しなくても良くなると思うのだけれど、どうだろうか。でもそれって、ロボット掃除機の挙動と同じだなぁ。それは嫌だなぁ(笑)。でも、そう言う「給電ステーション w/ 自動運転自動給電」というのが、BEVでのゲームチェンジャーになりそうな気がする。

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