2025年5月22日

Borderless World

NHKの配信記事から、最近の生成AIやそれらを利用したツール類のお陰で、「日本語」という言葉の壁が低くなり、海外から日本を標的にした詐欺メールが急増しているという話。確かに、現在の世界人口約80億人のうち、日本語話者はほぼ日本人の人口程度だから約1.3億人として、世界人口比で1.6%程度の規模。そこに対して、一番規模が大きいであろう、英語や中国語等とも大きく違う言語体系の言葉で、単純に翻訳しただけでは駄目な言葉に、これまではコスパがあわないから安全だったけれど、生成AIという無料で高機能な翻訳エンジンが登場してしまうと、これは日本人にとってはたまらない。そう言えば、自分も最近こんな「詐欺電話」を経験したばかりでした(笑)。

この話を聞いて自分くらいの世代のエンジニアが思いだすのは、「PCウィルスは脅威だけれど、日本ではPC-98が殆どだから安心」という「PC-98最強説(?)」。世界標準はIBM-PCを基本とした「ATバスアーキテクチャー」や、そこからの発展形の技術が中心だったのに、それとは異なるNECPCのPC-98バスアーキテクチャーは、IBM-PCと互換性のない独自規格。更にその上に搭載されているOS(当時はDOS)も、PCメーカー毎に異なっていた時代だから、幾らIBM-PCにPC-DOSの知識があっても、NECPCのPC-98に98-DOSが走っている環境では手も足も出ない状態だったという時代。まぁ、そのIBMの日本IBMも、IBM-PCとは似て非なるPCを開発販売していたのだからなぁ。流石に、日本IBMはIBM-PCベースのPCへと舵を取り、さらにPC-DOSベースのDOS/Vなる日本語環境用DOSでプラットフォームの共通化をすると、結果的にそれが今のWindows PCの基礎というかスタートになるわけですからね。

最初の頃は、PCのハードが共通、OSが共通と言っても、まだアプリケーションレベルでは、英語版と日本語版は別れていたもので、結構違いがあったけれど、それも多言語サポートがどんどん進むと、本体の機能部分は共通で表示関係だけ言語対応するようなデザインに変わっていき、今ではダイナミックに言語変更することも(技術的には)可能な環境が提供されています。昔は、複数の言語環境をインストールしておいて、PCを再起動して環境を変えてテストとか開発とかしていったものだけれど、考えてみたら更に昔のパソコンは、アプリケーション毎に起動して切り替えていたわけだから、ある意味歴史は繰り返しつつ成長していると言えるのかも。

同じ日本人同士でも、悪い事をするヤツは日本人に対しても詐欺メールを送ったり言葉巧みに悪い事に誘導したりするので、言葉自体が悪いとか言うわけでは無いと思います。でも、相手を「騙す」という事は、言葉巧みに相手の興味を引いたり意表を突いたりという「言語化能力」が最大の武器になるわけだから、その部分を補完して補強するような生成AI利用方法が出てくると、それは新しい驚異ですよね。で、決してそれは想像だけの世界ではなくて、今の技術でも十分可能性は有る話。今の詐欺メールは、普通に読めばおかしな表現や言葉遣いは色々見つかるんですが、結局騙す方はそういうレベルでも引っかかってくれる程度の相手ならその後の詐欺行為への誘導も簡単という理由かもあるらしいから、実は言語能力はそんなに重要ではないという話も聞きました。だから、逆に最初の切掛の敷居が下がって多くの人が騙されるとしても、今度はその後の部分で効率がわるくなるかもしれない。まぁ、だからこそ証券会社の口座情報とか、よりリターンの大きな詐欺へと彼らも誘導して行くんだろうけど。言葉の壁の次は、リアルそのもののアバターが画面に登場して、「言葉」が「会話」とレベルアップしてさらに誘導されるリスクが高くなる気がします。そう言うものに対しての「対抗用生成AI」みたいな存在がまたれる時代になるんだろうか。

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