2025年9月14日

安価な労働力

最近の外国人労働者に関しての話題・報道や、製造業の中国から他地域へのリスク分散、さらには日本国内の労働録不足や賃上げなどの話題を聞いていて、ふと思いだしたのが30年以上前に感じた「素朴な疑問」。 当時(1980年代後半)は、日本のバブル絶頂期最後の時代で、特に自分が関わっていたパソコンの世界では、当時の国内家電メーカー各社が独自にパソコンを出荷している時代で、その多くはCPUはIntel製、OSはMicrosoft製だったけれど、マザーボードから本体のデザインにキーボードやマウス等、自社デザインの製造品という、当時の日本メーカーお得意の「垂直統合」の象徴みたいな製品でした。

その後、バブルが弾けて厳しいコストカットの時代になり、多くの製造業は当時発展途上で海外資本や人材の取り込みをしていた中国へと進出して行く時代になります。それよりも少し早い時期に、当時の私のマネージャーは社外の協力会社(所謂オフショア開発)を求めて、中国の沿海部を回って人材や協力会社を探していました。当時の日本人エンジニアのコストを10とすると、台湾エンジニアが6~7位で、中国の有名大学出身のエンジニアでも3位という時代でした。それが国内メーカーも中国へと進出しだすとどんどんコストが上がって台湾並みになると、今度はそのマネージャー氏は中国の内陸部へと人材・協力会社を探して、それこそ重慶とかの会社を開拓した最初期の人だったんじゃ無いだろうか。で、その内陸部のコストも高くなると、今度はベトナム、フィリピン、さらにはインドへと流れていったわけです。

当時からそういう流れを見ていて感じたのは、今は中国がある、さらにはフィリピンとか東南アジアの人材コストも安いけれど、それだってそのうちに国内と変わらなくなると次はどうするんだろうという疑問。失礼ながら、国の発展度は西へ行くほど低い傾向があったから、中国など東アジア、東南アジア、西アジア、と移動したら、今度はアフリカに行くんだろうか、と。でも、幾ら広いアフリカもそのうち開発されて発展して人材コストも上がるとなると、じゃぁ次はどこに求めるのか。もしかしたら、地位が逆転して欧州とか案外日本が「低コスト製造国」として、その時代には認知されるかもと考えたものでした。勿論それは、例えば日本はロボットが製造に進出していて、大量生産品は逆にコストダウンしているみたいな希望的観測もあったけれど、案外現状は当たらずとも遠からずかも。

全てがそうだとは言わないけれど、海外特に東南アジアからの安価な労働力確保のために「技術研修」みたいな言葉で隠して日本で就労させるのは、もう駄目だと思うんですよね。とは言っても、そういう労働力が無いと成立しない農業・産業もあるから、そこをどうにかしないと日々の生活にも影響が出てしまう。具体的に直ぐにアイデアが有るわけでは無いけれど、元々極端な低賃金労働力が存在しないと成立しないその仕組みの流れ(スキーム)を正すことを、政治はもっと真剣に考えるべきだと思う。結局見て見ぬ振り的なところもあるから、不法就労とか不法滞在みたいな二次的三次的問題を生んでいるわけですからね。アメリカの産業も、何百万人規模の不法入国者を安価な労働力として想定することで成り立っている部分もあって、どこの国も「安い労働力」には苦労しつつ、それが今の「不法滞在問題」にも繋がるのは因果応報みたいな気もします。賃上げが言われて実現しつつある時代に、どうやってそういう部分の労働力を確保するのか、何か別のインセンティブを作るとかしないと無理だと思うけれど、賃上げ以外で雇用者側の負担が少ないインセンティブって、何があるだろうか。解けない方程式を見ている気がする。

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