2023年5月16日

英語に救われる (2)

東洋経済ONLINEに掲載された「とにかく明るい安村」氏の「安心してください、履いてます」の芸が、英国版"BGT"で受けた理由についての説明記事。私も、この件が話題になって直ぐくらいに自分の感想をアップしたんですが、日本語と英語の語順の違いが偶然にもコール&レスポンス見たいな「場」を作って、それが更に盛り上げて大成功した、という理解は正しかったみたい。演出家が、もしかしたらああいう筋書きを書いていた可能性はあるかもと当時は思いましたが、帰国後に出演したラジオ番組だったかな、あれは偶然だったという説明をご本人がしていますからね。 

日本語の難しいのは、筆者も書いているように、主語や目的語を省いての会話が成立することで、日本語を英訳しようと思うと、この省略された文脈・語句も含めて英文に変換しないと、相手にとっては意味不明(意味不明確)な文章になってしまう。また、英語を日本語に翻訳する場合も、日本語では省略されている暗黙の了解みたいな部分も含めて日本語化されるから、日本人にすると回りくどかったり何度もしつこかったり、場合によっては省略されている理解とは異なる言葉にその部分が翻訳されて、逆に誤解されるような言葉に翻訳されたりする場合も有るように思います。英語を学び始めて慣れないうちは、相手の話す内容はある程度分かっても、なかなか自分の言いたいこと・伝えたいことが相手に理解してもらえず苦労することが続きますが、今にして思うと日本語をそのまま直訳では無いけれど日本語の字面を英語に変換して話そうとしているから、相手から「誰が?、何を?」みたいな部分が伝わらず困ってしまうんでしょうね。自分の経験から言うと、以前も書いたんですがどうしても日本語の語順に沿って英訳しようとするので、受動態で話をする事が増えてしまって、それが楽に感じてしまい一時期は常に受動態で話をしたり文章作成していたような時代もありました。ただ、受動態って相手からすると弱い主張というか自信の無い意見と受け取られるのと、英会話の場合まずは「誰が」という主語が重要だから、それが最後まで出てこない、場合によっては省略されることは耐えられないんでしょうね。だから受動態中心の話方から脱却するために、最初の頃はとにかく「I think...」とまず自分を主語に入れて考えを説明する事かから入って、"I think thaaaat... he needs...」みたいな時間稼ぎをしつつ、続く"That 節"で本来言うべき主語を見つけて使うようにしていました。それが慣れてくると、最初から「He needs」とか言えるようになってきたし。

日本語での「(安心してください) 履いてます」の英訳が"I'm wearing (pants)."と現在進行形というのも少しおかしいというのも、ネイティブの人の感覚としては分かる気がします。パンツをはいている最中と言う事は、それこそお風呂から出てきて体を拭いて、パンツに片足を入れたときにいきなりバスルームのドアを開けられた、みたいな瞬間になりますからね。しいて現在進行形を使うとしたら"Don't warry! I'm keeping my pants."とでも言うべきかも。ただ、何度かあの映像を見たり、この手の説明の記事なんかを読んでいるうちに思ったんですが、実は"I'm wearing pants."もあながち間違いでは無いのかも、と。彼の芸の面白みとしては、見る角度によって裸のように見えるんだけれど、実はちゃんと(小さな)パンツを履いていましたというギャップな訳ですよね。実際は履いているのに、見る角度によっては履いていないように見えるからビックリした、というのが笑いのツボ。でも、"I'm wearing..."と言うことで、裸に見えるシーンから、両手でパンツを示す決めのボーズに至る短い時間で、恰も慌ててパンツをはいたんだ、みたいなイメージにもしかしたら英語から感じられるのかもしれないかなぁと思うんですよね。その一瞬に履きましたみたいなコメントが、その前に裸に見えた動作とも繋がって「笑い」に味というか厚みを加える結果になったのではと考えるのは考えすぎかな。だから彼の一連のステージでの芸を見ていて日英(=欧米)の笑いのツボの違いみたいなものを感じたのが、最後に演じたスパイスガールズの所。日本人だと、履いているのに履いていないポーズが続くのを見て笑うので、何度も履いていないようなシーンが続くあの踊りながらの部分は笑いのツボが何度もあるわけです。でも、英国人(=欧米人)からすると、パンツをはいているのにはいていないように見えるのが最初のツボだけれど、そこから「履いていないと思ったら一瞬でパンツを履いた」という風に見えるところが二番目の笑いのツボになっている気がするんですよね。だから、曲に合わせて見えたり消えたりするのは、多分よく意味が分からなかったんじゃ無いだろうか。その前に演じた、サッカー選手、ジョッキー、ボンドの時と比べて、最後は余り受けていなかった気がします。でも最後に"Don't warry.  I'm wearing... (Pants!)"では盛り上がったけれど。

あと、この放送が英国版だったことも怪我の功名だったかも。英国英語だから、下着のパンツは"Pants"ですが、これがアメリカ英語だと"Underwear"になるわけで、そうなると"Don't warry!  I'm wearing... (Underwear!)"のコール&レスポンスは、2音節になる分ちょっと間が抜けた印象に感じられます。一言で"Pants! (パンツ!)"と叫べるから、上手い具合に掛け合いが成立するんじゃ無いだろうか。更に、今回英語版のBGTで受けたからと言ってそのままアメリカ版AGTに持っていって同じ事をやったら"Pants!"と言ったら日本語で言うところのズボンになるわけで、そうなると全く意味が通じない。あの番組出演に関しては、所属している吉本から言われて出たと安村氏本人が言っていたけれど、吉本としてはそういう所まで考えてAGT (American's Got Talent)ではなく、BGT (Britain's Got Talent)を選んだとしたら、その担当者は凄い策士だと思うけれど。

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