2021年6月9日

「ワクチン敗北」と言うメディアの敗北

テレビ朝日サイトに掲載されている、日本のワクチン獲得・接種に関する取材記事(前編後編) 。この記事が、今年の初め頃とか、精々高齢者向け接種が始まる4月初め頃位に掲載されていたならまだしも、この時期にわざわざこう言う記事を作成して公開する意図が理解出来ない。この記事で一寸悪質だなと思うのは、前半と後半の繋ぎ部分。前編の最後にはでは、日本のワクチン供給契約の話をしているんですが、昨年7月末に今年6月末までに6000万人分(1億2000万回)のワクチン供給の「基本合意」(※わざわざ括弧書き)したといい、しかし昨年11月頃から総理官邸で焦りが募り始めた、と言って終わります。続く後編の初めには、その事を繰り返して始まり、さらに国内知見が進んでいないこと等からファイザー社トップ会談の話へと続きます。その結果、供給は前倒しされたけれど数量は少なくワクチン不足が発生して全国で混乱したと言う説明をしている。

先にも書いたように、日本もまだ開発途上だった英国ファイザー社と供給の話を昨年7月にしているわけです。残念柄、開発国でも無いしその時点で製造国でもなく、また新型コロナウイルスの感染度合いにしても奇跡的に少なかった日本は、優先順位としては後になるのは仕方の無いこと。そこに、油断が無かったとは言わないけれど、でもそのまま日本は感染終息するとは考えていなかったわけで、だからこそその後にモデルナ社との国内供給契約と武田薬品の国内製造の三者契約が2020年10月末に成されるわけです。昨年12月の時点で、

  • ファイザー社製ワクチン: 1億2000万回分
  • モデルナ社製ワクチン: 5000万回分
  • アストラゼネカ社製ワクチン: 1億2000万回分
と日本の総人口を上回る分の目処を付けて、さらにこの後ファイザー社製ワクチンの5000万回分の上澄みもされるわけです。今年に入ってからは、ワクチン不足からEUからの輸出制限がかかるなか、日本には5月に入ると毎週1000万回分輸入されているわけで、今の所ワクチン不足という状態では無い。欧米では昨年末から始まっている接種が、日本国内では医療関係者向けの接種が始まったのが今年の2月からだけれど、それだって過去メディアが散々煽ったワクチン不安の理由から、国内治験を実施したからで、そう言う事も記事の中では説明されていない。初期の輸入量に関しても、「僅か...」という言い方をしているけれど、以前も書いたようにいきなり大量接種するなんて言うことは混乱を招くだけで、先ずは少ない事例からスタートして経験値と知見を積み重ねて増やしていく方法は、私は非常に正しい判断だと思います。勿論、今にして思えばもっと早く、もっと効率的にワクチン接種をスタートさせる方法はあったかもしれない。でも、あの時にどう言う判断をしたかという事を後付けで批判する事はフェアでは無いし、それならば幾らでも批判も可能。それは、個人の感想であって、報道がするべき「批評」では無いと思う。

記事の中では、海外での接種対象者管理方法やワクチン開発に関して、国内での管理方法不足や製薬メーカーの開発力不足を政府に対して批判している。でも、マイナンバーに代表されるような統一的な管理番号制に長年反対してきたのは、この人達な訳だし、それは今でも変わらない。台湾を見習え、シンガポールを見習えと言いつつも、彼らがどう言う形で国民層番号制を導入していて、それを使用しているかは言わない。それを日本に導入すると言えば、「個人の人権が」とか言い出すのは昔からの話なんですよね。ワクチン開発にしても、それこそHPVワクチンの反ワクチン運動などは、朝日新聞の報道が原因と論文まで書かれているわけで、そう言う過去の話を知らないわけじゃ無いだろうし。確かに、どう言う批判があっても必要と思われることに対して政府がちゃんと整備して行くことは必要。でも、それをしたら今度は「人権侵害」と批判の矛先を代えてまた批判を続けてきたのが、彼らメディアな訳で、少なくとも国内ワクチン開発の不備を言うのであれば、まずは自分達の行いの反省からするべきだと思う。

最後では、乱立するシステムを批判し「失敗から学び次の危機に備えた改革を」と結ぶんですが、ではメディアは過去の誤報騒動やバイアスが掛かっているように強く感じられる報道姿勢から、何を学び何を改革してきたのか、是非記事にして貰いたいところ。システムが自治体で乱立しているのは、それぞれが担当責任を持っているからで、それを統一しようと思えば、全国的に統一されたフォーマットを作らないといけない。本当なら、それを軸にしていろいろな事が効率化出来るけれど、結局は「個人の人権侵害」という話になり、一つのことしか出来ない、一つのことも出来ないシステムになってしまう。確かに、日本政府の今回の対応は十分ではなかった事は事実。、未だ理由は不明ながらも、国内の感染状況は欧米諸国と比較して一桁二桁低い状態が続き、今もその状況は続いていることで、何とか致命的な状況に陥っていない幸運はあるでしょう。でも、他国に先駆けて人口を上回るワクチンを確保し、さらにmRNA型とベクター型と異なるタイプのワクチンを準備してリスク分散も考え、さらに余剰分に関しては他国支援にも振り分けている。ワクチン接種は、英国や米国と比較して2~3ヶ月遅れてスタートしているけれど、既に国民の1割分接種は進み、6月末までに高齢者向け接種完了と言う目標も見えてきた。さらに接種スピードもアップして、100万人/日も既に超えている様子。後は、経済対策と困窮者対策を今一度見直して、より手厚い支援がされれば、私は今は60点位だと思うけれど、経済対策が追加されれば80点90点位上げても良いと思う。そこまで突っ込んだ内容で、今どう言う支援が必要なのかくらいまで取材して記事にするならまだしも、何か批判をしたいが為に、マイナス要因だけを切り貼りして作った記事のようにしか見えない。それが意図的な物でも、無意識の行為でも、コロナ禍で最大の問題点はやはりメディアであり、それを利用している人達なんだろうな。

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