2021年3月19日

差別の拡散

佐々木宏氏の差別的発言を記事にした文春が、自らのサイトでその記事を紹介しているんですが、 佐々木氏の発言内容と同じくらい「酷いなあ」と感じることが幾つか。

一つは、tweetに貼付されている当該発言のLINEのスクリーンキャプチャー。元々の発言スレッドは、関係者だけのグループLINE内での発言なので、こう言う形で外部に流出するというのは、その参加者の誰かが提供するしか方法は無いですよね。昨日LINEのデータ管理関係で問題が指摘されたけれど、それとは直接の関係は無い話だけれど、それに絡めて「LINEでのデータ信頼性に不安が」という話は広がりそう。そう言えば、タレントのベッキーの不倫騒動の時も、当事者間のLINE画面が流出していたけれど、あれは上手くアカウントを作ってモニターしていたからだったっけ。少し前に、野村萬斎氏や椎名林檎さんがメンバーから脱退しけれど、あの辺りの出来事と関係あるんだろうか。しかも、1年前の話がなんで今頃、というのも解せないし。問題なら、その時に指摘するべきだと思う。

二つ目の拙い点は、文春自らが「差別発言」と言っている内容を、そのまま世間に無制限に公開することが、「差別の再生産」になるんじゃ無いかという事。その雑誌を購入して、雑誌に書かれた記事を読むのは仕方ないとしても、その記事全体では無く「差別的な部分(※イコール記事としての中心であり一番の売り物)」だけ抜き出して無差別に公開するというのは、結局文春自身も差別行為に荷担していることになるような気がする。只、これって悩ましいところで、実はそういう部分を気にしすぎて肝心の発言や全体の様子が曖昧にされてしまうと、本当にその場ではどういうことが起こったのか不確かになり、結局は記事やそれを受けて発言している人の意見が「真実」として確定してしまう。森喜朗氏のケースなどはまさにその例だと思うんですが、今回の件だって、ここには掲載されていないこの発言を含むスレッド全体を見たら、実はいろいろなアイデア出し、所謂「ブレインストーミング」だったとしたら、アイデアを出すために突拍子も無い事、駄目と明らかなことでも発言してみて、そこからの刺激で別のアイデアの発生を待つこともあり得ます。そう言う意味で、文春がこの部分だけ切り出して掲載しているのは、やはり自分達のビジネス優先で、差別意識に対しての啓蒙の気持ちは二の次三の次なんじゃ無いかと感じます。

三つ目に思うのは、渡辺直美さんのコメントが公開されていますが、彼女自身現在の体型を一つの「武器」として仕事をしている・続けることを明確にしています。そんな中で、例えば将来"Miss Piggy"関係の仕事、ミュージカルとか実写版映画とか、そんな仕事がオファーされたら、回りは今回の様に「差別」というのだろうか。LINEの豚のアイコンが、例えばMiss Piggyだったら、同じ内容でもかなり受ける印象は違うと思うんですよね。あるいは、日本なら宮崎アニメの傑作の一つ「紅の豚」のホルコ・ロッソ役が回ってきたら、それも差別というのだろうか。多分多くの人は、それらと今回の件は別の話と言うだろうし、実際そうだとは思うけれど、それでも今回の件を引き合いに出して批判する人は出てくるでしょう。そうなると、結果的に彼女の将来の可能性を幾つか否定してしまうことになるのでは。あるいは、彼女だけで無く、似たような体型を武器にしているタレントさんや芸人さん、あるいは擬人化することで何かネタにすることも、今後は否定されてしまうかもしれない。

「芸人の世界の話と、実社会の話は別物」と言われるかもしれないし、実際それは事実だと思いますが、でも最初に書いたように、記事掲載元の文春自身がそんなことを言わずに、その発言だけを切り出して公開・拡散しているわけで、それって彼らのメディアとしての社会的責任はどうなのかと疑問に感じます。そう言う発言が好ましく無いという主張では無く、「またこんなこと言っている、みんなで糾弾しよう」みたいな、変なヒロイズムというか、結局は何でも良いから話題を作って雑誌を売りたいという部分しか見えない。それって、言い方は悪いけれど、火の無いところに煙を立てているだけの気がする。で、本当に火が出ているところに対しては、見て見ぬ振りしていることも多いんじゃ無いだろうか。例えば、同じような発言を野党議員がしても、殆ど取り上げられることが無いように。それって、与党議員の発言は政権批判という「錦の御旗」が使えるけれど、野党の場合はそう言う事も無く場合によっては自らが批判される可能性もあるし、中には彼らにシンパシーを感じているメディアも多いわけだし。「差別」の話だけでなく、いろいろな事柄について、本来指摘されるべき事由では無く、自分達の都合でしか報じないから、いつも一過性でしかも何度も繰り返されるだと思う。

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