2025年2月26日

Killing Me Softly with His Song

アメリカのグラミー賞歌手、ロバータ・フラック(Roberta Flack)さんが闘病の末2月24日に亡くなったとのこと。日本でも「優しく歌って」「愛は面影の中に」等よく知られた曲で、私もiTuneの中に彼女のアルバムを入れています。

歌に対しての思い出や記憶以上に衝撃を受けたのは、ヒット曲の一つである邦題「優しく歌って」の英語名が"Killing Me Softly with His Song"だと知ったとき。まだそんなに英語が得意じゃ無い頃で、どちらかと言えば「苦手科目」だった頃。私は、どうも暗記物が苦手で、だから英単語や熟語を覚えることが中々進まず、ボキャブラリーが少なかったんですよね。一方で、文法も苦手だったんですが、とある機会に構文解釈の話を聞いて、それで一つ目が覚めました。私は一応理系だったので、数学とか理科(物理)はまぁまぁ得意でした。ですから、公式に当てはめて解を導くみたいなことは結構好きな科目。そんな中で、英語の例えばthat節などの関係代名詞の説明の時に、数学で言う所の「(...)」で括られた先に計算する部分みたいな説明を聞いて、それで何となく英文法の構造解釈は数学や物理の構文解析見たいな物が頭に浮かぶようになり、そこから文章読解の力が少しずつ付くようになり、それにあわせて単語や熟語も増えて行き、最後は長期出張で早口ネイティブとの毎日の会話で鍛えられて、何とか仕事や個人旅行では困らない程度のスキルまで届いたのは感謝。

前書きが長くなりましたが、そんな英語未成熟な頃の自分が「優しく歌って」の原題が"Killing Me Softly with His Song" 。直訳すると「貴方(彼)の歌で、私を優しく殺して」となるわけで、これを「優しく歌って」意訳した人も凄いと思うけれど、そうか英語だと「Killing me」になるのかと、「Kill = 殺す」という翻訳しか頭になかった私に取っては衝撃的な出会いでした。しかも「Killing me softly」って何だ? (笑) ヤクザ映画なんかで「ふっふっふっ、痛みがないように眠るように殺してやるぜ」みたいな台詞か、とか思ったりして。後々それなりに英語の世界に触れるようになると、英語表現だとこう言う大げさな言い方というか、大きな例え方をする事があるという事を何となく理解して行きますが、当時は「何て歌の題名だ」とビックリした記憶があります。

後にこの曲の英語の歌詞を聴いてみてビックリしたのは、日本語の俳句というか短歌というか、見事に同じパターンで、でも愛の軌跡みたいな物を表現しているんですよね。

Strumming my pain with this fingers
Singing my life with his words
Killing me softly with his song
Killing me softly with his song
Telling my whole life with his words
Killing me softly with his song

これを和訳してしまうと、勿論良い歌なんだろうけど感じるニュアンスというかセンスというか、それが違って感じられるからかなり印象も違う気がします。和訳の「優しく歌って」は名訳だと思うけれど、それだと「今この瞬間に優しく歌って」という印象を受ける。でも英語の動名詞で「Killing me」やそれ以外の部分も~ing系になっていることから、過去から今も続いている「時間」の印象を受けることが、英語と日本語で受ける印象の大きな違いじゃないだろうか。だから英文の歌詞を聞いていると、積み上げてきた歴史というか時間の流れと、さらにこれからの将来への時間の流れも感じられる気がします。どの国の言葉も、知れば知るほど奥深い物だと思うけれど、まだまだ英語も奥深いなと感じますね。

貴重な振り返りを与えてくれた名曲と名歌手のご冥福をお祈りいたします。R.I.P.

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