2024年1月25日

SFプロトタイピング

ジャーナリストの佐々木俊尚氏が、SF作家の小野美由紀氏とともに設立した「株式会社SFプロトタイピング」という会社。SF作家が、その企業の20年30年先のビジョンを「SFの想像力」で描き、その企業の言ってみれば「長期計画(Long-term Plan)」作成をするという内容らしい。SFというと、つい「荒唐無稽」というイメージが先行しがちだけれど、結構1960~1980年代のSFに描かれた社会や生活は、今の時代に実現しているものも多いし、場合によってはそれよりも先行して居るものも有るわけで、そう言う意味では企業ビジョンというか目標設定としては面白い考え方だと思います。

SFでは無いけれど、連載が終了してしまったけれど「こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)」の話の中には、今の時代の技術や社会状況を予言したかのように、当時書かれていたものが実現しているものが多いと結構話題になります。作者の秋本治氏はSF作家では無いと思うけれど、でもやはり物語を創る人というのは、そこに込める期待というか演出みたいなものが、未来予想みたいな感じになる可能性も高いのかな。私は子供の頃からSF小説が好きで、これまでに読んだ書籍のうち、7割位はSF小説だと思います。だから、技術的に「凄い」という印象を持つことが少ない反面、そう言う新しい技術に対しての抵抗感も少ないのかもしれない。ただ、技術的には抵抗なく色々なものに手を出すことを厭わないけれど、習慣的なものに関しては結構保守的かもしれない。例えば、私はインターネットや昔ならアマチュア無線も小学生の頃から始めていたけれど、LINEのようなメッセージアプリは駄目。拒絶反応が生まれるというか、インターネットを仕事で使い始めた1980年代、90年代にも、インスタントメッセージアプリって実は存在していて、メールよりも手軽ということで好きな人も居たけれど、あのこちらの都合を無視して突然送られてくる挙動がどうも性に合わなくて、当時から駄目でした。だから、電話も苦手なんですよね。突然掛かってくるのも駄目出し、こちらから電話するのも「相手が忙しいのでは」と躊躇する場合が未だに結構ある(笑)。

SFプロトタイピングというのは、長期間を前提にしたユースケースの設定みたいなものだと思うんですが、一方で単に思いつきで終わっては「SF小説」で終わってしまいます。そこには「PoC (Proof of Concept)」の要素も含まれていて、実際の検証作業は出来なくてもシミュレーションや疑似環境で体験出来るような、そういう要素も大いに含まれているんでしょうね。 多分個人的に感じるのは、この「Long-term PoC」みたいな要素の設定と作り込みが、このSFプロトタイピングの肝じゃないだろうか。20年30年先の技術ナノで、今できることは殆ど無いかもしれないし、仮に基礎要素や基礎技術があっても20年30年継続することは事実上厳しい。となると、何らかの加速試験をして見るとか、文字通り「コンセプトを作り込んだコンセプト」みたいなものを作って、そこで疑似体験してみて検証するとか。結構面白そうだけれど、時間が掛かる話だけに、それを続けていけるリソースとコストがどれだけ準備出来るかが大切だろうなぁ。

SF作家だから、何でもかんでも空想して小説の中で「擬似的に体験出来る」訳でも無いと思うけれど、やはりその作家さんの得意分野というか、SF作家としての筆力も重要だろうなぁ。小野美由紀氏は、実はお名前は存じているけれど彼女の作品は未読なので何とも言えませんが、ちょっと興味深く見ていきたい気がします。自分の仕事経験から言えば、昔は、Short-term, Mid-term, Long-termと、必ず三種類のプランを設定して、その上で直近の製品開発計画(Short-term Plan)を策定して、その仕事が完了すると、Mid-term/Long-termを結果から修正しつつ、次の製品開発計画を立てるみたいなことをやっていましたが、最近はとにかく今売れる製品を、みたいな風潮になってきたので、その企業が持っているような「匂い」というか「DNA」というか「イメージ」みたいなものが消えてきた感じがします。昔の家電ならば、SONYならSONYの、PanasonicならPanasonicの、東芝、三菱電機、等等デザインや機能を見ると「あ、〇〇」と直ぐにそのメーカーが浮かんだものでしたが、最近はそう言う経験が殆ど無くなってきている気がします。ブランド名を聞けば「どこそこのメーカー」とは分かるけれど、製品自体の醸し出す「匂い」というか「個性」が消えていると思います。その「個性」を生み出す一つの手法が、このSFプロトタイピング何だろうな。

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