2023年10月17日

寿司折りとお父さん

TLで、この会話が流れていたんですが、既に伝聞推定の時代なっていることをして今更ながら衝撃。そうかぁ、もうそんな時代なんだと思わずこぼれ落ちる涙を袖で拭いてしまう(嘘)。 

まだ、回転寿司が殆ど馴染みが無くて、高級では無くても対面式のお鮨屋さんが普通に街角のあちこちにあり、そこそこ安い値段でもお寿司やお酒が楽しめていた時代。サラリーマンなどがお鮨屋さんで飲み食いして、さて帰宅しようという時に、「大将、持ち帰りの握りの折りを一つお願い」とか言ってつくっ貰ったのが、この手にぶら下げている「寿司折り」。勿論、毎回有るわけでは無く、お父さんがそれなりにお金に余裕があり、酔っ払って機嫌が良い時のお土産。奥さんへの手土産なら一人前、子供とか居ると二人前とか握って貰ったなぁ。

当時は今よりも食品衛生の概念が低かったから、生物なんかも入っていたと思います。ただ、ちゃんとしたところだと、所謂「助六」と読んでいた干瓢巻と御稲荷さんだけとか、にぎり寿司の折りでも昆布締めとかコハダとか、仕事をした物を入れていて、活けの握りは無かったように思うなぁ。マグロだと、漬けは入っていても赤身や中トロ何かの握りは無かった気がする。巻物にしても、干瓢巻が一般的で、ギリギリ鉄火巻きが限界だったかな。太巻きも人気だったと思うし、お店によってはバラちらし寿司にしてくれるところも。なんせ、今だと駅弁とかでも保冷剤を入れてくれるけれど、そんなもの無い時代でしたからね。酔っ払って数時間後に帰宅出来ればまだ良い方で、電車の中で寝てしまい車内に折角の折り詰めを忘れると言う事も。

多くはお鮨屋さん帰りの自宅へのお土産立ったけれど、他のお店だと余り記憶に無いですね。焼き鳥屋さんなら焼き鳥のお土産とかは有ったかなぁ。基本食品衛生法とか保健所が五月蠅いので、昔は持ち帰りって余りやっていなかった気がする。会席料理店みたいな所で、生物は絶対に持ち帰らせなかったし。お鮨屋さんだけはあの寿司折りがあったのは、お鮨の出前とかあったから、生物を扱うのではあるけれど有る程度配達とかの事例があるからなのだろうか。 もともとお鮨自体が今でいう「ファストフード」で、ネタは加工済みのものが中心だし、ご飯だって酢飯にして居たわけだし。冷凍冷蔵技術が進んで、所謂「活け握り」が流行るようになってきて、こういう寿司折りが無くなったのは、宅配寿司の影響もあるのかも。それだけちょっとした贅沢だった「お寿司」が一般化したことの証しなんでしょうね。

時代とともに生活様式や食文化も変化していくことは当然なんだけれど、この「寿司業界」に関してはここ30年位で大きく変化した物の一つと言っていいでしょうね。その最大の理由は「回転寿司」の発展なんだけれど、それでも高級店から普及価格帯のお店まで残っていて、かつ日本文化の象徴の一つとして世界的な人気も誇っているのは凄いと思う。ただ、当時としてはたまの贅沢たまの喜びであった、ああいう「お土産の寿司折り」みたいなものが無くなっていくのは寂しいですよね。まぁ、お小遣いが減らされて、過程での権威も無くなり、仕事は忙しくて厳しくて、給料も上がらないと、お父さんの地位がどんどん下がっていけば、それも仕方ないかとは思うけれど。でも、子供の頃は本当にあの「寿司折り」が楽しみだった事を思うと、ちょっと寂しい時代変化の一つ。

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