2023年8月25日

海洋放出開始

昨日から始まった、福島第一原発でのALPS処理水の海洋放出。震災から12年余りが経過して、やっと最初の大きな中間目標に到達した印象です。これまでも、デブリ除去とか瓦礫撤去とか、色々な知恵と努力で復興に向けての作業が続いていたけれど、やはり処理水の放出というのは、その中でも大きな事象であることは間違いないでしょうね。これで敷地内の保管タンクが徐々に解消されれば、作業環境も改善されてさらに復興作業も加速されることになると期待したいところ。

ところで、福島第一原発敷地内には、既に膨大な量のALPS処理水が保管されているわけで、その総量は134万トン余りとなっていて、タンク容量の98%に到達しているとのこと。まずは、7800tの処理水を17日間で放出するらしいけれど、そうなると一日当たりの処理数の量は7800t÷17日=458t/日。今後増加することも有るだろうから、仮に一日あたり500tの処理水が放出されるとして、一年間休み無しに放出しても18万t余り。でも、今年度の予定では、3万t余りとかなり抑え気味。大量の処理水を一度に放出出来ないとか、現在も汚染水は発生しているので処理水自体も常に発生することから、放出期間としては30年間程度を見ているという一寸気の遠くなる話。個人的に感じるのは、放出する処理水の希釈具合を、もう少し緩めれば、例えば希釈度合いを現行の倍にすれば、同じ放出量でも倍の処理水放出が出来る計算になるので、30年という期限は半分の15年程度になるかもしれない。3倍とか4倍とかまでに設定すれば、10年程度にまで短縮されるかもしれない。

希釈度合いに関して言えば、通常の原子力発電所冷却水のトリチウム濃度上限が60,000Bq/lで、一般の飲料水での基準は20,000Bq/l。今回の海洋放出で国が定めた基準値は1,500Bq/lで、今回の測定値は60Bq/l位との事。この場合だと、希釈率を今の1/10にしても600~700Bq/lと想定されるので、十分に厳しい基準値の1,500Bq/lをクリアーできます。あくまで単純計算だけれど、希釈率が1/10になれば放出できるタンク内処理水は10倍になるわけだから、流石に30年が3年にはならないと思うけれど、かなり時間も負担が軽減される気がします。とは言っても、全ての保管処理水がそんな理想的な状態では無く、低い値が見込まれるのは30%位で、残り70%は再処理や更なる処理が必要なものが占めているわけだから、その際処理にも時間は掛かるだろうし。色々難しい問題も有るんだろうけど、それでも30年の予定が20年とか10年に短縮されれば、その恩恵は大きいと思うなぁ。風評被害対策もあって、一般的な安全基準のさらに何倍もの安全係数をとった値にしているんでしょうけど、それ故に効率性は低くなって時間の問題はこれから大きくなると思います。今でも、トリチウムの胎内蓄積がぁとか、トリチウムの放射線がぁとか言う人も少なからず存在するので直ぐでの対応は難しいだろうけど、1年、2年経過して世間のトリチウムに対しての認識も浸透したならば、例えば今の1,500Bqの上限を5,000Bqとか10,000Bqとかに引き上げて、より多くの処理数が排出できるようにしても良いんじゃ無いだろうか。

ところで、TLを見ていると予想よりは放出反対派の人の書込というか発言が少ない気がします。今回の放出前の状態ですが、東京大学・鳥海不二夫教授の解析記事を見ると、やはりこれまでの同様の状況と比較しても「反対vs賛成」は「1:2」と逆転して賛成派が有利。それだけ、それなりに科学的な説明が功を奏しているのか、世間一般的な興味はそれ程でもないのかまでは分からないけれど、放出前の状態がこうであれば放出後は両者の乖離がますます広がっていくんじゃ無いだろうか。それに今回の場合は「海洋放出」ということもあり、目に見えない部分で作業されることも大きい要素だと思います。以前だと、ALPS処理水がタンクやパイプから漏水していた、高濃度の放射能が計測されたとか、ワイドショー等でのネタになっていましたが、放出時の値検査とか近海での試験操業での固体検査は続けるだろうけど、そんなに問題になるような結果は出ないだろうから、ワイドショーやメディアが煽ろうと思っても、その素材自体が無い状態ですし。これから季節が変わり、秋、冬と、福島や東北の海鮮物が豊かで美味しくなる時期なので、そう言うものを普通に食べ始めればみんな気にしなくなり、ニュースバリューというか「風評バリュー」が無くなれば、メディアも次のネタに行くでしょうね(それはそれで迷惑だけれど)。

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