2023年7月4日

朝日新聞仕草

マイナンバーカード返却に関して、自社記事を広報する朝日新聞デジタルのtwitterアカウント。この行為自体は何の問題も無いものだけれど、その内容というかやり方に関しては、おもわず「これぞ『朝日新聞仕草』!!」と呼びたくなるような組み立てで、ある意味その計画性に感心してしまう。 

その紹介している朝日新聞サイトの記事は、トラブルが続出しているマイナンバーカード返納が各自治体で目立っている、という最初の部分は読めるけれど、肝心な部分は有料記事としてそのままでは読めない状態。でも、その無料部分の短い本文にも、朝日新聞らしい「作為」を感じてしまう。最初の一文が、

トラブルが続出するマイナンバー制度をめぐり、「制度が信頼できない」といった理由で自主的にマイナカードを返納する動きが6月以降、各地の自治体で目立っている。

と、今発生している問題はマイナンバーと核種行政サービスの固有番号・本人との紐付けの問題なのに、 「トラブルが続出するマイナンバー制度をめぐり」と、恰もマイナンバー制度自体の問題のようにも取れる表現にすり替えている。これって、例えば誤報や虚偽報道の記事が新聞や雑誌に掲載された時、問題はそう言う記事を作成した記者やそれを掲載した編集者の責任・問題だと思うけれど、その事を「誤報・虚報が続出する、新聞・雑誌作成販売会社をめぐり」と書いたら、彼らは納得するだろうか。あるいは、交通事故が多発している原因は、やはり個々のドライバーの問題だと思うけれど、それを運転免許制度や自動車製造メーカーの問題とする事は正しいと彼らは考えるのだろうか。「マイナンバーカード返納」というのが記事の本文で多分主張しているのだろうから、その原因となったのはマイナンバーと各種サービスアカウントの「紐付け」という手続きの問題で、マイナンバー制度の仕組みの問題では無い。逆に、その仕組みをわざと誤解させるような報道をしているメディアは、マイナンバー制度を巡るトラブル続出に荷担している当事者とも言えるのでは。

その短い公開されている新聞記事冒頭ではそういう誤解させる内容を振るだけで、肝心な内容に関しては有料部分で隠されたまま。でも、この記事を告知ているtwitterでは、「マイナンバーカード返納運動ハッシュタグ」とか、返納数は45万枚とか、恰もその動きが大きいものであるかのような表記をしています。特に悪質だと思うのは、

総務省によると、カードの失効も含めた返納数は5月25日時点で約45万枚です。

と書いていること。これ「カードの失効も含めた返納数」であり、その大部分は死去した事による資格喪失によるもので、今問題になっていような自主的判断で返納している数はごく僅かなはず。昨年の死亡者数は158万人超で、全員がマイナンバーカードを所有していたわけでは無いだろうけど、マイナンバーカードの交付割合が77.3%との事なので単純計算で120万人弱、所有率50%と考えても77万人余りが資格喪失しているわけで、その45万枚の殆どが資格失効による返却だと推定出来ます。つまり、マイナンバー制度に疑問を感じて返却している人は微々たるものなのに、恰も何十万にもすでにカード返納しているように錯覚させる記載をして、かつそれを確認する方法は引用している記事では読めない人も多いという状態。まぁ、新聞社は自社の発行部数を、数割と言われる押し紙も含めて水増し報告している位だから、そう言う事には大らかというか、都合良く判断しているというか、まぁ「嘘つき」と言われても仕方ない。 

こう言う事を大手新聞社がやると、これを根拠として返納を煽る行為をする人も増えるわけです。でも、ちゃんと説明しないから、別にカードを返納してもマイナンバー自体は無くならないこと、今後は統合が進められて手元で個人認証出来るマイナンバーカードが無いとどんどん不便になる事、カード再発行には手数も日数も掛かる事、そう言う事も含めて「カード返却しよう」と煽るのか「今は問題があるが総合的に損得を考えよう」と諫めるのか、そこは「第四の権力」とか「公共性」を言うメディアなら迷うまでも無いはず。大体ネットでも指摘されていたけれど、そう言う記事を掲載している朝日新聞社員はマイナンバーカードをどうしているのか。もし自分達は必要と思って返却していないのならば、「問題はあるが、こういう場合に必要なので保有は継続しよう。でも問題点の早急な解決は政府に強く要求しよう」と言うのなら意味があるし必要だと思う。でも、彼らがやっている事は「マイナンバー(カード)には問題がある、トラブルが続出している、返納行動が急増している(だからみんなも続け!)」みたいな事しか言わない。簡易のツイートとそのリンク先の記事の公開方法という「二段階報道」という技術には、改めて感服するしだいです。まさに、「朝日新聞仕草」。

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