2023年6月23日

圧壊深度

行方不明で捜索が続いていた、タイタニック号の深海潜水艇ですが、残念ながらタイタニック号の近くで圧壊したと思われる破片が発見されて、乗客乗員5名の死亡が宣告されたとの事。先ずは5名の方のご冥福をお祈りいたします。実は、このニュースを聞くまでは、そんな沈没船観光ツアーみたいなものがあるなんて知らず、さらにその参加費が一回2500~3000万円もすると聞いてさらにびっくり。そして、そのために使用される深海潜水艇は、この会社が開発製造したものと聞いてさらにさらにびっくり。4000mという、かなりの深海に潜行する機材をそんなに簡単に制作できるのか素朴に不思議に感じます。

自分達の世代だと、「深海潜行」と聞くと、どうしても日本の誇る深海潜航艇の「しんかい」 を思い出すわけで、まずはああ言うものを想像するんですが、ニュース映像などで今回の深海潜航艇「タイタン」を見ると、正直凄く簡単な構造というか、強度的には大丈夫なのか心配になるほど。後から聞くと、2021年と2022年には5~6回位のツアーを開催していて、もちろん問題無く帰還したから今回の潜行ツアーも開催したんだろうけど、小さなトラブルは色々あったらしい。開発中も、4000mの深海で耐圧テスト等していたとのことで、それなりに性能は持っているんだろうけど、色々指摘されているように性能というか仕様と言うか、作りはどうも「しんかい」なんかと比べるとかなり質素な印象を受けます。ニュース等では、ゲーム機のパッドが操縦桿として使用されていたと疑問視されていたけれど、それは余り問題とは感じない。それよりも内部にはモニターとそう重要のバッドしか無くて、椅子なども内容な状態に見えて、そちらの方が問題だと思う。深海に入ると海水温が下がるから、ちゃんと断熱しないと船内はかなり寒いんじゃ無いだろうか。

今の所、タイタニック号の船尾後方500m位の所に、このタイタンの期待の一部と思われる部品が幾つか発見されて、その状況から船体が水圧によって破壊される「圧壊」で沈没したと考えられるとのこと。4000mの深海というと、400気圧の水圧が掛かる事になるから、何十トン、何百トンという海水の重みがこの潜航艇に掛かっていることに。更に、移動のための可動部なんかもあるだろうから、そういう所は脆弱性も高いだろうし、そう言う意味でこのタイタンの外殻を見てみると、しんかいなどと比べてかなりシンブルな気がしますね。潜行深度がタイタンは4000mですが、しんかいは6500m/12000mともう一段二段違うけれど。後は、海中を移動するときに急激にターンしたりすると、構造に負荷が掛かりそこが弱くなって亀裂とか発生すると、一気に圧壊したりするのだろうなぁ。原因を追及することは難しいけれど、ただただご冥福を祈るばかりです。

報道の中には、安全性を軽視したというものも多く、私も軽視とまでは言わないけれど安全係数の取り方とか実際の製造過程での安全性の担保はしっかりされたのかという事は確認しないといけないと思います。一方で、今回の犠牲は大きいけれど、民間企業がこう言う新しい世界を開拓していくことも重要だと思うんですよね。今では宇宙開発のトップ企業になったスペースXだって、最初の頃は何度も失敗して経験値を蓄積して、今の成功も有るわけですから。もちろん、だから取って人命を犠牲にして良いという理由は無いし、先ずは人命の安全が最優先することは言うまでも無いけれど。タイタンの開発会社が、そう言う「夢」を持って深海開拓していたのか、あるいは単にタイタニックを利用した観光会社だったのかは分からないけれど、深海探索というのは宇宙探索に勝るとも劣らない未知の世界、夢の世界であることは事実。この会社が再起するかは分からないけれど、今回の犠牲を次の成功に生かすようにして報いて欲しい気がします。

[2023年6月23日 14:30追記] 数日前に、米軍(米海軍?)が、圧壊したような音声を受信していたという報道がありました。どういう頻度で所謂音紋を解析しているかは分からないけれど、今回の事件を知らされて、過去のデータを遡って精査して圧壊音らしい音紋を見つけたのかな。報道などによると、それで沈没推定海域が絞られて、無人潜航艇での発見に繋がったと書かれているけれど、複数箇所からその音紋データを取りだして、記録された時間や方向を複数箇所から判定して、それで場所のテク体も可能になったんでしょうね。米海軍のSOSUS (SOund SUrvellance System)と、もしかしたら回遊している潜水艦からのデータもクロスチェックして特定したのかもしれない。

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