2023年5月25日

勝手に「共犯者」にするな

一時期大きな騒動になったけれど、ここ最近は妙に静かというか沈静化しているようにも感じる、ジャニー喜多川氏による性加害問題に関して、Newsweek Japan に掲載されたコラム。コラムのタイトルが『...日本人全員が「共犯者」である』と随分と大きな主語を使っていて、そういう場合はその内容も眉に唾を付けつつ読まないといけないという経験則が自分はあるんですが、その通りの内容だと思う。で、一通り読んでみて、何か記憶の片隅にある文体だなぁと思ったら、以前H3の打上失敗に関してコラムを書いていたのと同じ人でした。

個人的に一番疑問に思うのは、この作者はメディアの責任は大きいといいつつも、黙認し続けた全ての日本人も共犯者だと最初から言っている。ここで疑問に感じることは二つ有って、一つはメディア以上にジャニー氏に密接な関係があった、芸能界や業界関係者の責任はどうなのという事。当然、回りに居る人が全く知らなかったということは無いですよね? あるいは、放送局だったりイベント関係だったり、芸能界自身では無いけれど近くにいる業界の人だって、全く知らないと言う事は無いでしょう。もし近くにいる人すら死なら買った話なら、全くそういう所に縁が無いその他日本人がしる術が無いだろうし。コラムでは、1999年の週刊文春のキャンペーンを切掛のように言っているけれど、私の記憶する限りでは公に対して口火を切ったのは、元フォーリーブスの北公次氏じゃないだろうか。それが1988年の事だけれど、当時は言い方は悪いけれど元フォーリーブスのメンバーが、何とか注目を引こうとしているみたいな見方をしていた・されていた気がする。二つ目は、国民も共犯者にするのは良いけれど、じゃぁ当時どれだけメディアなり関係者がこの件に関して発言していたのか、と言う事。週刊文春だけが取り上げていて、他のメディアが追随しなければやはり読者としては信用度は低いと思うだろうし、確か他のテレビ等のメディアでも取り上げなかったと思う。全ての媒体のメディアが大々的に取り上げたにもかかわらず、結局誰も見向きもしなかったと言うのならまだ分かるけれど、極一部のメディアが取り上げたことを知らなかった、問題として認識しなかったからと言って日本人全員の責任にするのは、結局自分達の責任を少しでも希釈するための言い訳にしか聞こえない。

個人的に論理の飛躍というか、すり替えのようにも感じるのながまん中当たりの内容で、今回の特異な環境・条件下での出来事を、一般の性被害の話に例えて話を進めているけれど、それは違うでしょう。今回の件は、芸能界という一つの業界の中で頂点に使い権力・名声を持った人物が、社会的に好ましく無い行為を長期間続けていたけれど、それをその回りに居てかつ深い関係のあったメディアや業界がずっと見て見ぬ振りをしてきた、という事が最大の問題点では。もちろん一般論として、加害者よりも被害者の方が何故か立場が脆弱になり、被害者なのに加害者よりも不利益を被ることが多い事は事実だと思う。でもそれってこういう性犯罪だけでなく、例えば凄惨な事件が発生すると、容疑者や加害者よりも、その被害者に焦点を当てて視聴者・読者の涙を誘い注目を集めようとするのは、メディアの常套手段なのでは。そう言うことをずっとやってきているから、被害者の声は出しづらくなり、出しても自分の言いたいこととは異なる主張に変換されてメディアで拡散されるから、無言のままの人が多いんじゃ無いだろうか。それを自ら証明しているのが次のページの記述で、「憶測による誹謗中傷などの二次被害」という下り。「憶測による誹謗中傷」とは何かと言いつつ、自分の憶測による推論を展開しているけれど、そういう事実に基づかない話を仮にも「ジャーナリスト」なる肩書きの人間が公開することが、「憶測による誹謗中傷」の元になるのだろうし、本人は「推測」と言うかもしれないけれど、明確な根拠を示さずに言う「推測」は「憶測」と同じだと思う。

最後の方では、女性も含めた性被害の話に移っているけれど、この問題の一番の問題点は、業界の有名人で責任有る立場の一人の男性が、40年近く長い期間複数の相手に対して性加害行為を行っていたと思われるのに、周りの人間も、業界関係者も、メディアも忖度したのか懐柔されたのか分からないけれど見て見ぬ振りをしてきた、と言う事でしょう。もちろん、100%完璧に隠蔽されてきたわけでは無く、何度かは取り上げるメディアもあったけれど、それが直ぐに立ち消えてしまったのは、読者や視聴者の関心が低かったり関わり合うことを回避したい気持ちが強かったというよりは、報道したメディアや関係者以外のメディア・関係者が、何らかの理由で否定する・無視する事をしたから世間の関心も小さいまま終わったのでは。例えば週刊文春が最初に報じたとき、それが一年間続いたのに誰も関心を示さなかったのなら日本人に責任があると言われても仕方ないと思う。でも、多分週刊文集が記事にしたけれど、続報が続くこともなく直ぐに消えてしまったんじゃ無かったかな。それは週刊文春が話題性が無いと思ったら辞めたのか、何か圧力があったから辞めざるを得なかったのか、そういう所をメディアはちゃんと言うべきでは。今回BBCが何故取り上げたのか私は背景を知らないけれど、その時だって当初は日本のメディアは積極的に取り上げなかったんですよね。その後ネット等で話題になり、段々と声が大きくなってきたら、各社で取り上げるようになったのは、やはり自分達に大人の事情があるからなのでは。さらに言えば、火中のジャニー喜多川氏も既に鬼籍に入り、ご本人に対しての取材行為などしなくて良いから、メディアも今回は大きく取り上げているんじゃないだろうか。ジャニー喜多川氏と言えば、数年前までは顔写真も出回らず、一部の人以外は会ったことも無いとずっと言われていた謎の人。よくテレビ等でジャニーズ所属タレントが言っていたのが、楽屋に行って事務員のお爺さんがいると思ったら、その人がジャニーさんだった、と言うような話で、それだけ表から隠れて存在していた、知る人ぞ知る人物だったわけです。そんな存在をメディアや業界関係者が伝えずして、どうやって殆どの日本国民は知ることが出来るんだろうか。「共犯者」と言うのであれば、主犯格のメディアと業界関係者が、まずは責任をちゃんと明らかにしろよと言いたい。

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