2023年5月14日

時代のシンボル

映画の本編上映時の内容と異なり、その後DVD/BD等に収録するときには、色々な理由から内容を再編集したり、トリミングや追加映像をしたりという事は、それなりに有る話。これまでも「ディレクターズカット」とか「特別編」みたいな感じで、ある意味付加価値を加えたバージョンという意味で存在していたように思います。申し訳ないけれど、私は観ていないのだけれど邦画アニメ映画のヒット作品の一つである「すずめの戸締まり」で、公開時には無かった主人公がマスクをしているシーンを加筆したという記事。 

監督の説明では、制作時はコロナ禍の真っ最中だったけれど、作品(=映画)がコロナ禍にも上映・放映されることを考えて、コロナ禍というイメージが定着しないようにマスク無しの映像にしたけれど、その後考えが変わったと言う事らしい。その作品の責任者の考え方次第なので、現実の災害とリンクさせようが、それとは別の時間線を想定しようが、そこは制作者・責任者の考え方次第。現実の要素が含まれることで、ノンフィクションであってもリアリティを感じる内容になるだろうし、まさにそのコロナ禍の中で今でも生活している観客としたら、ある意味没入感を感じやすいかもしれない。一方で、今後この作品が何か評価される場合には、この「コロナ禍」という歴史に依存する固定されるリスクもあるわけで、その判断はどうなんだろうか。

2019年と2020年では、社会の様子はがらっと変わった訳で、その一番のシンボルが「マスク姿」であったり、アクリル板やビニールシートの「透明な遮蔽物」だったわけで、今後そう言うものが登場する映像が使われたら、2020年から2022年の3年間の映像と言う事は確実に特定出来る状況でしょうね。コロナ禍で、所謂「ロケ番組」が以前のように出来なくなり、コンテンツ不足に困ったテレビ局は、昔のロケ映像やビデオを再編集したりして何とか番組を構成している時期がありました。あの時に凄く違和感を感じたのが「コロナ禍でみんなマスクをしているのに、画面の中の人達は全くそんな様子は無い」という事。あるいは、「三密回避」でレストランや居酒屋などではスペースを開けて、アクリル板を設置しているという状況なのに、画面の中では狭い店内に満員の状況で、あの時に見る映像としては「昔はああだったんだよなぁ」と1年2年程度前の事なのに、凄い昔みたいな印象を受けたものです。例えばルーズソックスが実際にブームになったのも、自分の記憶では精々2~3年位だったと思うのだけれど、イメージとしては10年位の一世代の流行のように感じます。それって一つの「文化(カルチャー)」として社会に浸透していったので、その前後も含めた時代のシンボルとして記憶に残っているんじゃ無いかと。一方でマスク着用も期間としては2~3年の話で同じ位の期間だけれど、こちらはピンポイントで始まりは分かっています。終わりに関しては、まだ今現在もマスク着用は70%位の人が続けていて、明確に「終わり」というのはあと一年くらいはかかりそうだけれど、イメージとしてはこの5月8日の5類移行で終わった感じ。そう言う意味では、時代のシンボルとしてはこの3年位のものとピンポイントで認定できるものなんですよね。

良くも悪くも過去のとある時代あるいは年代を、ほぼピンポイントで特定出来るシンボルって、今回のマスクやアクリル板何て言うものが初めてじゃ無いだろうか。マスクとかアクリル板みたいな特徴的な品物もそうだけれど、ネットの時代でそういう光景や様子が無尽蔵に記録されていて、いつでも参照出来る時代であったことも見逃せない気がします。これがそう言うものがまだ無い、例えば50年位前の事象だったら、ここまでは記録にも記憶にも残るものにはならなかったでしょうね。実際日本だと過去にもコレラとか全国的に流行したことがあって、その時にはマスクに抵抗のない日本人は今回の様に一斉にマスク着用をしたはずだけれど、今回ほどそのイメージって残っていませんものね。シンボル化すると言うことは、それを残す記録の問題でもあると思います。そう言う意味で、「映画」という今後長く残るであろう記録の一つで、わざわざ後からマスクを追記したという意味を、後世の人はどの様に解釈して理解するのか、可能ならば50年後と100年後に聞いてみたい気がします。

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