2022年10月15日

開始ポイント

NFLが開催した国際コンバインに参加した、富士通フロンティアーズ所属のWR松井理己選手の記事。大きく話題になったのは、NFLドラフトなどで選考要素の一つとして最も重視される40ヤード走の記録で、「4.41秒」という参加者でトップの記録を出したこと。トップと言う事だけでなく、この数値はNFL選手の記録として平均以上の値で、それ故に大きく注目されることになったわけですが、その裏話と言うか理由を説明した記事。 

この記事を読んで個人的に疑問だった点が分かったんですが、それは記録する時の「開始」するタイミング。私は小中高とずっと陸上競技の短距離をしていたので、この手の「タイム測定」には五月蠅いのですが(笑)、陸上競技の場合スタートするタイミングは審判が撃つスターティングピストル(号砲)何ですよね。そのピストルが撃たれた瞬間から記録はスタートするんですが、選手は撃たれた瞬間からスタートするのでは無く、撃たれた音→それが耳に入る→スタートと認識する→筋肉を動かし出す、というタイムラグがどうしても発生してしまう。人間の場合、音を聞いてから実際に動き出すまで大体0.2から0.3秒位掛かると言われていて、号砲の瞬間に動き出すという事は実際には有り得ない。でも陸上競技、特に100m走なんかの場合は、有る程度タイミングを計って動作を開始して、スタートするんですよね。だから、今のスターティングブロック(スタートの時に足を固定するための器具)にはセンサーが付いていて、号砲が鳴って(電気計時がスタートする)から一定時間内にセンサーがスタートを検知すると、フライング判定となります。確か0.1秒とか0.2秒とか、そんな値だったと思う。さらに、昔は一人が2回フライングするとその選手は失格だったのが、今は2回目のフライングをした選手が失格するのかな。かなり厳しくなってきていますよね。

で、陸上競技の場合はスターターがスタートを開始するわけですが、このコンバインでの記録開始は、選手が自分でスタートしたところから計測開始。そこで疑問だったのは、何を持って「スタート」の計測が始まるのかという事。手動の場合は体が動き出したことを審判が認識したところから計測開始となりますが、電気計時の場合はレーザーを横から当てて動きを検知したらスタートと認識しているはず。それも、カメラ等で動作の様子を認識するような物では無く、単純に横からレーザーを選手当てて、選手が動くことでそのレーザーが反対側の受光器に入ったら「スタート」と認識して計測開始する物でしょうね。ごく普通の「光センサー」方式のスイッチだと思います。レーザーなので、昼間でも後動作する事は無いだろうし、ピンポイントで当てることも出来るし。で、CFL方式ではスタートラインに於いた腕の手首にそのレーザーを当てていたのに対して、今回のNFL方式では腰の部分に当てていたという話。これが記録短縮の一番の理由だなぁ。手首というか、スタートラインに付いている手は、先ず最初に動く(上がる)のに対して、体部分特に腰から後ろは一旦後方に踏ん張ってから前進を始めるので、0.1とか0.2秒とか、それなりのタイムラグが発生すると思う。それに、当てている場所の面積が違いますからね。その部分が移動して反対側の受光器にレーザーが到達するまで、動き始めてからのタイムラグも生まれるだろうし。

勿論、全員が同じ条件で計測して、その中でトップの記録を出したわけだから、松井選手の記録が霞むことは全く無いと思うし、彼が国内トップクラスの選手である事も事実。計測方法の違いで縮まる値以上の好記録を今回記録したことは、本人の努力の賜であることは確かですよね。その一つに記事の最後に「力まない」と書かれているんですが、これも陸上の100m走では大切なこと。良く「最後の追い込み」とか「加速して」とか言うけれど、あれは違っていると思う。特に50m走とか100m走のような短距離走の場合は、まずスタートダッシュから如何に短時間にトップスピードまで加速するかが第一段階で、大体10m位までにトップスピードに加速したら、後はそのスピードにブレーキを掛けないで維持しつつ残りの距離を走りきることが一番効率の良い走り方。力むと、この後半の部分でブレーキが掛かり減速してしまうんですよね。自分が高校生の頃は、監督の先生に「7歩でトップスピードに到達しろ」と無理なことを言われたけれど(笑)、大体スタートから10歩目位で加速終了して、体も前傾姿勢から立った状態になり、後はそのスピードを落とさないようにある意味脱力して流すような感じで走るのが一番効率が良い走り方。そう言う陸上のKnow-Howが生かされた気がします。

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