2022年6月11日

「回らない寿司屋」の不思議

佐々木俊尚氏が紹介していた、言語学者の金田一秀穂氏に寄る「呼び名の付け直し」について。自分の子どの頃は「寿司屋」言えば、カウンターと幾つかの小上がりがある店内で、目の前で職人さんが握ってくれたお寿司を食べる場所でしたが、今では多少のシステムの違いはあるけれど、座った場所に流れてくるお寿司を選んで食べる場所が一般的に。一応「回転寿司」と言う名称も一般化しているけれど、最近では昔のようにベルトコンベアー式にお寿司が回っているようなお店以外でも「回転寿司」と銘打っているお店もあって、この「回転寿司」という言葉も、「本当に回転しているお寿司屋」さんと「回転はしないけれどそう呼んでいるお寿司屋」さんという区別もそのうちに必要になるかもしれない。

日本語というのは、外来語だけでなく、新しく言葉を作る事に躊躇しない言語じゃ無いかという気がしているので、時代や社会環境の変化とともに新しい言葉が生まれてくることに不思議は無い。でも、例えば「寿司屋」の意味が変わってくることになると、昔からの意味づけになれている自分としては一寸した抵抗感も感じます。さらに日本語の場合は、同じ発音でも使用する漢字によって、書き言葉での違いも大きい。例えば「寿司屋」と「鮨屋」は、どちらも「すしや」だけれど、後者の「鮨屋」の方がちょっと高級な「お寿司屋さん」という印象を受けます。本来「言葉」や「文字」っていうのは、複数の人間の間で共通の認識を確認するためのシンボルな訳だから、そう頻繁に変化して貰っては困る。多分、ものの変化が緩やかだった過去の世界だと間に合っていた物が、どんどん毎日新しい物が生まれてくるような忙しい時代になると、そうも行かずに言葉の再定義や再命名みたいなことが必然になるんでしょう。

ふと思ったんですが、江戸時代の「お寿司屋さん」は、屋台形式の立ち食い持ち帰り方式だったことは知られています。それが、店舗を構えてカウンターやテーブル席で食べるようになり、さらに目の前に出されるお寿司がベルトコンベアー方式で運ばれる「回転寿司」が生まれました。一方最近ちょっと目にするようになってきたのが「立ち食い寿司」。これも「立ち食い寿司」と言っているけれど、そのスタイルから見れば「元祖寿司屋」とでも言うべき存在なわけですよね。これも「寿司屋」が上位化して、元々の寿司屋が「立ち食い寿司」と再命名された例と言えるのか。個人的には、所謂「回らない寿司屋」は、一般的に本来の寿司屋の形態をしているので「真寿司屋」ってどうだろうか。でも、そうなると新しく登場してきた「回転寿司」は「新寿司屋」になって紛らわしいか(笑)。 だから言葉は面白い。

0 件のコメント:

コメントを投稿