2021年8月12日

噛み砕かれた「思い」

 女子ソフトボールで活躍した、トヨタ自動車所属の後藤希友投手の金メダルを、表敬訪問の時につい調子に乗って噛んでしまい、批判を浴びている河村たかし名古屋市長。地元の大企業トヨタ自動車や、多くの苦情メッセージに対して謝罪はしたもののその批判は収まらず、金メダルを新しい物と交換することに。

後藤選手にして見れば、他人に噛まれた事は大いに不本意だし不満だろうけど、そのメダル自体は苦労してチームで勝ち取ったものな訳で、ご本人の、

チームで勝ち取って表彰式で授与されたものだとして、新しいメダルとの交換を辞退する意向を示していたということです。

という気持ちはよく分かる。試合会場で渡されて、首に掛けたものだから、お金には換えられない価値があるわけだし、他のチームメイトとの一体感も含めての「金メダル」だったわけですからね。それが、材質やデザインは同一であっても、彼女にとってはあの時に受け取った物とは全く別物な訳で、同じ金メダルでも込められた思いは雲泥の差。ある意味、本物では無くレプリカを渡されたような気分だろうなぁ。

河村市長も問題だけれど、本人の意思を尊重しない文科省や萩生田大臣も問題なのでは。例えば、文化財とか神社仏閣に悪戯書きとかされて傷が付けられた場合、その部分だけ交換して「無かったこと」にはならないように、物質的に同じ物と入れ替えても、そのものの本質は全く違うものになってしまうだけで、実は回復されたことにはならない。教育に関して、よく「結果では無く、その過程が重要」と言うけれど、その教育の責任者が「過程では無く、結果が重要」という行為をしたら問題でしょう。結局は、河村氏にしても萩生田氏にしても、自分の思惑だけで行動している点ではどちらも勘違いをしているし、後藤選手本人の気持ちを無視している点では、どっちもどっちだと思う。

メダルを噛むという行為は、日本だけで無く海外の選手でも結構昔から有るみたいだけれど、そう言う色々ないわれを聞いてみても、また噛んでいる様子の写真や映像を見てみても、自分的にはそれが「格好いい」とか「凄い」とか言う気持ちが生まれてきたことが無い。自分的には、いつも昔の偽物の小判かどうか調べるために噛んでみたという行為にしか見えなくて、結局そう言うポーズを要求するメディアとしては「その〇〇メダル、偽物かもしれないから噛んでみてください」と行っているようにしか見えないんですよね。それって、苦労してあるいは努力して勝ち取った選手に対しての侮辱だと思うし。今回の件での最大の問題点は、河村氏の行為よりも、選手本人の気持ちを踏みにじる、河村氏の行為も含めた周りの勝手な思い込みと行為だと思うなぁ。本当、後藤選手にとっては二重三重の迷惑だと思う。

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