2021年7月19日

無責任な図表の無責任な大臣

小泉環境大臣が公開した、食品ロスに関しての記事の中で、日本の食品ロス(「家庭から出る年間の食品廃棄量」)は世界第四位という「残念な順位にいる」と書いている。それに対して、 統計が違うという書込があり、どうなんだろうとちょっと興味半分で調べてみました。


小泉氏が使用していグラフに書かれている「出典: 国連環境計画(UNEP)「食品廃棄指標2021」FOOD WASTE INDEX REPORT 2021」をキーワードで探してみると、このサイトに行き着き、その中でリンクされているこのPDFがソースだと思われます。全体で100ページの文書ですが、その中には小泉氏が使用している図表は掲載されていません。色々見ているうちに、どうやら60ページから掲載されている、地域別にリスト化されている各国の消費量想定地の値を並べたものと想像されます。日本は64ページに登場し、確かに一人当たりの消費量(64kg/人)や年間消費量(8,159,891トン)という数値は合っています。因みに、同じテーブルに掲載されている中国も一致。ところが、次のテーブルに掲載されているインドネシアは、年間20,938,252トン、一人当たり77kgとか、フィリピンの9,334,477トン/86kgとか、そのページを見るだけでも日本以上の国が存在するし、それ以外の国でも、

  • コンゴ共和国: 8,912,903トン/年、103kg/人
  • エチオピア: 10,327,236トン/年、92kg/人
  • ブラジル: 12,578,308トン/年、60kg/人
  • メキシコ: 11,979,364トン/年、94kg/人
  • パキスタン: 15,947,645トン/年、74kg/人
等複数の国が日本以上の年間廃棄量だったり、一人当たりの廃棄量でも多い国は見られます。小泉氏の記事の中では「世界第四位」と書かれていることは、何を根拠なのか疑問がありますね。例えばG7の中でとか、先進国中で、とか言うならばまだ理解出来るけれど、中国やインドは微妙ですよね。中国とインドは余りに大きいから無視できないので入れて、後はG7(ロシアが入っているからG8か?)を並べただけなのかもしれない。でも、出典の中で用いられていない図表を使用しているばかりか、その出典からのデータ抽出方法に関しても不明な点で、小泉氏の使用している図表の信頼性は「ゼロ」と言って良いと思うなぁ。

その下の食品廃棄量の図にしても、上の図で日本は中国と同じ64kg/人でそれはインドやアメリカよりも多いという意図が見えるんですが、ここに書かれて以内それ以外の国を見てみると、

  • ドイツ: 75kg/人
  • フランス: 85kg/人
  • イギリス: 77kg/人
  • ロシア: 33kg/人
  • スペイン: 77kg/人
  • オーストラリア: 102kg/人
となっていて、ロシア以外は日本よりも一人当たりの廃棄量は多い国ばかり。これらのデータを見て読み取れることは、

  1. 日本の年間廃棄量は800万トン余りで、世界でも14位と比較的上位である
  2. しかし一人当たりの廃棄量は200位以下となり、個人としては十分に低い値である
と小泉氏の主張とはちょっと違った印象になります。食品ロスに関しては、800万トンという量が皮下色部分も含むデータとは言え決して少ない量であるから対策は必要だと思います。ただ、単に危機を煽る様なデータで主張するのではなく、実際にどうなのかという部分をちゃんと示す事が、担当大臣としての責任じゃ無いだろうか。しかも、誤解を招く様な図表を使用していることは無責任を通り越して、捏造に近い行為だと思う。

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