2021年5月21日

トラブルを誘因させるメディア (3)

自衛隊による集団接種センターの予約システムに関しては、引くに引けないメディアやそれに乗っかった野党が、「自分達のミスを転嫁するのは怪しからん」という論調に持っていこうとしているけれど、実際にはどれだけリスクがあるのか、勝手に個人的に検証してみました。先ず重要な事は、今回問題になっている「予約システム」は、実際に接種をする順番や本人確認をする目的ではなく、集団接種センターでの接種枠を予約するものということ。当日接種する場合には、事前に配布されている接種券記載の市町村番号と接種番号、そして免許証などでの本人確認がされてから接種するので、そこで成りすまし等が発生する可能生はほぼ無い。したがって、今回指摘されている予約システムの不具合が、どれだけ実際の接種作業に影響するかが、問題の評価基準になると思います。

予約システムが、最終的な接種対象者の確認まで含んだ一体的なアプリケーションなら、やはり入口となる予約者情報入力がガタガタでは問題でしょう。ただ、問題の予約システムと実際に接種対象者を管理するシステムは、直接的には接続しておらず(接続出来ない)、予約システムは言ってみれば接種管理システムのフロントエンドプロセス(FEP)だと思えば良いんじゃ無いかと。つまり、予約システムが無ければ、例えば単位時間当たり100人接種対象のところに何千人何万人という人が押しかけるかもしれず、それを必要な対象者数に予め絞るのが予約システムの仕事だと。勿論、100人対象のところに100人ピッタリ来ることが理想ですが、色々な理由からそうならないのが世の常。あくまで個人的予想ですが、後で書くように有る程度の余裕は持たせてあり、実際には100人予定のところ95人とか80人とか、少ない状態になるよりは、105人とか110人とか、とにかく最低でも目標の100人を完了出来るような事を前提にしているんじゃ無いかと思います。何故なら、特に高齢者対象故に、予約しても日付けを間違える、時間帯を間違える、予約した日時が定かでなくなり取りあえずセンターへ来た、みたいな話はよく発生するんじゃ無いかと思うから。また、接種管理番号にしても、自治体毎にフォーマットが異なるため、予約入力時に確認する術が無いため、正しく入力したつもりが一部番号で間違うかもしれない。そう言う場合、日時が違うから、番号が一致しないからという理由でそれらの人を接種対象から外すよりは、可能ならばその場で接種するほうがメリットはあるわけで、しかも接種管理システム予約システムとはリンクしていないから、そちらで管理可能であれば問題ない。だから、予約システムに関しては、とにかくスケジュール優先で予定日に使用可能となることが最優先で、その為には多少の不具合は現場で調整可能であれば良しとしたのではないかと。当然、それは発注者であろう防衛省側も了解して、オペレーションとしてそう言う場合の例外処理も準備しているはずです。

今回の件で、「入力を間違えた対象者も犯罪か」みたいな勘違いをした意見を言っている政治家さんもいるみたいですが、そう言う場合は当日スクリーニング出来る分けです。でも、に番号の一部が違う(例えば"8"と"3"とか、"4"と"5"と並びが違うとか)ならば、予約時のミスタイプと解釈できるけれど、全然有りもしない番号で予約されて来ても困るわけです。そこで、正しい接種番号を持っていて本人確認が出来るなら、予約システムとの不整合には目をつぶって接種する方が良いと思うけれど、それが100人の予定のところに何十人も現れたら、その確認作業だけで現場は混乱するだろうし、どうしてそう言う状況になるのか、公平性の担保にも疑問が生まれます。例えば第三者が勝手に複数のスロットを予約して、それを別人に売ることを考える人間も出てくるかもしれない。それで現場が混乱するようであれば、折角動き出した集団接種センターを一時的に止めて、システム改修する必要も生まれるかもしれない。あえてメディアが報じなければ、そう言う事を考えて更に実行する人間はごく少数だったかもしれないのに、それを公開してしまったが為に誰もが可能になるし、変な動機付けにもなってしまう。全体の利益に対して、リスクはごく僅かという想定での運用を予定していたら、メディアが余計なことをしたが為に、その割合が逆転をして対応可能な範囲以上にリスクが増えてしまったのが、今回の問題点でありメディアやそれを擁護する野党の責任だと思います。

勿論、幾らそう言う事情があったにしても、例えば年齢制限に関しては古い年代に関しては明治元年まで入れておくのは良いとしても、若い方の年代に関しては少なくとも65歳未満となるだろう1960年位で止めておくべきだったと思います。また、テレビ放送で実際に予約作業をするところを見ましたが、最後は「予約できました」で終わりなんですよね。あそこは、「何月何日何時から予約できました」と、大きな文字で表示させないと、失礼ながら高齢者の場合はその時点で予約した日時を忘れてしまうかもしれない。そういう仕様やデザインで不備な点は感じるけれど、これが恒久的なシステムではなく暫定的なシステムであり、開発期間やリソースを考えたら、取りあえずまずは予定通りスタートする事を優先して、問題があればその都度改修していくというアジャイル的判断は、間違ってはいないと思います。逆に、元々は「必要な人が必要な条件で利用する」想定だったのが、メディアが騒いだために前提が崩れてしまい、必要では無い作業まで後付けで増えたわけで、そりゃぁ開発側としては怒りたくもなりますよね。自分が関わる製品にしても、100%問題の無いものを出す事は理想ではあるけれど、色々な理由からどうしても解決出来ない問題もあるし、元々のデザインとは異なる状態で提供せざるを得ない場合も多々あります。勿論、闇雲に出すわけではなく、リスクと利益のトレードオフを考えて、仮に問題が発生してもコントロール可能と判断しなきゃいけない。まぁ、往々にしてその判断がいつも正しいとは限らないのですが、でもそう言うバランスを見ていかないと、いつまでたっても製品を出す事が出来なくなります。そう言う意味では、一番最優先されるべき「迅速に多くの人に接種する」という目的達成を、単なる自分達のスクープあるいは何らかの批判目的のために利用した行動だと、私は思いますね。本当、非常事態宣言中は、メディアの報道も自粛させるようにした方が、よほど世の中は上手く回るんじゃないかと切に感じる事象です。

0 件のコメント:

コメントを投稿