今更ながらと言われそうですが、話題にもなったし個人的にも裁判の内容が興味深かったので、備忘録として。 先週17日に札幌地裁で判決が出された、北海道の同性カップル3組による「婚姻の自由などを認めた憲法違反」との訴訟の判決。各メディアは、「同性婚裁判、違憲判決」とか報じているけれど、後で書くように判決自体では違憲判断はしておらず、「判決」というのは無理があるというか間違いでは。精々言っても「違憲判断」が限界だと思うし、その「違憲判断」にしても同性婚自体ではなく、与えられるべき権利を享受していない点が「違憲」と言っているので、正確には「違憲指摘」というのが正しいのでは。
公開されている判決文全文を読んでみました。この手の裁判の判決文は、過去にも幾つか読んでみたことはあるのですが、自分的には難解な法律用語だったり裁判擁護みたいなものが多く、かつ慣れない言い回しの文章が何ページも続くので、中々正しく理解するのが難しい。それに比べると今回の判決文全文は、かなり読みやすく理解しやすく、分量的にも苦にならないしかし内容は詳細に説明していて、言ってみれば「名分」と言って良いのではと。個人的には、良く遂行された技術論文を読んだ気分になりました(いゃ、冗談で無く本当に)。
※裁判所の判例DBにはまだ登録されていないようなので、取りあえずHuffingtonpostの記事を引用しておきます。
で、結論である「主文」では、「原告らの請求をいずれも棄却」しているので、「原告敗訴」が判決結果。ただ、その理由を説明している「判決骨子」を読んで自分が感じたのが、骨子1.、2.と、3.が矛盾していると感じること。最初に、
同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定=「本件規定」
が、憲法24条1項、2項にも、憲法13条に違反していないと断り、ただし、「本件規定」が同性愛者に対しては、婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは、立法府の裁量権の範囲を超えており、その限度で憲法14条1項に「違反」する、と指摘しています。ここで疑問なのは、最初に言っている「同性間の婚姻を認める規定を設けていない」と言う事は、「同性間の婚姻の定義が無い」とも言えるわけで、その定義の無い「同性愛者の婚姻」について3.で述べることは矛盾しないのだろうか。ここは、
3.本件規定が、同性愛者に対しては、(異性愛者間で認められている)婚姻に寄って生じる法的効果の一部ですら...
と理解するべきだろうと考えると、最後に「憲法14条1項に違反する」と言われているのは、同性愛者間の婚姻を認めていないことでは無く、異性愛者間の婚姻で得られる法的効果(利益も不利益も)を同性愛者にも与えることで、時代に即した「婚姻」という制度を考える・更新するべきで、その努力義務を怠っている、という事なんだろうと。だから、よく言われる「一票の重さ問題」と同じで、現状では違憲状態だけれど、何らかの方法(パートナーシップ制度の拡充とか)で利益が担保されれば、「違憲状態は解消される」とも理解出来ます。「一部ですら」と言っていることは、「完全に補償できなくても、それなりの範囲で同等の利益が得られれば」とも解釈できる気がするし。
憲法14条1項の「法の下の平等」に関しては立法府の問題を指摘しているけれど、実際に婚姻に関しての規定である憲法24条や13条の個人の尊重に関しては違反していないという判断なので、そう言う意味では原告の主張はこの時点では「否定」されたように思います。ただ、違反していないという理由に関しては、憲法制定時とは異なる現在の状況に変化した時間の短さを上げているから、例えば10年後、20年後に同じ訴訟を上げた場合、その判断が変わる可能性はあるでしょうね。でも、それって結局は憲法改正をするかどうかと言う話に帰着するわけで、それはそれで色々言いたい人は別に出てくるだろうし。正直、自分としては「同性婚問題」に関して、それほど知識や知見があるわけでは無いので特段まともな意見を持っているわけでは無いけれど、この件も含めてやはり今の日本国憲法は時代に即していない部分は多々あることは事実だし、そう言う意味でいつも問題になる第9条だけで無く、全体をちゃんと見直す時期じゃ無いか再認識する機会になったという気持ちの方が強いなぁ。
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