2021年2月26日

日本のフロリダ

東京都の立川市が、港区女子から「日本のフロリダ」と呼ばれていて人気になっているという記事があると聞いて呼んでみたんですが、何だこれ?! だいたい、都内の内陸部にある立川市が、なんで海と運河と湿地帯で構成されているフロリダと比較されるのか、多少なりともフロリダでの生活・仕事経験のある一人として、全く理解出来ない。

さらに記事の中では、2020年に開業したホテルに「インフィニティプール」があると書いているんだけれど、「インフィニティプール」って、プールの端(プールの外枠)が隠れていて、外に広がる海とか水辺の景色と一体化して見えるから「インフィニティプール」と言うんじゃないのか? とすれば、海はおろか大きな湖も無い立川市は、単にプールの外にビル街が広がっている様子が見えるだけで、それって「インフィニティプール」じゃ無いんじゃ無いの。一応記事の中では、

インフィニティプールは、プールのふちに手すりなどがないため、水面と空が融合しているかのように見える。

と断っているけれど、プールの外枠が無くて囲いが無いだけのプールをそう呼ぶのは、かなり誇大広告的要素が大きいと思うなぁ。この手のプールの先駆けとなった、SingaporeのMarina Bay Sandsのプールも、確かにプールから見えるのは高層ビル街が殆どだけれど、それでも一応Marina Bayに向いているし、少なくとも水辺にあるという点は重要だと思うのだけれど。

まぁ、近年八王子市を抜いて成長している立川市という取り上げ方をしたいが為なんだろうけど、「新宿がニューヨーク」というのは、それなりに同意できる比喩だけれど、「立川は日本のフロリダ」というのはやはり納得出来ない。「フロリダ」と言っても、結構広い土地だからどの当たりを想定するかにもよるけれど、まぁ殆どの日本人が持つ「フロリダ」のイメージは、OrlandoのWalt Disney WorldとかMiamiのイメージだと思うんですよね。それらの土地の印象は、やっぱり「海辺の街」だし、「輝く太陽と白いビーチ」だと思うのだけれど、残念ながらどちらも立川には無い。私は、ニューヨーク周辺の地理には明るくないのだけれど、新宿から立川へ西に向かう方向を、90度時計回りに回して北に向かうように考えると、ニューヨーク駐在の日本人などが多く住んでいる地域が(距離的にはちょっと違うかもしれないけれど)、立川当たりになるんじゃ無かったかな。自然が多くて良い場所みたいで(会社の知り合いが何人か滞在していたことがあったなぁ)、そう言う意味なら分かるんですが。

リモートワーク中心のビジネスモデルになり、それまでの東京一極集中や大都市集中の様式が、どんどん分散している現在。古民家移住とか地方移住もちょっとしたブームになっているみたいですが、一方でやはり都会での生活の利便性も捨てがたく、移住するにしても完全に「田舎・地方」ではなく、都会の臭いが残る地域にということで、立川とか本厚木とか湘南とか、都心から電車で1時間程度くらいで移動出来る地域が人気みたい。そう言う意味では、この記事がどう言う意図で作られて掲載されているのか分からないけれど、隠れたPR記事みたいな物の気がする。[PR]表記が無いのでそうとも言い切れないけれど、「車で移動すれば、埼玉の自然や町田のコストコも便利」なんていう、ちょっと本気で言ってるの、と感じられるまとめでもあるし。いずれにしても、日本でも沖縄とか南の方なら、フロリダの自然に近い地域は見つかると思うけれど、あの雰囲気がある土地はない気がする。あの独特の雰囲気は、土地や自然では無くて、そこに住んでいる人が醸し出す物で、良くも悪くもフロリダ人の雰囲気は、ちょっと日本人の雰囲気とは違うんじゃ無いかなぁ。そう言う意味で「日本のフロリダ」という言い方は、一番不向きな比喩の一つだと思う。

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