2021年1月21日

摘まんでアンテナ


 NTT docomoが発表した、通信ケーブルをプラスチックで挟むだけで、その部分がアンテナとなり簡単に通信網が構築出来るという技術。5Gや6G等、通信周波数帯が高くなると、電波の特性がどんどん光に近くなり、直進性が強くなるため一つのアンテナでカバー出来るエリアが狭くなるため、所謂「基地局」がこれまでよりも多く必要になります。記事でも一寸触れているけれど、屋外の基地局構築というよりは、屋内のオフィスや工場などで5G/6G等の通信網を構築するときに、フレキシブルかつ簡単にネットワークが構築可能になり、かなり有効な手段になりそう。複数箇所を摘まめば複数箇所でのアンテナ設定も可能という事だけれど、その通信ケーブルの長さとかの制限はどうなんだろうか。

簡単にネットワーク構築出来るのもメリットですが、この原理がケーブル(誘導体導波路)を摘まんで歪ませることで漏洩する電波を利用するという物。多分、アンテナ一箇所から漏洩電波を利用出来る範囲はそんなに広くないと思うんですよね。だからピンポイントでアクセスポイントが設定出来ると、セキュリティ的にも有利。一つの会議室の中でも、一般開放用のネットワークと、それとは別にセキュアなネットワークを設定出来る分けですからね。私なんか仕事でテスト機を複数台色々と配置したりするけれど、このケーブルを一本設置しておいて、必要に応じて摘まんでアクセスポイントを作る事が出来れば、凄く便利そう。

「漏れ電波を利用する」で思い出すのは、当初東海道新幹線でサービスされていたWi-Fiサービスのバックボーンが、線路に沿って設置されていた通信ケーブルからの漏れ電波を利用して新幹線車内のアクセスポイントと接続していたこと。これ、凄く不安定でスピードも出なくて、実際には(あくまで個人的感想ですが)使えないサービスでした。だから、余り良い印象はないのだけれど(笑)、今回の技術は多分ベースになるケーブルの作り方に技術があるんでしょうね。何も無い場合は高効率で劣化の少ない信号送信が可能で、でも物理的に摘ままれると効率的に漏れ電波が出るような仕組みになっているんだろうなあ。この手のケーブルは、内側に信号用の電線があって、外側はシールド用の網状の金属シートで覆われているけれど、その部分の編み方とか工夫されていて、何も無い場合は稠密でシールド効果が発揮されるけれど、摘ままれると一部が開くような構造になっていれば、そこから漏れ電波が出てくる様になっているんじゃ無いだろうか。

何でこう言う技術がこれまで出てこなかったのか考えると、これが5Gや6Gという高周波数帯(ミリ波)を仕様するからでもあるんですよね。これが、地デジが配信されているVHSとかUHF当たりの周波数(MHz帯)だと、多分実用化できないけれど、GHz帯のさらに28GHz帯とかそれ以上だと、ちょっとしたケーブルの特性の違いで信号品質が変わったりしますが、それを逆手に取った技術という印象。デメリットをメリットに変えるという意味で、面白いなと感じるし、こういう所に着目して実用化していくところに、技術者として一寸嫉妬みたいなものも感じたりしますね。

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