2020年12月1日

Nikeの映像

 

Nike Japanが公開して、物議を醸しているこの動画。最初見ていたときには気がつかなかったんですが、YouTubeの説明を見たら、

アスリートのリアルな実体験に基づいたストーリー。
3人のサッカー少女が、スポーツを通して、日々の苦悩や葛藤を乗り越え、自分たちの未来を動かしつづける。You Can't Stop Us.

と書かれていて、「あれ、3人? 全員サッカー女子(男の子もいたと思った)?」とちょっと混乱。まぁ、ストーリーとしては、国籍や見た目から阻害されていた少女が、サッカーというスポーツで自分のアイデンティティーを発見・確立して、阻害を破る、みたいな話だと思うんですが、正直ちょっとバイアスが掛かりすぎていて、その単純なメッセージが伝わらない気がします。CMとして見るなら、ターゲットが凄く狭い(阻害されているサッカー女子で、サッカーで活躍して成長する、というセグメント?)し、その「阻害要因」が、国籍(というか、在日朝鮮人問題)と人種的容姿の問題だけとりあげるのも片手落ちでは。そう言う問題も決して少なくないことは理解するけれど、それ以上に何の理由か分からないけれど「虐め」に合っている子供も沢山いるわけで、そう言う子供達も含めて「スポーツは素晴らしい、You Can't Sop Us.」というメッセージならまだ分かるんですが。

三人登場する女の子で、一人目の子は在日問題、三人目の子は国籍問題だと分かるんですが、二人目の子の問題点は何だろうか。床に教科書(?)を広げて勉強する様子が最初の方に映るから、もしかしたら貧困問題が二人目のこの問題点なんだろうか。あるいは、TikTok(?)でアップした「マルモリ」動画を批判されて鬱になったり人間不信になるという事だろか。そうなると、一人目と三人目の子の問題と、二人目の子の問題は別ですよね。前者は、言ってみれば自らのアイデンティティーをどの様に理解して主張するかだけれど、後者は個人の家庭の問題あるいは対人関係の問題とも言える。そう言う意味では、最初に書いた「虐め」問題も取り込んでいると言えなくも無いのか。ただ、私の理解力が足りないせいか、どうしても前者の「国籍・人種」問題をメインで取り上げたいような気がするんですよね。それでも、結局は三人がスポーツに活路を見いだして、そこから成長するみたいな場面で終わるんですが、やっぱり一人目・二人目の女の子の取り上げ方が気になる。この動画に反対意見の多くが、日本の差別を誇張して居る誤解を招く言い方をしていると反対しているけれど、ごく一部の行為や事実を、それが全てのように描いている点は、それが企業のCMで有ってもちょっと不信感を感じるなぁ。例えば、動画の最初に「A story in Sports...」とかテロップがあって、そう言う事も有った、というニュアンスが感じられるなら、まだ理解出来るんですが、ちょっとCMとして恣意的な部分があり、それ故に反発や反対も多いだろうなと。それが、CMとして製品訴求をする目的なら、それはそれでCMとしては「有り」なんだろうけど、逆にターゲット層以外の購買機会を失うような内容だと、企業CMとしては駄目なんじゃ無いかなぁ。

YouTubeのコメント欄を見ると、散々な反対意見が多く見られるのも、そう言う理由じゃ無いだろうか。まぁ、Nikeもいろいろあちこちで批判を浴びているので、それに油を注ぐ結果になってしまった感じもしますよね。最後の「You Can't Stop Us.」というのは、映像に出ている三人の女子達へのエールなんだろうけど、逆に「Nikeの考え方、企業思想は止められない」みたいな感じにも受け取れてしまうし。特に、一人目の女の子に在日問題を、三人目の女の子には大坂なおみ選手をオーバーラップさせたのは、Nikeとしてそう言う事を考えていることを表しているわけで、やはり恣意的なものを感じてしまう。政治的主張なら「有り」なんだけれど、CMとしてあるいはスポーツの魅力・実力を言いたいのであれば、あのシーンは不要だと思う。一人目の女の子は、チマチョゴリを着たシーンで分かるし、三人目の女の子もアフリカ系の親御さんとの混血ということは、見ただけで分かるし。逆に言うと、だからこそ二人目の女の子の登場意図が良く分からない。「虐め」という事であれば、やはり他の二人とは意味が違ってくると思うし、二人の間に挟まれているから、この子も何か国籍とか人種問題で悩んでいるように、最後は勘違いしてしまいそう。「アスリートのリアルな実体験に基づいたストーリー」とNike Japanは書いているけれど、リアルを3つ並べたからと言って、その映像も「リアル」であるとは限らないんじゃ無いだろうか。

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