佐々木俊尚氏のコラムから、日本の1970年代後半から1980年代に掛けて流行った「City-Pop」が、今アメリカでブームになっている理由について。私も何度か書いていますが、自分が一番音楽を聴いて、その後CD等で集めて今はiPhoneの中に入れている音楽の、多分80~90%はこの時代のもの。だから、記事に書かれている内容に関しても「うんうん」と凄く納得出来る気がします。
記事の中で引用されている、アメリカはシカゴのDJ、Van Paugam氏の考察が成るほどと理解出来るのですが、この「City-Pop」自体が、当時のアメリカの音楽をベースにしたり参考にして作られているため、現在のデジタルミュージックの時代になって、聞いたことが無い日本の音楽なんだけれど、何か懐かしさを感じる音楽でもあるため、人気が出ているという話。言われてみれば納得出来る話で、当時の楽曲はアメリカで流行っていたAOR (Adult-Oriented Rock)やBCM (Black Contemporary Music)、あるいはFusion とか Crossover Musicとか、ある意味アメリカの音楽シーンが一番賑やかになった頃じゃないだろうか。それが日本の音楽にも影響しだして、それまでの「演歌・歌謡曲」から、もっと軽くて聞き流せるような「City-Pop」と呼ばれるような、洋楽っぽいメロディーに日本語のちょっと今風の歌詞を付けた感じの楽曲が、そもそもの発端だったような気がする。
自分の記憶を辿ってみると、まずは「フォークソングブーム」があって、ギター一つ弾き語りするようなアーティストが1970年代に流行りだし、その中心の一つがYAMAHAの「ポプコン(ポピュラーソングコンテスト)」であったことが大きいのでは。ポプコンのスタートは1969年だから、1970年代後半にはそれなりの地位を確立していたし、それまで余り無かった「シンガーソングライター」なる人が登場しだしたのもこの頃だと思うし、それ故に日本のそれまでの楽曲に固執すること無く、結構色々な楽曲を取り入れていた気がします。もう一つの理由は、Walkmanとレンタルレコードの登場。初代Walkmanが登場したのが1979年で、これによって、それまで「自宅で聞く音楽(レコードやFMラジオ)」を外に持ち出して、「自分の好きな曲を好きなときに好きな場所で聞く」という、「文化」が生まれ、多分これで音楽市場のニーズと規模が一気に拡大したんじゃ無いかと。そうなると、今で言うところのインディーズみたいな形で、いろいろな人が音楽を出して評価される下地が出来たように思います。それに拍車を掛けたのが、レンタルレコードの「黎紅堂(れいこうどう)」の登場で、これが1980年。これによって、自分の好きな歌手や楽曲入りのレコードを借りてきて、自分好みの「カセットテープ」を作る事が出来るようになり、今で言うところの「プレイリスト」みたいなカセットテープを、幾つも作りましたよねぇ。ある意味、日本国内における「音楽市場の爛熟期」と言っても良いのが、1970年代後半から1980年代から90年代だったんじゃ無いかと。で、そうなると作る方も忙しくなるわけで、言い方は悪いけれど「アメリカでヒットしている音楽を、『参考にして』作る」みたいな事が、案外昔の楽曲のDNAを日本のCity-Popに入れ込んだ理由じゃ無いかと、個人的には感じるんですが。
で、レンタルレコード、それが後にレンタルCDビジネスになり、音楽を聴く機会が一気に広がったように、現在のシリコンオーディオからデジタルダウンロードで聞く事で、これまで以上の圧倒的な量の音楽に触れる機会が得られるようになりました。それによって、外国の曲に触れる機会は勿論、例えば自分の親世代の楽曲だとか、もっと昔の楽曲だとか、以前なら全く接する機会の無い楽曲にも簡単にアクセス出来るようになったことで、「再発見」されることが圧倒的に増えるというのは、やはりテクノロジーが文化を創り発展させる好例じゃ無いだろうか。Walkmanが「音楽を持ち歩く」という新しい文化を創ったように、今のデジタルダウンロードは、「時間と地域を越えて音楽を発掘出来る」様になったと思いますね。しかも、レコメンド機能、それもAI等により意外な曲が提案されたり、他人のプレイリスト共有から全く自分の好みでは無いけれど何故か心に引っかかる曲とであったりと、それまでならレンタル店にある何千程度のタイトルが母集団だったものが、今では何千万何億という曲が対象になるわけですからね。少し前に、「Youは何しに日本へ?」で、日本のCity-Pop/J-POPファンデ当時のレコードを買いに来た(確か)アメリカ人の話がありましたが、こういう事情があったんだなぁと記事をよながら納得しました。当時は予想もつかない話何だろうけど、例えば日本の浮世絵とかがヨーロッパ等の絵画に影響を与えて来たような話の、逆バージョンなんでしょうね。
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