2020年11月28日

物作りの秘訣

ITmediaの記事から、日本の物作り衰退の理由についての記事。うーん、EV、ドローン、MSJを並べることにはちょっと無理があると思うし、それらを「日本の物作り大国」に結びつけていくのも、ちょっと無理がある気がするけどなぁ。しかも結論として、ハードウェアの問題では無く、ソフトウェアやノウハウという部分での日本の遅れを言うのは、それもあるけれど、それだけじゃ無い気がします。

EV(記事の中ではEVと言ったり、バッテリーの話になったり、どっちを言いたいのか)とドローンに関しては、ソフトウェアというよりも、「失敗しても何度でも挑戦できる・する」事が許されている環境と、それに加えて特にバッテリーやドローンで中国勢が台頭しているのは、同業他社が乱立していて競争が激しいのに加えて、戦略的に中国政府(=中国共産党=人民解放軍)が介在していることも大きいと思う。中国国内マーケットだけで、世界市場の何割かを占めているわけですが、その中の競争で勝ち抜いて世界に出ていけば、それは大きな力になると思う。1980年代くらいの日本がまさにその状態で、日本の厳しい消費者に鍛えられた製品は、日本国内だけでも世界で2~3割位の市場があったわけで、そこから世界に出ていけば半分くらいは抑えられた時代。それと同じ事が中国で起きていて、かつ中国の場合はコストが低いから価格競争でも有利になっていることが大きいと思いますね。

MSJ(三菱スペースジェット)の場合は、久しぶりの航空機開発という事と、且つ既存技術を利用するよりは自社開発優先したために、通常よりも増えた色々な手続きに関してのノウハウが無く、そこで何度も開発のやり直しや改訂が発生したことが致命傷だったように思います。もっと早く、経験者を採用して、新規の飛行機を作る事よりも、新規ビジネスとして飛行機を出す事を優先していれば、もう少し違った形になった気がする。今後どうなるか、行き先は不明だけれど、事実上世界のリージョナルエアは、ブラジルのボンバルディアだけに今はなっているので、今後の展開ではMSJに分が無いわけでも無い。気になるのは中国飛行機メーカーが、その間に力を付けて、中国国内以外での型式証明を取れるようになったら、これは恐いですよね。彼らの場合、言い方は悪いけれど物量作戦で兎に角経験値を積み上げていくことは得意だから、1年2年では変わらなくても、5年10年後にはそれなりの飛行機メーカーが誕生している気がする。だから、MSJも遅くとも5年後位までには何とかしないと、本当に開発終了となりそうな気がします。

日本企業が「物作り大国」として存在していた時代は、バブルの頃であり企業としても開発費等結構潤沢に準備出来ていた時代。だから当時の製品開発では、結構無茶な製品を作って売り出して失敗したりしていたけれど、中にはヒットに繋がる商品も生まれて、それで結果的にはプラスになれば許されていた時代。それが、バブル崩壊後は、兎に角「成功すること」しか許されなくなって、開発費も削減され、お金も人も物も無い中他者よりヒットする製品を作れという、無理難題を何とかこなしていくしか無い時代が今でも続いています。そんん中で、特に中国では殆ど毎日のように新しい製品を作っては恐し、売り出しては失敗し、それでも「千三つ」じゃ無いけれど、一つ成功した企業が生まれると、それに追随してさらに競争が生まれて製品の品質や性能が上がって行く。良い意味でのフィードバックが、過酷な開発競争というか生存競争みたいな感じで進んでいることが、中国の成功の秘訣だと思う。そこには、「開発独裁」と言っても良いくらいの、政府の介入あるし、それ故に歪みや不公平な競争も存在しているのだけれど、結果的に国が豊かになり国民の生活水準が上がれば、その仕組みがどうであれ国民は満足するし、国としても成功している、というのが今の中国だと思う。記事の最後に指摘されているように、日本が過去の栄光に浸っていたというのも事実だと思うけれど、やはり社会として余裕が無くなってきて、失敗が以前よりもさらに許されない社会になっていることが最大の問題点だと思う。結局はお金の話になるのだけれど、潤沢な資金提供を例えば国とかがして、1000個のプロジェクトを立ち上げて、その中で一つでも成功したらOK位の気持ちが無いと、今の日本がまた復活するのは厳しい気がする。それだけ、世界の競争は厳しいと言う事はもっと認識されるべきだと思うなぁ。

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