2020年11月19日

増えたけど問題ないトリチウム

  1. 毎日新聞が記事にしている、 福島第一原発敷地外からトリチウムが検出されたという記事。記事見出しでは、

福島第1原発敷地外の地下水からトリチウム 継続的検出 東大など研究チーム

と、まるで東大の偉い人達が、未発見の問題を発見した! みたいな印象を受けるけれど、記事を読めば、 

  1. 東大の研究チームが、2013年12月から2019年12月の6年間、原発周辺の10箇所で地下水を観測
  2. 敷地南側から10mと300mの2箇所で1リットル当たり平均20ベクレル(Bq)、最大31Bq、最小15Bqだった
  3. トリチウムは自然界の水にも含まれるが、濃度は1Bq未満と言われている
  4. 国の基準は6万Bqで、地下水から検出された濃度は大幅に下回っている
  5. セシウムなど、トリチウム以外の放射性物質も微量含まれていた
と説明されています。つまり、最大値(31Bq)で見ても国の基準の僅か0.05%程度の値を、恰も問題のように取り上げている点で、まずは不信感。大体、記事として意味不明な点が多い。

  1. 6年間検査したと書いているけれど、その間の検出値で最大値は何時で、最小値は何時なのか不明。普通は、2013年に最大値が検出されて、2019年に最小値と考えるけれど、それならば6年間で半減しているわけだから、今後も減少することが予想される。
  2. 原発10箇所で観測して、でもトリチウムの増加が検出されたのが、その2箇所だけだったのか、それ以外の箇所でも検出されたのか不明。記事では、「トリチウを確認した地点」が地図に明記されているけれど、それ以外の8箇所はどこなのか。福島第一の水素爆発の時は、原発地点から北側(北北西)に風が吹いていて、だからそちらの方向に汚染が広がった記憶があるんですが、この地図を見るとその反対側になっています。
  3. セシウムなども微量検出されたが、水素爆発でとびちったものが地表から雨水などに混じった可能性があり、敷地から流れだしたものかは分からない、と言っています。それなら、トリチウムにしても同様で、飛び散った物がセシウムなどと一緒に雨水などで地下に浸透して、それを検出したかもしれないのに、なんでトリチウムは敷地からの漏水を疑い、セシウムは判断出来ないと言うのか。
  4. 国の基準の、例えば半分とかせめて10%位迄値が上がっているなら、何か問題提起するのも理解できるけれど、1%にも満たない値を取り上げて、しかもその由来も定かで無いのに、わざわざ誤解を生むような見出しとともに記事にするのか。
私の心が怪しいためかもしれないけれど(笑)、針小棒大に福島原発の事を取り上げて、不安を煽っているようにしか見えない。本当に福島第一の影響の有無を記事にしたいのなら、もっと違う内容になると思うのでが。因みに、今回発表された論文はこちらに掲載されています。かなりざっくりとした斜め読みですが、論文では周辺の地下水の状況を測定して、本来の値(事故が無かった場合)よりも大きな値が計測されたので、現在の海側だけでなく陸側の観測態勢も増強する必要が有る、という事かと。さらに、記事には触れられていませんが、論文では処理水タンクの漏水の影響も指摘しており、色々な複合的な要因が影響していることも想定されます。そう言う意味では、貯めたままの処理水を早く再処理して希釈して海中放出することで、この論文で指摘されている地下水への影響も解消されると思うのですが、そう言う事は記事の中では全く触れられていない。また、この論文に関して東大がプレスリリースを出していますが、

  1. 福島第一原発内の汚染水対策工事とは独立して、定常的に自然界の値よりも高い(ただし、基準値よりも相当低い)値が検出されている
  2. 敷地内からの汚染水とは異なる経路による影響が考えられる
  3. したがって、今後はより多くの地点で詳細な分析が必要
という学術的な内容であって、福島第一原発事態の話というよりも、事故発生後の影響に関しての1つの考察と言うべきかと。これまでも、除染作業などが進められていて、多くの地点では人も戻っていますが、それでも完全に除染することは不可能だし、そこは優先順位を付けていくしかない。個人的には、この研究は今後の生活に関して1つの考察ではあるけれど、福島第一の原発事故に批判的な人達にとっては、津後の良い「道具」に利用されないかなという気もします。そう言う意味では、今回検出された値は全く影響の無い範囲での増減であることはもっと強調するべきでは無いかと思います。

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