2020年11月30日

斜陽企業

東洋経済オンラインの記事から、創業来の赤字に苦しむ朝日新聞社の話。2020年度の赤字額が、170億円になると予想される非常事態な訳ですが、それ以外にも現在の朝日新聞社の立場・環境から、いろいろと課題や難問が山積しているという記事。筆者が上げている、次の3つのポイントが面白いというか個人的には興味深いですね。

  1. 業界の中で死の谷のポジションにいること
  2. 不動産業という副業で莫大な利益があがっていること
  3. 民間企業でありながら「社会の公器である」ということ
最初の「死の谷」というのは、二番手の事とのことで、トップの読売新聞も厳しいし、3番手移行の毎日新聞、日経新聞、産経新聞も同様だけれど、それぞれ得意分野に特化したり(日経)、規模の小ささ故にすでに対策をとりつつある(毎日、産経)のに対して、なまじそれなりの規模を占めている「2番手」だから、大鉈を振りにくいという事なんでしょうね。

二番目の、本来のメディア事業よりも規模は小さいながらも、メディア事業以上に利益を上げている「不動産事業」が足かせになっているという話。メディア事業が3345億円の売上げで19億円の利益なのに対して、不動産事業では385億円の売上げで68億円の利益と、圧倒的に効率的で高利益事業。コロナ禍で地方移転とかリモートワークが進むので、不動産事業も安泰とは言えないけれど、仮に新聞事業やその他メディア事業で赤字になっても、それを不動産事業の利益で補填出る程度であれば、まだ大丈夫という考えは、普通は思ってしまうだろうなぁ。そう言えば、新聞社だけで無く、放送局も結構不動産事業を持っていて、ちょっと古い記事だけれど、赤坂に本社ビルがあるTBSは「TBS不動産」とも言われているけれど、フジテレビも結構同様なのね。2年前でこの状況だと、現在はもっと厳しい状況なんだろうなぁ。記事の最後にも書かれているけれど、日本テレビやテレビ朝日は、放送収入が中心になっているけれど、それだってこの2年間で大きく減少しただろうし、不動産事業だって決して楽じゃ無いだろうし、どこも厳しい状況に変わりないことだけは確かそう。

で、最後の「社会の公器である」という部分に関して言えば、まぁそう言う変なプライドみたいものは有ると思うし、それが最近のメディアではさらに変なバイアスだったりベクトルが明後日の方向に向いている人も多々見かけるわけで、そう言う意味では、これまで「社会の公器」として信頼を得ていたものが、どんどん無くなっていくのにそれを認識していない新聞社(や、メディア等)は結局は衰退していくしかないのかもしれない。

こう言う場合、会社として一番に考えないといけない事は、不採算部門を処理するとともに、中心事業(コアコンピテンシー/Core Competency)は何かと考えて、そこに資源やコストを集中することで、生き残ることを考えないといけない。その場合、やはり利益率は低くても、3000億円以上の売上げがあるメディア事業を中心にするべきだと思うし、その中で何が不採算なのか、何が読者の不満や問題なのか、そういう所をちゃんと見直さないと、このままじり貧であることは確か。特に現代は、ネットの発達で生のデータは勿論、瞬時に色々な情報が拡散されたり、検索される時代なわけだから、その情報の品質と鮮度が勝ち残るための必須項目。ところが、情報品質も変なバイアス込みだったり、明らかに変なノイズが載っているようなものを拡散させたと思ったら、それを取り下げたり、別の話にすり替えたりとか、「社会の公器」の部分では全く機能していない状態の組織に、我々としてはわざわざそんなところに情報を収集する目的でアクセスする必要性も無いわけです。会社として、多少右だったり左に寄ったバイアスがあるのは、少なくとも私企業としては有りだと思うけれど、「社会の公器」という意味では、その前提となる中立な情報をまず提供して、その上で自社の見解を述べるべきだと思う。それが無いから、新聞というメディアはどんどんじり貧になっていくんだと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿