2020年9月9日

尖閣衝突事件10年

民主党政権時代には、今思いだしても色々大きな事件が発生したんですが、外交的に一番大きかったのは、この尖閣諸島近海での中国漁船船長の拿捕事件と、その後その船長を無罪放免して非難を受けたことでしょうね。尖閣諸島の領海内で違法操業していた中国漁船に対して、海上保安庁の巡視船が監視業務をしていたところ、中国漁船が巡視船に体当たりをしてきた事件。その様子はビデオに録画されていてたものの、政府(菅直人政権)の判断で非公開となったものの、その後海上保安庁のサーバーに保存されていた物が、当時の海上保安官だった一色正春氏が公開して大騒ぎになった事件

ビデオ映像を見ると、私なんかは明らかに中国漁船が後ろからぶつけてきているように見えるんですが、中には海上保安庁の巡視船がわざとぶつけていると擁護する意見も。結局、大勢はやはり中国漁船の違法行為怪しからんと言う方向に大方傾いたんですが、中国側の機嫌を損ねたくない当時の政府は、「機密情報の漏洩」というような理由から犯人捜しを始めます。結局一色氏が自ら名乗り出て海上保安庁も辞職することで、一応終息させたような感じでしたね。この映像流出に関しては、機密漏洩の面と、公共の利益の面、双方から色々意見が出て、彼の行為の正統性・違法性が当時議論されたんですが、今となってはそもそも非公開にした理由が理由だけに、一色氏の行為に関してはもう一度ちゃんと再評価したが良いのかもしれない。

当時の政府の意見としては、検察が釈放相当と判断したので釈放したという説明だったけれど、記事にも書かれているように、当時から検察に全ての責任をおっかぶせているという批判は、かなり強くあったように記憶しています。この年の6月に菅直人内閣がスタートし、7月の衆議院議員選挙で与党(=民主党)が過半数割れとなり、何とか大きな目玉政策(APECとか)を成功させて、政権の支持を得たいという焦りが合ったかもしれません。とは言っても、この時の稚拙な対応で政権の支持率も落としたし、外交的にも日本の弱腰が世界中に知れ渡り、特に中国はこのあたりから強気の要求をしてくるようになったような気もします。いずれにしても、尖閣諸島問題が今に至る大きなターニングポイントになった出来事の一つであることは間違いないですよね。

この後には、東京都の石原都知事(当時)による、尖閣諸島の土地購入の話が生まれて、それがますます中国側に対して火に油を注ぐことになります。最後は野田政権時により国有化されることで取りあえず無理矢理沈静化させたんだけれど、結局その後も中国の執拗な侵入工作は続いているし、尖閣諸島問題が解決することも無い。ただ、これも安倍政権の外交成果と言って良いんだろうけど、もし尖閣諸島で衝突が発生した場合、それは日米安保の範疇という言質を引き出していることで、辛うじて中国側も今のような「嫌がらせ」レベルから先には進めないのだと思うけれど。ただ、物量では今ではアメリカと伍する位の中国ですから、今後数で圧倒されると日本としては困るでしょうね。10年という、外交としては比較的早いタイミングで、当時の関係者からこう言う話が出てきたというのは、やはり当時の人にとっても疑問が大きい出来事であった証拠なんだろうか。当時の菅直人総理一人の責任とは言わないけれど、初めての政権担当で浮き足立っていたところに、余りに色々なことが起こった不幸でもあるようにも思いますね。

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