2020年8月22日

藤井二冠のパソコン

日本中が「藤井フィーバー」に沸き、対戦中も対戦後の様子もこぞって各メディアで伝えられています。そんな中で、Abema Timesに掲載されていた、藤井二冠との一問一答で、「自宅に帰ってやりたいこと」という質問に、「落ち着いたらパソコンを1台、組みたいなと思います。」との回答につい反応。そういゃ、どれくらいのスペックのパソコンを、将棋のAIあるいは将棋ソフトに使用しているんだろうか。

将棋ソフトにもピンからキリまであって、それこそ初心者や未経験者が将棋を覚えるために利用するものから、今回も対戦中に解説で使用されたような、瞬時に何億手先まで先読みする物まで、千差万別。私も、昔個人向けパソコンの開発に関わっていた頃に一寸触ったことがあるくらいで、今どうなっているのか全く分からない。それでちょっと調べてみると、どうも現在最強の将棋ソフトと言われているのは、弁護士の方が個人的に開発されている「水匠2」というものらしい。最近はI/Fを統一するために、どうもGUIは別モジュールで、この「水匠2」はエンジンとデータベースが提供されている様子。なかなか効率的です。で、Windowsのアプリなので、基本Windows環境があれば問題無いはずですが、これがゲームソフトのように高速な画面描画は要求しないので、多分グラフィックアダプターはそんなに頑張らなくても良いかも。それよりも、CPUが高速なのは当然として、メモリーもそれなりに潤沢に搭載した方が良いでしょうね。それと、内蔵ストレージに関しては、大容量化も必要だろうけど、それをSSDにして高速化する事の方が重要化もしれませんね。なんせ、何億手も先読みをするわけだから。

で、どうも藤井二冠は「AMD派」らしく、以前もRyzen 7 1800X搭載パソコンを使用していることを言っていたようだし、少し前にAMDのZen 2アーキテクチャに興味が有ることを発言して、それに対してAMDのCEOが反応した、と言う話もありました。一寸前までは、AMDと言うと、どうしてもIntelの二番煎じ的な扱いで、特に「Intel信仰」の強い日本では、余り見向きもされていない時代が長く続きました。それが、Intel CPUの供給不足や、AMDのRyzen CPUの機能向上もあって、確か最近では国内のパソコン市場の20~30%位を占めるくらいになっています。AMDの場合、外付けのGPU(Graphic Processor Unit)、所謂グラフィックボードも専門にやっていて、このGPUも含めた演算処理が得意なメーカー。AI関連の処理では、AMDが有利と言われているけれど、CPU/GPUで並列処理がガンガン流せるのが強みでしょうね。あと、メモリーは潤沢な方が良いけれど、Windowsのメモリーマネージメントって、そんなに有効だとは思わないので、そこは将棋ソフト側のリソースマネージメントの作り方がどうなっているかでしょうね。似たようなソフトの典型では、AdobeのPhotoshopがありったけのシステムリソースを占有して動くけれど、確かにリソースをそれなりに振ってあげると、動作もキビキビするし、途中でフリーズする事も少なくなる気がします。あとは、ストレージ系で大容量SSDにするとか。容量とコストでは、HDDの方が断然有利なのは事実なんですが、システムパフォーマンスは桁違い。高速かつ大容量(=高価)なSSDを、可能な限り搭載して欲しい(笑)。あと、予算的にはそれなりに潤沢になっただろうから、そう言う高速処理対応のマシンを複数台併用して、同時に異なる手を検証していくなんて言うのも有りかもしれない。まぁ、そうなると電源系も心配になってくるわけで、幾ら家庭利用とはいえ、電源容量とコンセントの数も気にしないといけないでしょうね。

もう20年近く前、個人向けパソコンの開発をしていた時、パソコンに同梱するソフトには「三種の神器」とも言うべき定番ソフトがあって、それが、
  1. 葉書印刷ソフト(年賀状印刷ソフト)
  2. カラオケソフト(インターネットカラオケ)
  3. 将棋ソフト
だったんですよね。葉書ソフトは、特に年末に売り出すときには必須のソフトで、似たり寄ったりの機能よりも、どれだけ次の年から数年分の干支データが入っているか、デザインのテンプレートが多いか、そのあたりの違いが如実に売上げに影響しました。カラオケソフトは、特に中高年層に遡及するには必須で、これも最初にどんな種類の歌データが入っているかで売上げに影響しました。若者向けにすると、演歌系が少なくて高齢者に受けず、その逆も又しかりでかなりバランスを取るのが難しい製品でした。そして、将棋ソフト。Windowsには幾つかゲームソフトが元々入っていましたが、多くの日本人は子供の頃に多少は経験があるため、将棋ソフトは他のゲームソフトに比べて人気もあったし受け入れられやすかったですよね。それと、当時もフリーのソフトがそれなりにあったんですが、やはりフリーソフトは強さの点でまだ不満があり、そこは製品版の将棋ソフトの方が、実際に対戦した時に「対戦しがいがある」ということで人気でした。オセロも当時流行っていたけれど、将棋に比べてアルゴリズムが簡単なのか、フリーソフトで十分強いものもあったし、結構定石も既に分かっていたので、オセロは逆に買ってまで遊ぼうという雰囲気は既に低かったように記憶しています。将棋の場合は、オセロ、チェス、囲碁等の同様な碁盤ゲームと比べて、取った駒を自駒として使用出来たり、相手陣地に入ると駒が変わったりと、かなり変数が多いのでなかなかプログラム化しづらい部分がありましたが、アルゴリズムの改善とシステムリソースの高速化がそれらの問題点を解決してくれましたね。特に今回は、昨日の第4局2日めの封じ手から終局までの差し手が、将棋ソフト「水匠」と100%一致したということで、藤井二冠が凄いのか、ソフトが凄いのか、もうよく分からない状態に。もしかしたら、藤井二冠の行動をAIに学習させたら、何か新しいコンピューター、例えばニューロコンピュータとか有機コンピューターとか、とんでもないアイデアの切っ掛けになるかも(笑)。

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