2020年6月30日

AIを買いかぶるな

将棋の藤井聡太七段が、ヒューリック杯棋聖戦に連勝して、初の棋聖獲得に王手を掛けた一戦。私は将棋にそんなに馴染みがないので聞きかじりだけだけれど、藤井七段が指した意外なイッテが曲面を動かして、現役最強と言われる渡辺明三冠の思考を崩したことは確かみたい。

その一手となる「3一銀」は、その時点ではAI将棋プログラムでも全く候補にも上がってこないような手であったけれど、藤井七段の対局の後再度確認すると、そのまでの4億手までの先読みでは結果は変わらないものの、6億手まで読み込むと一気に最良の差し手になるという事が後から分かります。これを理由に、藤井七段が6億手先まで読み切ったとか、AI将棋の申し子みたいな評価が対戦後出てくるんですが、それはちょっと違うのではないかと。将棋の場合は、過去の棋譜を読み込んでの知識だったり、昔からの定石とか色々事前情報はあるものの、単純に確立だけではと家無い競技であることは確か。昔の将棋ソフトは、人間の思考よりも高速に処理できる能力を利用して、次の手の探索ルーティンをひたすら回して最適解を見つけるものだったけれど、確か最近のプログラムはもっとスマートになって、過去の棋譜の読み込みからデータベースを作成して最適化処理をしたり、相手の癖みたいな物もパラメーターとして持っているはず。私の乏しい知識からかなり乱暴に言ってしまうと、AI将棋の場合はそれらの要素を背景として持ちながら、現在から未来を予想(探索)するものじゃないかと。

一方で、将棋に限らず、「天才」とか「名人」と言われる人の思考は、これも全く個人的な想像ですが、パターン認識みたいな物じゃ無いかと。盤面を見たときに、何となく最後の「詰め」の場面が浮かんできて、そこに至る道筋(=手順)が、逆回しのように見えたり、そこに至る道筋みたいな物が例えば山道で突然自分の歩く路が光りのように光って見えるような、そんな感じで認識されるんじゃないかと。だから、AI将棋とはある意味逆で、未来に生まれるであろう結果を予想しつつ、そこに至る過程が現在まで遡れるのではないかと思うわけです。これってスポーツをやっている人なら何となく分かると思うんですが、プレートか決められているんだけれど、相手の動きとか見て何となく「閃き」から、ちょっと早く動く、一寸左右にずれる、一寸タイミングを外すみたいな事が上手くいくのと同じような感覚なんじゃないかなぁ。野球でホームランを打ったバッターに、後からその事を尋ねると、後からは幾らでも説明出来るんだけれど、実は打った瞬間はそんんことを考えていなくて、多分打った後のことしか考えずにバットを振り出しているんじゃないだろうか。だから、AIなら絶対に手を出さないようなボールでもホームランになる場合も有るし、ど真ん中のドストライクでも打ち損ねることもあるわけですしね。

アメフトには、色々な部分にコンピューダが取り込まれていて、プレー解析とかにも利用されているけれど、AIを利用して相手の戦術やプレーを予想するのは先ず不可能と言われています。幾つか理由はあるけれど、年間の試合数が少ない上に、同じプレーでも選手はどんどん替わるし、オーディブルやプレーがブレイクしたりと、不確定要素が多すぎてAI予想するまでに至らないらしい。実は、AIにちゃんと仕事をさせようと思うと、膨大な量のデータを、それも綺麗な形に整えて入力してデータベースを作成しないと、ちゃんと動作しないんですよね。だから、定型的な作業が続くような場合の問題解析なんかは得意だけれど、新規の案件なんかは苦手だったりします。ただ、同じ事を繰り返すことで、それを観て人間が何か閃くことはあることで、多分コンピューターのない昔は棋譜を読み込んでそこから自分でパターンを見つけるものだったことが、いまはAIが有る程度分類してくれるからさらに深い考えや読み込みが出来るというの場、現在なんでしょうね。だから、藤井七段を初めとして現在の棋士にしても、決してAI将棋のやり方を学んでいるわけではなくて、自分の知識というか感を研ぎ澄ますために活用しているだけなんでしょう。その時に、AI将棋にはない生身の人間故の「揺らぎ」みたいなものが勝敗を今回の様に分けていくわけで、その部分は経験値が大きく物を言うんじゃ無いかと。藤井七段の場合は、本人の実力もあるんだろうけど、若い頃から色々な強い相手とこれから対戦できるわけで、その経験値が将来大きく役立つことは確かでしょうね。過去の中学生プロ棋士が、それを証明していると思う。

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