2020年2月5日

言葉の破壊行為

少年ジャンプに連載されているマンガの登場人物の名前が、所謂731部隊の人体実験を想起させるというクレームから、名前を変更するという騒動。一体どんな名前を使ったのか調べてみたら、「志賀丸太」の「丸太」が、死体を「丸太(マルタ)」と言っていたことに繋がると言う理由らしい。どうも、発端は中国・韓国の、所謂「愛国者」かららしいけれど、もう言う方も言う方だけれど、対応してしまう少年ジャンプや作者側もどうかと思う。

こちらの記事にも書かれているけれど、731部隊が死体を「マルタ」と読んでいたというのは、どうも事実では無く、その事を題材にした森村誠一氏の小説「悪魔の飽食」の中の話というのは、以前から言われている話。仮に、それが事実であったとしても、名前の読みが同じだから怪しからんと言うのは、かなり乱暴な話。

この「志賀丸太」という登場人物は、悪の手先を作り出す悪役側の医者役と言う設定なので、そういう所から731部隊の話に飛びついたのかもしれないけれど、そんなことを言ったら、多分全国に相当数いる「丸太」さんはどうするの。「丸太」では無いけれど「丸田」という名字の人も、私は知っているし、最近は余り見かけないけれど、サックス奏者の「MALTA」はどうなると、と小一時間。こんなことをやっていたら、どんどん琴葉がなくなって言ってしまう。

差別的な表現や言葉を改めようという行為は、時代の変化や、人の考え方の変化に応じて進んでいく物だと思うけれど、それは「〇〇という言葉は、この時代・あの状況では、こう言う意味で使われたけれど、現在では□□という理由から好ましくない」という事をいうことであり、「〇〇と言う言葉は無かった」とすることでは無いはず。一番重要なことは、何故その言葉が相応しくないのか、と言う事を理解して、人々が使わなくなることで、自然消滅すれば良いだけの話し。それでも、過去の記録や歴史は消えないけれど、それはその時代・時点では事実であったわけだから、それは記録として残しておくべき。例え、全く知らなかった人が、その言葉にであったとしても、「だから今は相応しくない」という理解があれば、それは過去の事実としては受け入れるけれど、現代の言葉としては使わないはずで、そう言う考え方や行為こそが「多様性」だったり「思いやり」じゃ無いだろうか。何でもかんでも、気に入らない物は無くせ、というのは、単なる「破壊行為」だと思う。

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