2019年5月2日

トリックプレー

先日の早慶戦で慶応が繰り出したトリックプレーが、フットボールクラスタで話題に。プレー自体は、QBから左にセットしていたレシーバーにパス(バックパス)でボールを渡し、そこからレシーバーがフリーになったレシーバーにパスする、言ってみれば一種のフリーフリッカーみたいなもの。問題なのは、QBからのボールの渡り方で、フォワードパスのように上手投げでボールを投げるのだけれど、わざとワンバンドさせる。そのボールをレシーバーが残念そうに拾い上げるものだから、ディフェンス側は一瞬「パス失敗」と思ってプレーを中断。そのすきに、ダウンフィールドにフリーになったレシーバーに今度はフォワードパスが投げられてTDを奪うというもの。

フットボールの場合、フォワードパス(前パス)はそのプレー中に一度だけ、かつスクリメージライン(スナップ前にボールが置かれていた場所)よりも手前から出ないと投げられない。また、フォワードパスの定義は、「ボールが投じられた位置から見て、水平か前方(相手エンドゾーン方向)位置でボールをキャッチしたプレー」なので、実は投げ方には何の規定も無い。ただ、どうしても上手投げすると「前パス」、下手投げだと「バックパス」という意識が働いてしまうんですよね。今回のプレーも、そういう心理的な隙を突いたプレー。しかも、じゃぁ何でもかんでもボールに飛びつく、ボールを持った人間にタックルすれば良いかというと、本当のパス失敗だったときにタックルしたら、それは「パーソナルファウル」の反則になる可能性もあるので、ちゃんとプレーを見てやらないと駄目。

最近の社会人の試合では、スクランブルに出たものの、スクリメージライン際に移動しながらパスの機会を狙ったり、そこから再び後ろに下がって時間を掛けてターゲットを探すプレーがよく見られるけれど、あれってプレーの複雑化もあると思うんですが、QBの位置把握能力と言うか、スクリメージラインの位置を先ず頭に叩き込んでいるクセが一つのスキルとして定着しつつあるんじゃ無いかという気がする。ただ、QBだけで無く、OLも、パスからスクランブルに変わったことを全員が一斉に確認してからダウンフィールドに出ないと、そこからまたパスに成ったときに反則(無資格補給車のダウンフィールド侵入)になるから、単にQBの技術だけで解決出来るプレーでも無いし。さらに言えば、わざと失敗するパスがちゃんとバウンド(地面に接地して)してから、レシーバーに確保されるような形にしないと拙い。コースがそれて、慌ててレシーバーがそれを取りに行ってしまうと、「あ、ファンブル」と判断されてしまうから。あくまでパス失敗に見せないと行けないから、上手くショートバンドで渡るような投げ方の練習も必要。

こう言うトリックプレーは、ファンの中でも好き嫌いが結構生まれるんですが、ただ、フットボールのプレーって、多くが相手を「騙す」もの。カウンターしかり、プレーアクションパスしかり、ドローしかり、相手の反応を逆手にとってヤードを狙うプレーは多く考え出されていて、それが試合を面白くしているのも事実。去年も、QBからボールを渡された選手が、レシーバーとしてダウンフィールドに走り出たQBにパスを投げる「フィリースペシャル」が人気でどこのチームも一度はやってみたけれど、ああいうプレーと事なり、今回場合は「プレー失敗」を錯覚させるもので、過去の例から見ると、この手のスペシャルプレーは結構一過性で終わるケースが多いように思います。一つは、「プレー失敗」なので審判も誤解してボールデッドの判定をしてしまう可能性があること。逆に言えば、ボールデッド=審判のホイッスル、が無いうちはインプレーなので、あの場合もそのままタックルしても良かったんですけどね。まぁ、慶応がシーズン1発目に見せてしまったので、もう残りのチームは今シーズンあのプレーは使えないだろうけど。しかし、慶応ってあんなプレーに頼るようなチームじゃ無かったはずなんだけれど...

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