2018年2月7日

魅力の無い大国

中国ライターとして著名な、安田峰俊氏のコラムから、「強いけれど魅力ゼロの中国」について。面白く短いけれど読み応えのある記事ですが、個人的には重要なのは最後のページに書かれている「中国の魅力論」ですね。自分の感覚で言うと、やはり中国に一番に感じるのは「製造工場」と言うイメージ。最近は、進出した中国から国内製造に回帰する企業も増えているけれど、それでもまだ多くの部品製造や基本部分は中国の日本よりは安い労働力で製造して、最終工程を日本で仕上げて行く方式が殆どでは無いだろうか。昔のバブルの頃のように、それこそパーツの設計製造から組み立てまで、全てを国内の企業で賄った形には、残念ながらもう無理だと思うし、そこまで戻る必要も無いと思うから、半完成品の国内製造と言う体制は正しいと思う。いずれにしても、もう二本国内で作るにはペイしない部品も多く存在しているし、輸送費をかけてもコスト的に見合う製造場所があるわけで、それを捨ててまでわざわざ国内回帰する必要も無いだろうし。その分、国内での半完成品の最終工程に国内ならではの付加価値を付ければ良いわけですからね。例えば短期納品でも、極端な話注目即日発送なんて言うのも可能になるだろうし、ものによっては新品だけれど有る程度エージングをして快適になってから出荷するとか、そういう形で付加価値が高く満足度が高い製品にするのが、今の国内製造の役目だと思うし。

もう一つは、やはり「市場」としての中国の存在はまだまだ大きい。勿論、12億人の人口全てが同じ経済状態に有るわけでは無いから、実質的なターゲットは数億人程度なんだろうけど、それでもマーケットとしては十分に大きい。ただ、中国市場の存在や規模は大きいものの、それに匹敵するようなマーケットが東南アジアやインドなどにも立ちあがってきているわけで、そういう意味では中国市場の重要性は1990年代から2000年代の頃に比べて下がってきているような気がします。マーケットとしての魅力が減ってきたと言うよりも、世界の中での相対的な位置付けと規模が縮小しているような気がします。さらに言えば、最近の訪日客がそうだけれど、「もの」から「こと」に消費行動が変わってきていることも大きいのでは。元々の市場規模が大きいだけに、その一部でも消費方向性が変われば影響は決して少なくないですからね。

そんな中国ではあるけれど、極端な話我々が中国に魅力を感じる部分は、所謂「三国志の世界」であったりするわけで、決して今の中国に憧れや魅力を感じているわけでは無い。政治体制もそうだし社会体制にしても、外から見る限りわざわざそこに入っていき喜びを感じるような雰囲気は無いわけで、結局は安く製造してくれる場所であり、日本に丘を落としてくれる国と言う認識が一番適切なのかもしれない。逆に、外がどう考えようと無視して、国内に対して厳しいけれど見返りもあるような仕組みを作ることで、人民民衆を掌握していることは、それはそれで成功していると言えるんでしょうね。だから、記事にも書かれているように今の中国を否定する人って、余り聞いたことはありません。ただ、やはりそこは昔から動乱の中で生きてきた人達なので、外にセーフティープレイスは準備するし、経済的にも安全な場所に避難させたりという事は、表からは見えないだろうけどちゃん度準備しているのも中国の人の知恵。近年、北海道の過疎地等を外国資本が買収していると騒動になっているけれど、案外そういう目的で密かに資産移動しているような気もします。それならそれで、がっぽりと日本も課税してあげれば良いと思うけれど。

彼らが中国の中だけでその様な生活を維持して満足してくれているなら、我々は全く問題無いのだけれど、それを維持するために外に膨張し始めているのが今の中国であり、それが際限なく続く可能性があるから困ってしまう。アメリカが「世界の警察官」として世界のあちこちに進出することは、良い事も悪いこともあるけれど相対的にはそういう存在も必要だと言う納得も出来るけれど、じゃあ中国がその立場を表明して納得出来るかというとそれは全くないわけで、だから困ってしまうわけですよね。今の習近平体制が変わらない限り何も変わらないわけで、それが何時なのか、それまでどの様に付き合っていくべきなのか、何か出口の見えない迷路の中を各国がウロウロしているような気がします。その「理由の無さ」が魅力の無さ何ですよね。

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