2017年8月24日

2Dと3D

先日、動画から一瞬の状況を切り出して、その場面を悪用する話が有りましたが、今度は写真の見え方を悪用した話。東京新聞に掲載された記事ですが、市民団体が撮影した写真を使用して、恰もベイブリッジの直近を米軍のヘリコプターが飛行しているような内容の記事を掲載している。

確かにこの写真を見せられて、ベイブリッジの近くを飛行している、と言われればそうかと思えるかもしれないけれど、よくよく見ると飛んでいるヘリコプターのサイズに対して、ベイブリッジの橋脚の高さを比較すれば、撮影場所にも寄るけれど橋とヘリコプターは1km位離れている計算になる。写真撮影、特に望遠レンズを使用する人はよく知っている「圧縮効果」と呼ばれるもので、被写体だけで無くその前後の部分にもピントが合うために、それらが同一の距離にあるように見えるもの。どの種類のレンズにも生まれるもの現象だけれど、特に望遠レンズになるとその範囲が長くなるので、より遠くのものと近くのものが近接しているように見える現象。ビル街すれすれに着陸していく飛行機なんて言う構図は、羽田辺りの離発着を撮影している航空機写真マニアではお馴染みの構図だけれど、実際はビル街の上空ではそれなりに距離が有り、着陸しようと加工してきた時に背景にビル街が映り込み圧縮効果で真上を飛行しているように見えるもの。実細にその光景を見れば、人間の目なら遠近感を認識して「真上」とは認識しないけれど、写真の場合は二次元に圧縮されるのでそう見えない。

そう言うことに馴染みの無い人が、写真を見た印象だけで誤解するのは、それはそれで仕方ないし当然なこと。でもこの東京新聞の記事が駄目なのは、最初から「直近を飛行する危険な米軍ヘリコプター」という意図で記事が書かれていること。それでも撮影者が市民団体の関係者で有る事を最初に紹介している点は、ある意味正直なんだろうけど、その時点で「あぁ、バイアスが掛かっている」と感じてしまう。実際にその場でこの光景を見ていて、橋とヘリコプターどちらが手前かくらいは分かると思うけれど、記事に書かれているような「数十メートルの近さ」という事は分からないでしょう。例えば橋の手前に比較出来るようなものが存在して入れば別だけれど、あの辺りにはそんなものは無いし。で、そんなことを書いた後に航空法を持ち出して、半径600mで最も高い建造物から300m離れることが必要と説明。つまり、直接的には言及していないけれど、「撮影者は数十mの近さで飛んでいたと証言」という事と航空法を持ち出すことで、暗にこの米軍機が航空法違反をしながら横浜港上空を飛行していたと言う誤認を生みだそうとしているように感じられます。

すでにTL上では多くのコメントが書き込まれているけれど、こう言う事をやっていると狼少年の逸話じゃ無いけれど、本当に必要な時に信用されないとは思わないのだろうか。危険性を主張することは意味がある行為だと思うけれど、何でもかんでもだからといってそれに関連付けることを良しとするのはメディアとして終わっている証拠じゃ無いかと思うんだけれど。まぁ、あの東京新聞だしなぁで終わってしまうのかもしれないけれど、これって「道交法を無視して危険運転をしているトラック運転手」と変わりない気がするんだけど。

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