2017年4月26日

「築地」ブランドが消える時

豊洲市場への移転問題は、築地の改修話が出てきて二転三転して混沌して行くばかり。そんな中で、以前は余り聞こえてきていなかった「築地残留派」の人達の声も大きくなってきているけれど、その主張を聞くと単に「築地に残りたい」と言うだけで、ちゃんとした理由らしき理由は聞こえてこない。

豊洲は危険(?)だけれど、築地はこれまで何も問題無く続いてきたから安全・安心、みたいな事を聞いた時には一寸頭が痛くなってきました。いゃ、原発は安全だと思っていたけれど1000年に1度の危険を放置したから被害が出たと言っているのが反原発の皆さんで、それと同じ理由じゃ無いか、築地の人達が言っているのって。既に何十年も前から築地改修の検討がされていたのに、様々理由から別の場所への移転という話が決定したはずなのに、今になって改修という話を蒸し返すのは、何年か前の「最低でも県外」と言いつつも、いざ自分が責任者になると「現実を知り県外は無理」と言い出した、某首相の話が思い出される。

科学的な見地から言えば、築地に残るべき理由はほとんど無く、豊洲に移転できない理由もほとんど無いのに、何故か築地に残ることが正義と言うようなことを、何とかPTの座長から言い出しているのが最大の問題では無いだろうか。その主張理由も、出してきている数値は切り貼りして整合性が無かったり正しいものでは無かったり、かなり胡散臭い。そう言う話を聞いていて感じるのは、この人達が守りたいのは「築地」というブランド名であって、そこで売買される魚たちでは無いんだろうなと言う事。今物流、特に魚介類などの鮮度勝負のものはどんどん産地直送になってきていて、市場を通さずに末端まで流通する仕組みがどんどん出来ている。確かに「築地」には日本中から高級な魚介類が集まるんだろうけど、今地域でもブランド化を進めているから、例えば「大間のマグロ」が築地だけに現れるわけじゃ無い。実際私が懇意にしているお寿司屋さんも、先日マグロを頂いた時に、それは気仙沼の漁港から上がった最上のものを市場に出さずに現地で買い付けたものを分けて貰ったと言っていましたが、どんどんそう言う形で良いものを早く入手する仕組みに変わっていくでしょうね。

そうやって、商品自体にブランド名が付けば、そしてそれが特定の場所以外でも入手可能ならば、どんどん築地に入るものも減っていくだろうし、築地の高品質商品の集散地としての地位も下がることは確実。実際消費者が欲しいのは、「築地からのマグロ」ではなく「大間のマグロ」なわけですからね。海外などの日本食レストラン等は、まだ「築地」ブランドは有りかもしれないけれど、段々と世の中は変わっていくはず。だからこそ、商品の扱いから市場内でのスキーム、あるいは新しいビジネスモデルを構築していく必要があるけれど、それは今の築地市場のままでは無理なことも明らか。そう言う意味で「豊洲」という新しい場所に移動することを、単に築地よりも広い場所へ行くと言う考えだけでいると、何も出来ないでしょうね。

反対している人の多くは、実は今現在築地での借金が大きく、更に移転した場合お金の手当が出来ない人達と重なるみたい。そう言う理由ならなんとなく反対している理由も納得できますね。勿論、それだけが反対理由じゃ無いだろうけど、でもこのまま築地に残っても今よりも売上げが劇的に回復するわけでは無いだろうし、仮に改修すると決まってもそれまでに何年も時間は掛かるだろうから、結局はじり貧になっていくだけ。何か良いように利用されているだけのように見えるのは、私の目が曇っているからだろうか。「築地」というのは、日本の魚介類流通の最大のシンボルではあるけれど、だからといってそれが無くなっても実は保管する仕組みは幾らでもあることも認識しないと、ごねてこじらせて結局損をするという結果にしかならないような気がする。

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