2015年9月18日

バルミューダの秘密

二重羽根の自然な風でブームになり、さらに最近発売したスチーム機能付きのオーブンも好調なバルミューダ。そのスタートアップの話しが興味深いです。一般に聞こえてくる話は、成功後の独創性だったりベンチャービジネスとしての話しが多いので、結構スタートの時がそんな状態だったなんて言うのは知りませんでした。勿論、誰でも一台サンプルを抱えて売り込みに行けば成功するわけでは無く、やはりそれなりの自信と製品としての完成度が無ければ、その後の受注だって生まれないだろうし。今回の記事を読んでいて思いだしたんですが、パナソニックの創設者、松下幸之助氏も似たような逸話が無かったかな。最初の二股ソケットを作る時に、やはり資金が無かったけれど売れると確信して大量生産して、それが当たったというような話しを、昔読んだ伝記に書かれていたような記憶があるんですが。今風に言えば、ビジネススキームがしっかりしていて、そこに自分としてのやる気・確信・裏付けが有るから成功すると言うことなんだろうな。

バルミューダの製品やその他一部のメーカー品は、よく「高価だけど売れる」という言われ方をするんですが、それは一寸違うのでは無いかと。"Cost per Performance"というのは、単に価格で比較するのでは無く、そこから得られる価値とか品質とか、そう言うものと比較して判断しないといけないはず。勿論、その中には例えば「技術料」とか「特許」みたいな形でフックアップが入っていて、本来の物理的コスト以上にそう言うものが占めている場合や、あるいは「ブランド価値」みたいな「プライスレス」なコストもあるわけだけど、多くの商品の場合、純粋に良い物を作ろうと部品や人件費物流費など積み上げていくと、それなりの価格になるのは仕方ない。その中で、大量生産をして在庫リスクを抱えながらコストを下げて薄利多売を狙うとか、そう言うビジネス判断が生まれるわけです。バルミューダの場合は、損益分岐点を設定して台数を最初に決めて、そこから価格設定をするからああいう値段になるわけだけど、そこにちゃんとした理由が有り、それをユーザーが理解して納得できる「ストーリー」があるかどうかなんですよね、結局は。

日本が世界に誇る商品である炊飯器だって、幾ら美味しいご飯を食べたいからと10万円近いお金を出して売れているわけです。昔なら、多分数千円くらいの鉄釜で炊いたご飯と同じ位のご飯を食べるために、今では10万円を出しても満足する人がいる。調理環境が違うという背景の差はあるけれど、でも「味」という不変の要素に対して真摯に訴求していくと、それだけのお金を出して勝ってくれる人が幾らでも居ると言うことをも肝に銘じないと。そりゃぁ、全く同じ商品が、こっちは10万円だけど、こっちは半分の5万円というのであれば勝負は目に見えているけれど、「同じ事が出来る」蹴れど、その内容に大きな差があれば、数千円の電気釜では無く頑張って数万円の炊飯器を購入しようと考えても不思議は無いはず。

勿論、安く均質で安定定期に供給して貰わないと困る商品だって一杯あるわけです。重要なのはそのバランスなわけで、でも大量生産できるメーカーはそれなりの規模が無いと無理ですから、どうしたって中小のメーカーは独自性で勝負しないと負けてしまいます。さらに、そこで一度当たる製品が生まれれば、当然そこに大企業が入ってきて、コストダウンした同等製品を出してくるのは明らか。特許で独自性を防御するとか、ブランド定着で先行者利益を獲得してさっさと次の分野に行くか、また新しい戦いがそこから生まれるわけですが、それを楽しめる経営者・エンジニアでないと、やはり生き残れませんよね。そう言うサバイバビリティみたいなものを感じる記事でした。

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