最近よく見るようになった「円安なのに輸出が伸びない」という記事。一時期、US$1=75円位まで上がっていた対ドル為替相場も、現在ではUS$1=102円前後と、円高時に比べると25%も円安になっているので、当然それだけの効果も期待したいのが人情。ただ、経済に関しては素人ながらも、素人なりに「世の中そんなに単純じゃ無いだろう」という事は分かります。
一つは、元々デフレの影響で物の価格がずっと変わらないor下がっていた状況は、円高の恩恵を受けた海外から素材・製品輸入に助けられていた物。円高に関しては、メリット・デメリット双方あるはずで、食料とか製品輸入に大きく依存している日本の経済に関しては、円高はメリットだったわけです。それを前提に国内製品の価格もずっと据え置きとか下落していたのが、相対的に一気に円安になったことで、それらの前提が崩れて、今は下げてしまった国内価格がじわりじわりと上げざるを得ない状況に。ただ個人的に思うのは、これまでの価格据置とか下落が異常だっただけで、そう言う意味では、円安になって物の価格が上がる、というよりは、物の価格が適正化される、と言ったほうが良いように思います。
二つ目には、10年にも及ぶ円高対策で、主要企業はどんどん海外に拠点を移していたわけで、それが円安になったからといって、直ぐに元に戻れるわけでは無いと言うこと。大体、私の子供の頃はUS$1=360円の固定相場で、それが変動相場制になってUS$1=240円になったときには「急激な円高」と悲鳴が上がったほど。社会人になって仕事を始めた頃には、200円を切るようになって、確か初めて海外出張に行った1980年代後半の旅費精算とかしたときには、US$1=180円位だったと記憶しています。1990年代には160円位かな。2000年代にはいると140~130円台だったでしょうか。2000年前半までは輸出とか好調で、それでもUS$1=130円の「円高」が問題視されていた頃に比べれば、今のUS$1=100円の「円安」なんていうのはどうなんだろうか。大体日本の輸出依存度はGDP比で10%前後、輸入依存度もそれくらいと聞きました。ほぼアメリカと同程度。それに対して、韓国はそれぞれ40%前後の比率ですし、ドイツは30%位。「世界の工場」である中国ですら、輸出依存度は25%位とのこと。単純に為替の変化分だけ日本の依存度が替わったとしても、10%が13%位になるだけだから、それ程劇的な変化が感じられないのも当たり前と思います。
三つ目には、既に海外展開している向上などの投資を回収しない限り、そこを畳んでまたどこかに移動するという選択肢は難しいわけで、それらの施設を維持したまま新たな生産拠点を日本国内に作るというのは、よほどの理由が無いと難しくなります。そうで無くても円安で輸入素材のコストがアップしているなかで日本の中で生産拠点を作るには、一つは日本の国内だけで回る素材を使うこと。もう一つは、日本のコストレートで精算しても海外で勝負できるだけの付加価値の高い製品にすること。卑近な例で言えば、日本産の果物とかお米なんかは最近海外戦略を進めて評判も良さそう。あと、日本の家電製品も人気がある商品で、そう言うものって全て国内生産しているわけでは無いけれど、日本のDNAが入っている部分が、同様製品との差別化を生んで評判を得ているわけで、そういう所を延ばすのがこれからの方向性では。輸出しなくても、海外からの旅行者がこぞって購入してくれるものというのも、「準輸出商品」と言っても良いかも。
で、そう言う大きな歯車がやっと動き出すと、国内の中書企業なんかもにも経済が回り出すわけで、止まっていた時間が長い分、なかなか動き出すモーメントも大きい気がします。でも、最近街中を歩いても感じるのは、昔に比べて人の数が増えてきていて、特にデパートとかモール等の混雑具合は以前の何倍もという雰囲気。以前から思うのが、人口減少と良いながらも、日本国内には1億3000万人近い人間が住んでいるわけで、一人1万円消費したら1兆円以上の経済が生まれるわけです。それをもっと活性化させて、利用しない手は無いと思うんですが。物の倍々だけで無く、サービス、娯楽、移動手段、まだまだ開拓できる余地は残っているんじゃ無いでしょうかね。で、必要なのは「円高」でも「円安」でも無く、常に円ベースのレートが安定していること。それに尽きると思うんですが。素人の戯れ言ですけどね。
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