今週のTV東京系「ガイアの夜明け」は、世界に進出する日本食(和食)の話だったんですが、その話題の一つが銀座の三つ星店「小十」のパリ店開店の話でした。まぁ、いろいろ苦労されて番組の最後にオープン当日の様子が放送されたんですが、そこでちょっと気になる事が。
お店のカウンターに座っていた初老のご夫婦。この日は、パリでも食通、日本通の人が招かれたとナレーションで紹介されていて、かつカウンターに案内されていたわけだから、それなりに有名な方・重鎮なんだろうと思うんだけど、その初老の男性がお刺身を食べる時に、醤油の入った小皿に切り身を付けて食べたんですが、その小皿が溶いた山葵でどろどろの状態になっていたように見えたんですね。
アメリカの日本食レストランに行くとよく見る光景だけど、多分欧州でも同様なんだろうな。日本人だと「ワサビを醤油に溶く」という感じが、欧米人は「ワサビに醤油を垂らす」という具合に、大量にワサビを醤油皿に投入して食べます。あれだけのお店だから、当然本わさびをその場でおろして使っているんだろうけど、ちょっとなんだかなという光景でした。欧米では、ステーキの付け合わせに「西洋ワサビ(ホースラディッシュ)」を使いますけど、辛みの具合が違うんですよね。だから、欧米人としては、日本の本わさびの辛み・痛点っの感じ方が鈍いんじゃ無いかと思います。だから、あれだけ大量に溶いて使うんだろうなと。でも、あれではわざわざ新鮮なカレイを探して、園でも満足できなかったから禁じ手のキャビアをちょっと乗せたお刺身も、そんなことは関係ないんだろうなぁ。
「本わさび」の美味さは、「辛み」とか「刺激」というよりは、口に入れた時に鼻に抜けていく「爽快感」と、その後に僅かに残る「甘み」のバランスだと思うんですよね。だから、お刺身とかに付けて食べる場合でも、辛みで味にアクセントを付けるんじゃ無くて、切り身の匂いを爽快な方向に少し振らせてあげる役目なんだと思います。言ってみれば、揚げ物を食べる時にレモンを振りかけて、さらに芥子を付けて食べるけれど、本わさびの役目は「レモン」の方であって「芥子」じゃ無い、と個人的には思うわけです。
この番組では、和食の国際化の話の一つとして、日本の金印ワサビの欧州での拡販の様子も伝えていたけれど、今の粉ワサビの置き換えという形で進むのは無理だと思います。既にコスト的に太刀打ちできないと言う事と、あの味が「WASABI」の味として定着しているから。だから、ワサビはワサビなんだけど、今のお刺身の友のような立場とは別の「食材」としての売り込みの方が良いと思いますね。番組の中でも、ワサビとチーズを混ぜたムースみたいなものを作ってパンに塗ってデモンストレーションしていたけれど、ああいうアイデアはとっても良いと思います。そうやって、ワサビ本来の「味」がある程度理解されると、お刺身の食べ方とか、お蕎麦に溶いて入れる理由とか、そう言う日本的な味覚も理解されていくじゃ無いかと感じた番組でした。
TPPも含めて、日本料理って競争力や魅力は十分あるし、それを実現する料理人の技術も十分あるわけだから、もっと積極的に世界に進出していって良いと思います。醤油、ミソ、等はもうメジャーだけど、日本のソースとかマヨネーズとか、十分競争力ある商品ですよね。凄くチャンスだと思う。
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