2025年4月3日

Digital Forensics

フジテレビの調査報告会見の席で「デジタルフォレンジック(Digital Forensics)」という言葉が出てきました、恥ずかしながら今回この言葉を聞くまで知りませんでした。広い意味で言えば「データ復元」なんでしょうけれど、法律に基づく科学的な調査・技術と言う、より専門的な用語らしい。昔の刑事ドラマだと、例えば指紋採集のために色々な技術が利用されたりする「科学的捜査」のデジタル版と思えば良いのかな。通話記録などはこれまでも参照されていたけれど、最近主流のメッセージアプリの履歴や内容等も、データの残滓を集めて再構成して再生しているみたいで、一昔前と比べてこの手の再現技術も進んでいるし、なんと言っても膨大なリソース消費にも耐えられるシステム(ハードウェア)も登場してきたことも大きいでしょうね。

とは言っても、こちらの記事によれば約23万件のデータを調査して、1950件の削除されたデータを再現。そこから対しようとなる発言なり書込を抽出するという大変な作業。データの復元自体は、ある意味ソフトによる力業なので、システムリソースがあればある程度自動的に処理出来るけれど、そこで招集された膨大なデータをどの様に評価するかが一番大変でしょうね。今回は、11万7千件余りをレビューして、そこから調査に必要と思われるデータを抽出して調査したらしい。実際の復元作業は外部の専門業者が担当したらしいけれど、抽出されたデータの評価は今回の調査チームが担当しただろうから、よく短期間でこれだの内容を評価出来たと思います。

私もこの辺りの技術の端っこにいるので、どの様にしたら「削除された(と見える)データ」を復元できるのかは知識としては理解しているけれど、その作業を錯乱させるような手段もあるので、その気になれば復元されても無意味なデータ、解読不能なデータにする事も出来ます。只、その「改変を加えた」事は分かるから、その挙動不審な行動に疑惑が逆に集中するでしょうね。さらに言えば、今のデジタルデータは通信するこちらと相手のスマホにだけデータが残るわけでは無く、途中経由するメール/メッセージサーバーにもデータは残るし、場合によっては途中に存在しているかもしれないキャッシュサーバーも可能性はあるでしょう。データ本体が残っていなくても、通信履歴という別の属性データから、通信の事実があるのにその部分の通信本体が無ければ、少なくとも意図的に「削除された」という事も変わるから、そこから疑念も出てくる。また、当該メール自体は削除されても、例えば引用の形で別のスレッドに残っている可能性だってあるだろうし。昔の手紙による通信ならば、その原本を処分したら終わりだけれど、今のデジタルコミュニケーション時代では、ありとあらゆる所にデータの断片が偏在していることを理解していないと、安易に手元のデータを削除して終わりと貼らないんですよね。 

例えば、これが最初から犯罪を意図して通信をするのであれば、もっと秘匿性の高い手段を利用するなり、暗号(符牒)を利用してそのままでは意味不明な文章を使用するなり、別の方法を利用したと思います。それが一般的なLINEだったりTeamsみたいなビジネスツールでのやり取りが調査対象となったと言う事は、フジテレビ内部の関係者も含めて今回の件の認識が甘かった、あるいは中居氏の行為に対しての危機感が薄かったか無かったと言う証拠にもなると思います。となると、今回の明らかになってこれらデータを使用して起訴とかしたらどうなるんだろうか。フジテレビは関係者の処分も考えているという発言もあったと思いますが、更に色々な暗部があぶり出されてくる可能性も大きいでしょうね。それとともに、やはりこれがフジテレビ単体での認識なのか、業界全体、さらにはそこに関係するスポンサー企業等も含めた「メディア」という特異な空間の特異な習性なのか、更に評価する必要も有るように感じます。

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