2024年7月8日

策に溺れる

東京都知事選挙は、下馬評通り小池現知事が大差で勝利して、三期目に突入することに。有力な対抗馬とみられていた、蓮舫候補は、選挙期間中の盛り上がりとは裏腹に、予想以上の大差で敗れることになったわけですが、あれは戦略を取り違えて戦術的にも失敗した典型例じゃ無いかと言う気がします。 一方で、広島県の安芸高田市長だった石丸候補が、若い世代や無党派層の票を大きく取り込み、蓮舫氏を上まわる得票数で次点に。小池都政に対して不満を感じている有権者の受け皿になったのは、やはり話題作りの巧妙さと、あと若い世代がちょっと胡散臭い有名人にハマるのと同じような事で石丸氏に投票したんじゃないだろうか。まぁ、いずれにしても当選した小池氏は予定通りだし、石丸氏にしても元々東京都知事選挙は知名度を上げるための通過点で、本命はこの先の衆議院選挙なり参議院選挙だろうから、今回の実績で立憲民主党当たりが取り込みを考えるのでは。で、蓮舫氏は良ければ当選、悪くても善戦をして終わり、「やはり蓮舫には国政に戻ってもらわ無いと」みたいな流れを作って、今後の衆議院・参議院の選挙を考えていたんだろうけど、その思惑も外れたんじゃないだろうか。あれだけ熱狂的に応援していた支持者というのは、結果が不満足の場合は簡単に掌を返して今度は批判者に変わりますから、暫くはかなりの逆風に晒されるのでは。

立憲民主党としては、ここ最近の補選などで自民党候補者に勝利して、勢い(モメンタム)は我にありと思ったんだろうけど、衆議院補選の三つの選挙では、直接自民党と対戦したのは一つだけで、後は不戦勝みたいなものだから決して参考になる話では無いと思うんですよね。あるいは、静岡県知事選挙では、やはり自分達が推薦した鈴木康友知事が当選したから、民意は我に有りと思ったのかもしれないけれど、あれも政党の違いでの戦いではなく、どちらも五分五分の中、より地元の票を固めた鈴木氏が勝利したわけで、決して立憲民主党が支持された結果じゃ無いと思う。それなのに、ここ最近の選挙では自分達が支援した候補が当選しているため、民意はこちらに傾いているという戦略設定の元に、自民党の不正や疑惑を煽ればさらに無党派層の支持が得られて、そこに共産党の固定票が入ってくれば、小池候補の得票に肉薄して逆転できるという読みだったんでしょうね。だから今回の最大の失策は、都知事選挙に国政の話を持ち込んで代理戦争みたいな形にしたことだと思う。自民党が積極的に小池支持を表に出して居たならば、それも多少は効果的だったかもしれないけれど、あれだけ裏方に徹して表に出てこない相手に対して、自分達だけが盛り上がっている光景は、外から見ると異様にしか感じられないし、そもそも都の責任者の選挙になんで国政の話が関わるのか、普通はそこは分けて考えるでしょう。だいたい東京都自体が、一つの国くらいの予算規模や人口を保有している存在何だから、意識としても国と同等くらいの物を持っているのでは。いろいろ問題は有っても、失敗もそんなに感じられない現職に対して、そこでそれなりに満足している都民に対して訴求するべきは、意識高い系(と見える)の問題提起ではなく、やはり日々の生活なり社会整備なりという、生活に直結した課題でかつ相当魅力的な提案が無ければ、あえて知事を変えようとは思わないと思う。それに、過激な反小池闘争みたいな選挙戦をしていては、別に小池氏に興味が無い有権者にしても、「あぁ、やっぱりこの人は攻撃的な性格なんだ」と、票は逃げるばかりだったんじゃ無いだろうか。

その逃げた票の多くが流れたのが、多分石丸候補の所だと思うんですよね。彼がこの結果となった理由は二つ有ると思っていて、一つはいち早く立候補を表明して話題性を確保し、かつ有望候補者として露出機会の少ない椅子の一つを確保したこと。これによって、選挙期間中の様々な対談やニュース等で取り上げて貰え、露出度が一気に増えたことは大きかったと思う。もう一つは、何故かネットで若い世代に受ける「本質的な事は何も言っていないけれど、何か凄いことを言っている・やっている風に感じる有名な人」という見栄えを駆使して、それが若い世代や無党派層にハマったこと。差し障りがあるだろうから実名は上げないけれど(笑)、あの人とかあの人とか何かそれっぽいことを言って権威とか識者みたいに言われている人達同様、その情報や知識には誤認があったり公平性や正統性に欠けている発言だったりするけれど、そういう内容ではなく伝える姿勢というか様子が「かっこいい」みたいな形で若い世代に受けてしまう。「情弱(情報弱者)」と言ってしまうのは簡単だけれど、ある意味知ってはいても電話詐欺に引っかかるような感じなんでしょうね。実際彼が辞職した安芸高田市の市長選挙では、石丸氏を批判する候補者が当選して「石丸市政」は否定されたらしい。いろいろと公開されている市長時代の動画なんかを観ると、何か既視感が感じられて何かなと考えてみたら、これって立憲民主党の小西議員とか杉尾議員あるいはそういう人達が官僚を呼びつけて恫喝したり、国会で質問という名のイチャモン付けをしている様子にそっくりな気がする。言ってみれば「一人立憲民主党」みたいなポジションが、今回確立したんじゃ無いだろうか。選挙後の会見では、岸田首相の選挙区に出ることを臭わせた様だけれど、それだって実は当選するよりはより話題になることで別の利益を獲得する意図があるように感じられる。だって広島で市長を経験していたならば、岸田氏の地元の強さは良く知っているだろうし、本当に当選を狙うのであれば、この人気を利用出来るもっと別の場所、つまり都内あるいは関東の選挙区を狙うのが本来の作戦じゃ無いかと思うんですよね。あの会見で「今回2位の得票を頂いた声を無駄にしない形で、次を狙いたい」とでも言えば、かなり印象というか期待感というか、違ったと思うんだけれど。

立憲民主党は、この都知事選で国政を絡めた運動をしていた訳ですが、落とし所の2位どころか突然立候補した新人にも負けて3位という結果に。ある意味彼らの主張が否定されて国政に対しての批判も否定されたとも言えるのだけれど、まぁ都合の悪いことは認めないでしょうね。大体「上げ潮」と記事には書かれているけれど、毎回公開される政党支持率を見ても、何だかんだ言われても自民党が20%以上を確保しているのに対して、立憲民主党は一桁台を行ったり来たり。あの旧民主党政権交代の時は、自民・民主が20%台で民主がリードしていたわけで、それを考えると「政権交代」どころか「上げ潮」と言っていいのか凄く疑問。都知事選の蓮舫候補の主張と同じで、自分達で奪い取れないから相手に対して「交代してください」お願いする姿勢というのは、自分達でも自力で政権を奪い取れないと認識しているからの発言だと思う。勿論自民党としても、今回の選挙は表に出なかった分彼ら的には「的に塩を送らなかった」という程度の利益でしか無く、それでも蓮舫氏が3位になったとは言え、それで自民党の支持率が上がるわけじゃ無い。衆議院選挙をするにしても、やはり内閣支持率として40%台くらいに戻さないと恐くて出来ないだろうし、そう言う意味では都知事選は都知事選であり政権与党としてはまだまだ厳しい状況が続くんでしょうね。個人的には、岸田総理はそんなに失敗もしていないと思うけれど、如何せん安倍氏という重し役が居なくなってしまい、党内に落ち着きが無くなっていることが最大の問題点。都知事選挙のように、変に策に溺れて失敗するよりは、目立たないけれど必要な事を粛々と進めてくれるリーダーの方が望ましいのだけれど、目立たない故に人気は無いし評価もされない。それが岸田氏のジレンマだろうし、それに対して宣伝上手な小池氏が今回は勝ったと言う事なんでしょうね。

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