ここの所「ファクトチェック」という言葉をよく聞くようになったんですが、それに伴って新しい言葉「プレバンキング(Pre-bunking)」なる言葉も。タイミング良く、Nathan氏がこの話題を取り上げられていて、何となく全容を理解することが出来た気がします。実害の無い架空の例を使用して、誤情報がどの様に伝搬・作用するか体験することで、実際に生まれる虚偽の情報に対しての耐性が出るというか事前準備する事が出来る、という話らしい。
製品開発の場だと、その製品の模型というか「モックアップ(Mook-up)」と呼ばれる「模型」を作って、デザインだとか操作性だとか、実際に製品製造が始まる前に出来るだけそれに近い形で体験して、問題点の洗い出しや改良点を見つけるために利用します。そんな感じなのかなというのが自分的感想。ただモックアップの場合は、製品に近いものを作って製品に対しての経験値を蓄積しますが、プレバンキングでは予想される「偽情報」そのものでは無く「偽情報というフォーマット」を事前に体験することで、特定の内容やパターンに頼らない、ある意味「偽情報の属性とかプロパティみたいなより広い範囲での認知力」みたいなものを養うところが大きな違いか。受験勉強で言えば、特定の式の計算方法を丸暗記して答えを記憶するのでは無く、公式を覚えて計算方法を理解することで、その公式を使用した個別の問題を解くことが出来るようなる事の方が近い考え方ですよね。
もっと言えば、ネット時代になってよく言われる「経験知」「集合知」にも近い気がする。過去の事例を何度も経験・情報蓄積することで、全体のパターンを知ると言う事にも近い気がします。そう言うものって、時間も手間も掛かるから、自分がよく接触する事例だとか得意分野であれば直ぐに効果が期待出来るけれど、そうで無い分野に関しては逆に情報量不足で誤解を招く事態になる可能性もあるでしょうね。だからと言って、じゃあ怪しげな情報に接してそう言うものに対しての耐性を作れば良いかと言えば、たとえ話で「ミイラ取りがミイラになる」じゃないけれど、怪しげな話を論破しようと聞いていたらその話に取り込まれたとか、「自分は絶対オレオレ詐欺には引っかからない」と豪語している人ほど実際には引っかかったりするような事もありますから。「悪例を学ぶ」分けだから、学びの材料として「整理されて理解しやすい事例」をちゃんと用意しないと、プレバンキングとしての効果も期待出来ないでしょうね。
記事の中で、「プレバンキングは予防接種、ファクトチェックは発症後の治療」みたいな説明があり、実は「プレバンキング」に対応する言葉(行為)として「デバンキング(Debunking)」と言う言葉があり「ファクトチェック」「デバンキング」の一種とも言えるとのこと。パイロットは、フライト前に「Pre-briefing」があり、フライト後には「De-briefing」が有るけれど、それと同じ事を情報収集・情報取得の場でも必要と言う事なんだろうな。これまでは、「情報」は単に獲得するものという意識が殆どだったけれど、「獲得する事」が目的では無く、「如何に効率良く正確な情報を獲得するか」という、「質」の部分が意識されてきたと言えるのでは。電子回路では、想定外のノイズ対策でフィルターを入れたり、安定した動作のために信号品質を高くしたりする努力をするし、誤り補正を使用して多少のノイズが含まれた情報でもその正誤の判定や自動訂正する工夫がありますが、そういう機能を自然に身につけるのが、この「プレバンキング」であり、「デバンキング」とペアで繰り返して経験することで、より洗練されていくのだと言えるんでしょう。でも、それって見方を変えたら、毎日twitterやネットに張り付いていろといわれているような気もするなぁ(笑)。
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