2022年1月27日

知識と教養と技能と

佐々木俊尚氏のvoicyから「教養は「受験勉強方式」では身につかない。楽しめることが大切」というお話。色々な書籍を読んで多くの知識を蓄積するだけでは「教養」とは言えないし、有名人の書籍、有名なタイトル、歴史的な書物だからと言って、読んだだけで教養が身につくわけでは無いと言う話。重要なのは、自分にとって「面白い物」を見つけて、継続していくことが重要と話されています。

個人的にこの話を聞いて思うのは、教養のある人はInput/Outputが多いみたいな話の中で、特にInputが多い=多読である、みたいな認識が一般にあるけれど、それって一寸違うんじゃ無いかという事。確かに出来る人は多くの情報を持っているとは思うけれど、常にそのInputされた内容を「Blash-up=情報の整理と検証と更新」、つまり小さな細かなOutputを常にすることで、外には出ないOutputもしているから、それが単なる知識の積み重ねでは無く、何かの時には直ぐに応用出来るような「教養」に変わっていっているんじゃ無いだろうか。実際自分の仕事の場でも、開発途中の製品で何か問題発生した場合、単純に原因を追及してその部分を解決するだけだと、その場では解決しても将来別の問題が発生したりすることは良くあります。ここで、少なくとも知識の蓄積があれば、例えば過去の類似症状を思いだして、素早く対策するという行為が可能になりますが、それが「教養」にまで高められていれば、その過去の類似症状の範囲も広がるし、過去の場合とは条件が異なるから、実は同じように見えても別の要因が存在しているのでは無いか、と言う判断も出来たりします。一般的には「場数」という経験知が大きいと思うけれど、道具と同じで幾ら便利な道具(=知識)を所有していても、その効果的な使い方とか組合せ方、あるいは応用出来る機能とかを知っていて、さらにそう言う機能を使用(=活用)する事が出来る「技能」まで体得出来ていれば、そう言う人を「名人」とか「達人」とか呼ばれる存在になるんじゃないだろうか。

「技能」と書いたけれど、実は日本語の「技能」よりも英語の"Skill"の方が、個人的にはよりしっくりする気がします。知識だけじゃ無い、経験だけでも無い、技術力だけでも無い、それら全てを合わせてさらに「プラスα」みたいなものを掛け合わせたような能力が"Skiill"という言葉にはあるような気がしています。だから「技能」と言ってしまうと、どうしても技術的な能力や手先の器用さみたいなものが中心に感じられるけれど、実は出来る人は工程管理能力だったり、将来の問題想定だったりそれに対しての対応能力だったり、さらには費用対策とか、そう言う非技術的な能力も重要なわけです。そう言うものって、どうやったら身につくのか。自分なりに色々な人と仕事をして、日本人以外にもアメリカ人、欧州、中国・韓国、東南アジア、オーストラリア、等等、アフリカや南米の一部以外の地域の人達と30年以上仕事をしてきて感じるのは、やっぱり出来る人はInputすることに躊躇しないし、何かInputされると直ぐにそれを色々自分の中で加工して、自分の中で色々なOutputを作るような事をして、Inputされた情報をそのままの形で保持することはしないように感じます。だから一つの事に対して、さまざまな視点や意見を出すことが出来るし、それに対しての対策や解決策も千差万別。それだからこそ、より理想的な回答がそう言う人からは出てくるんだなぁと思います。で、そう言う事が出来る人というのは、それもまたそう言うSkillを持っているからだと思っていたんですが、今回の佐々木氏のvoicyを聞いて思ったのは、結局そういう細かな小刻みなInput/Outpuを繰り返すことが出来る人は、それが「楽しいから続く」んだろうと言う事。

あくまで想像ですが、多分そう言うSkillを持っている人達に取ってはパズルやクイズを解くような「楽しさ」みたいなものが生まれているんじゃ無いだろうか。「知的好奇心が刺激される」だけでなく、難しい状況を解決したときの「達成感」とか、あるいは新しい知見を見つけることの快感みたいなものもあるかもしれない。コーディングなんかをしていると、新しいロジックを思いついたときとかが近いかもしれない。理系的だからというわけではなく、例えば歴史物に関して言えば、さまざまな資料を比較してこれまで見えなかった共通点が分かるとか、逆に新しい矛盾が生まれて余計に疑問が深まるとか、そう言う事って学問以外でも生活の中にも大小は別にして毎日生まれてくるもの。そこに、何か疑問というか、切っ掛けを見つけられるか、そのまま素通りして記憶にも残らないで消えていくか、それが知識と教養の分岐点であり、それを積み重ねて、新しい知見を見つけられることが「技能=Skill」なんじゃ無いかと改めて感じます。とは言っても、やはりInputは多い方が良いし、でも出来るだけ良質なInputを入手して効率を上げることも大切だし、それが情報リテラシーなんだなと再認識しました。

0 件のコメント:

コメントを投稿