2021年6月30日

フォグコンピューティング

佐々木俊尚氏のnoteから『「フォグ化するミニマリスト」という新しいライフスタイルを考える』という話。コンピューティング技術の流れで言えば、決して不思議な事では無く、「エッジ→クラウド→フォグ」と言う流れも、私的持論で言えば「輪廻しているだけ」と思っています。

「輪廻」というとちょっとオカルトっぽいけれど「回帰」と言う方が適切なのかな。ホストコンピューターが実用化され始めた初期の頃は、カードデックをコンピューター室に持ち込んで計算処理の結果を持ち帰る、あるいみ自分でコンビューターを使う「エッジ的」な形。それがTSS (Time Sharing System)が利用可能となると「クラウド」的に一つのリソースを共有するようになり、さらにそれでは自分の使いたいときに利用出来ない不便さを補うために、ミニコンピューターが登場して部門レベルとか研究室レベルで利用できるようになったのが「フォグ」的な感じでしょうか。パソコン時代になっても、個々にクライアント機を持つ形から、サーバーを利用する様になり、そのサーバーもさらに分散化して「クライアント/サーバー(C/S)」という方式で利用されるようになってきているのが、「エッジ→クラウド→フォグ」の次の流れだったと言えるのでは。それらは、当初は自社のネットワークやドメイン内での変化だったものが、モバイルPCが誕生すると接続するネットワークもIntranetからInternetになり「エッジ」の形態も少し変化すると、今で言うところの「クラウド」をどこからでも利用出来る状態になり、さらには複数のクライアントでのデータ共有とか、異なるデバイスでのデータ共有は「フォグ」化した一つの形態とも言えるのでは。

現在の情報端末は一人一台位にスマホが主流ですが、これはある意味エッジコンピューティングと言えると思います。スマホが「携帯」だった頃は、その端末の中で電話や写メや音楽再生が完結していたのですが、スマホ時代になるとi-modeではなく、普通に「インターネットにアクセス」して様々サービス提供を受けることが標準となる、これは「クラウド」化と言っても良いのでは。じゃぁ、スマホの「フォグ化」は何かというと、スマホを起点にして、家庭内の家電製品の管理だったり、ホームターミナルとの連携だったり、最近では自動車との連携も可能なっているわけで、そう言う様々な場所での利用が可能になってきていることが一つの「フォグ化」と言えるような気がしています。さらに自分の場合は、スマホ2台を持ち歩いているけれど、そのデータ共有もあるし、アプリなどの同期も必要。それぞれのデータバックアップも自宅のパソコンに入れているけれど、それは場合によってはクラウド上にも保存されて、必要ならクラウドからスマホへの復元も可能になっています。ちょっと以前なら「クラウド」で片付けられていた状況は、どんどん広く薄く展開されてきていて、やはり「クラウド」から「フォグ」へ移行していると言って良いんじゃ無いかと。

じゃぁ、フォグ化から次のエッジ化は何なのかと論じれば(=こじつければ)、「仮想化」で実現されテイクのでは無いかと思うんですよね。例えばiPhoneや最近のAndroidは、今の仕様状態をバックアップしておけば、機種変更などをして新しい端末を購入しても以前の状態が(ほぼ)再現できます。それがさらに進んで、手元の端末・デバイスは、単にネット上にある「仮想スマホ・仮想端末」の物理世界とのI/Fでしか無く、自分のデータや機能は全て自分の仮想マシン上に実現されている。その自分の仮想マシンが、クラウドのサービスを利用する場合もあるし、フォグ化されたサービスにアクセスして行くこともあるでしょう。究極的には、そう言う世界中のサービスが仮想世界で統合された仮想マシンの中の、人間の五感に感じられる部分のみのI/Fを携帯端末が賄うような感じ。昔のホストコンピューターの端末みたいな超軽量の端末が今後はトレンドになるかも。ただし、その前提には超高速で超低遅延のネットワークが必須になるわけです。でも、幾ら超高速であっても、現時点では光速を越えることは出来ない訳で、となると地球の反対側に存在しているサービスを利用するような場合には、どうしてもそれなりのタイムラグが発生してしまう。キャッシュしておく等今の技術でもそれなりに解決策はあるけれど、それをもっと洗練させて、例えば周りにあるスマホでデジタルデバイスの空きリソースを常に「Ready for Virtualization」みたいな状態にしておき、必要な場合にはマスターデバイス(例えば自分のスマホ)が、回りの仮想デバイスリソースを集約して自分の仮想リソースとしてダイナミックに利用できるようにすることで、身の回りでのデータ処理や短時間のデータ保管等を行う。最終的には、それら身近なデータは順次マスターのサーバーへ転送されてから、その個々の仮想でバスリソースは解放される。身近な場所にあるということで、「フォグ化」よりも更に身の回りに密接した「ミスト化コンピューティング」なんていうのが、ある意味究極の情報環境じゃ無いかと思うわけです。30数年前の入社面接で、当時の面接官(営業所の所長クラスと課長クラス)に自分のやりたい仕事を聞かれて、「コンピューターをネットワークで繋いで、どこからでも利用出来るようにする」と答えて、当時はまだホストコンピューターの世界だったから「それはどう言う意味か」と聞かれて逆に面食らったんですが(笑)、今の時代ネットワークに接続している事は常識で、逆にそれを感じさせずにどれだけ身の回りに「潜んで待機するか」みたいな一歩先の世界が生まれつつある事に、ちょっと感慨深いものを感じています。

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