少し前にPRESIDENT Onlineに掲載された、東京五輪の水泳プレ大会に関しての記事。 この大会では、記事にも書かれている中学生の玉井陸斗選手が五輪への切符を最後の飛び込み試技で獲得したことが大きな話題になったことが一番記憶に残っているんですが、こう言う運営の不味さは、当時自分が見聞きした範囲では聞いたことが無い。多分、この記事に書かれているような色々な不備や問題があれば、日本のメディアもどこか一つくらい取り上げたと思うんですが、実はこの記事を読むまではそんなことがあったのか全く知りませんでした。見出しでは「欧州選手団が怒った」とか「怒りの声が上がった」と書かれているけれど、そうなの? という印象。
で、昨日見つけたのがこちらのFacebookの記事で、内容的には先の記事とはほぼ真逆の内容。そこで、件の記事筆者のプロフィールを見てみたら「さかい もとみ」という方で、どうも英国在住のジャーナリスト氏らしい。今回の記事も、彼のFacebook等の書込等を見ていると、東京はおろか日本に来ているわけではなく、英国で某かの情報を集めて先の記事を作成したと思われます。となると、選手団のコメントとかその内情とか、どうやって調べたんだろうか。記事の中では何枚か写真が掲載されていて、それは欧州チームの役員やコーチから提供されたものらしいので、参加したチーム関係者に某かのインタビューをしたことは確かなんだろうけど、そこで気になるのがそれで十分な取材活動が出来たのかという事。例えば、空港での対応の悪さを欧州から来たチーム関係者のコメントとして書いていて、その後でドイツチームコーチのコメントを上げているけれど、それって実は自分の取材ではなく日刊スポーツに掲載された記事なんですよね。しかも、その記事では「バブル」と呼ばれるチーム関係者と一般の人を隔離して移動・宿泊するシステムを「完璧」と賞賛している。その後、元の日刊スポーツの記事では確かにドイツ人コーチのコメントとして、規制が厳しい、新鮮な空気を吸いたい、と書かれているけれど、自由に歩く機会が無かったという事は書かれていない。コーチの肩書きも違うし、これは自分で取材したという事なんだろうか。ただ、日刊スポーツの記事では、色々制限は有るものの、現在の状況下で1年半振りに大会が開催される利益や、「バブル」と言う新しい対応が今はベストと好意的な論調だと私は感じるんですが、どうも筆者は違うらしい。
両方の記事を読んでいて感じるのは、どうも先の記事は最初から否定的な内容にするべく、集めた情報や資料をその方向性で解釈、あるいはかなり歪曲して使用している気がします。筆者の過去の記事を幾つか読んでみたんですが、在住している英国関係の記事とかミャンマーの紛争に関しての記事は、まぁバランスが取れている気がする半面、幾つか書かれている東京五輪関係の記事を見ると、「反五輪」的傾向が強いように感じます。英国に在住する前は香港に15年程滞在していたということで、香港や英国に関しては経験や情報も詳しいのでしょう。東洋経済オンラインでは、結構以前から寄稿されていたようで、元々は旅行会社勤務時代にライター兼編集者に転向されたということ。当初は旅行関係の内容が多かったようですが、香港とか英国とか経済や政治的にもホットな場所だから、旅行関係以外の話題も取り上げているんでしょうね。ただ、地元情報からの文章は筆者の独自性を感じる半面、掘り下げ度合いというか内容の深化に関しては、それ以上のものを感じない気がします。
内容は違うけれど、自分達が製品開発をする途中、様々なテストを実行して色々な問題点を発見して修正して、最終的に問題の無い製品にして送り出しますが、その問題を発見するときに一番重要な事は「先入観を持たない」という事。特に問題なのは、以前経験した現象と同じだと、以前と同じ原因から発生しているとよく調べもしないで判断し、結果的にそれで一旦終息したように見えることもあるんだけれど、実は原因(root cause)は違うもので、後から大問題に発展する、というのは良くあること。だから、見た目の現象が同じものであっても、以前の解決策を適用して解決するか確認することも必要だけれど、それ以外の要因の可能性も否定せずにその確認は必ずしないといけない。大体、見た目が同じでも、問題が出ている環境・条件は違う訳なので、原因が以前と同じで変わらないというロジックも無理があるわけです。ハードウェアの特性も違うし、使用しているソフトウェアも異なるので、同じ原因から同じ問題が発生するほうが無理があるんですよね。それと同じように、今回の記事に関しても、何か自分のステレオタイプの結論があって、それに合う理由をピックアップして記事を構成した感が否めない。最も、この筆者だけでなく、最近の多くのというか殆どのメディアが、その傾向にあるからどんどん信頼感を失っているんだけれど。だからこそ、今は「メディア情報は、まず疑うことから始める」というリテラシーが必須になるんですよね。メディアへの不信感は問題だと思うけれど、仕事に関してはそう言う「習慣」は有りだと思う。
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