2016年11月14日

移民問題

トランプ氏の当選によって、これまで隠れていた、見えて居なかった、話題として避けられていた色々な問題が噴出している気がします。その中の一つ「移民問題」。アメリカ自体が英国からの移民(宗教的迫害者と言って良いのかな)で生まれた国であるし、実際「人種のるつぼ」として色々な人種の人が生活している事はよく知られています。その中で問題となっているのが、所謂「不法移民」と言われている、主にメキシコとの国境から流入してくる南米からの移民。私が子供の頃のアメリカの人口って、確か2億人位で日本の倍位という理解だったのが、最近では3億人を超えようとしている理由の一つには、この移民による増加も大きいはず。

アメリカの不思議なところは、そう言う不法移民であっても国内で生活して市民権を得て「アメリカ国民」として生活できてしまう事。勿論、過酷な労働条件もあるし、色々な差別もあるだろうけど、その中でも成功してのし上がっていく人も多いわけで、その当たり文字通り「アメリカンドリーム」がまだ生きている世界。国交回復前のキューバからもアメリカに亡命してMLBに入ったりする選手も数多く、そう言う意味では不思議な国です。

私が始めて「移民」なるものを意識したのは、やはり始めて海外出張でアメリカに行き、向こうのオフィスで夕方残業をしていた時、オフィスの掃除のおばさん達が大きなゴミ入れのポリバケツ(ドラム缶よりも大きな、そこに車がついたもの)を引っ張りながら、机の横のゴミ箱の中身を回収していくんですが、彼女たちの言葉が分からない。後で聞いたら、どうもボリビアとかあの辺りから不法移民で入ってきたりした人達が安い労働力として働いているらしいけれど、同じような光景はその後あちこちで見るようになります。日本でも、中国とか東南味からの研修生を農業実習や技術実習生として招き、その労働環境が劣悪だったり、給与が十分でないと問題になるけれど、多分それ以上の劣悪な環境・条件の中、彼らは何とかして入ったアメリカで、少しでも良い生活条件を得るために仕事をしているんですよね。そうやって、不法移民として密入国して生活基盤を築いた人以外にも合法移民としてやはりアメリカに入りより良い生活条件を得ている人も多くいます。今回のトランプ氏は不法移民対策を声高に主張したけれど、実はそう言う合法移民や既に成功している元不法移民の人達もその考えには賛成して、自分達の生活条件が損なわれる事を嫌った事は既に選挙後に明らかにされているとおり。

この移民問題がややこしいのは、そういう流入してきた労働力が元々のアメリカの労働者の職場を奪う事にもなるため、白人系の低所得者層の生活が直撃されている事。そう言う層の人達も、トランプ氏支持に回ったと言われているけれど、単に移民賛成・反対だけでは片付けられない複雑な構造が横たわっている事を実感します。日本では、日本人としての純潔性を理由に移民問題が語られる事が多いけれど、そんな事は二の次三の次では無いかと思いますね。日本の産業構造、あるいは社会構造やシステムに関して、どの様な影響があるのか、もっとちゃんと考えた上で話をする必要があるのでは。個人的には、どんどんグローバル化しボーダーレスになっている今の世界の状況を考えると、色々な場所からいろいろな人が日本に来て定住して、日本の社会や生活が刺激を受けて活性化される事はとても良い事だと思う半面、そう言う場所には必ず良からぬ事を考える人、漁夫の利を得ようとする人も集まるもので、そういう部分は防御すべき。アメリカのようにする必要は無いし、良いところは採用し、一番の大多数を占める「日本人」の気持ちとして、どの様な人なら受け入れられるのか、どの様な人となら長く隣人としてつきあえるのか、そういうところをちゃんと考えるべきで、何でもかんでも「平等、公平、無差別」というだけが正解じゃ無いと思う。そう言う意味で、今回のトランプ氏の当選は、いろいろ隠れていた問題や考えを再考する良い機会になるんじゃ無いかと個人的には感じています。

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