長い時間擦った揉んだしたけれど、やっとTPP参加表明がされて、これから関係国特に米国との貿易折衝の戦いが始まるわけですね。試算に寄れば、最悪の条件を想定すると、農業関係が3兆円マイナスになるもの、他の用件がプラスになって、足し引き3兆円のプラスになるという予想。正直「そんなものなの」という気がしないでも無いけれど、最悪のケースでの試算ですからね。
世の中、どの世界・どの場合でも、全てがプラスになるというものは無いわけで、どこかがプラスになれば必ず別のどこかがマイナスなるもの。仮にそれが世界的規模になって、日本だけがプラスになれば、世界のどこかがマイナスになるわけで、そうなれば当然日本への風当たりだって強くなる。自分達の世代だと「エコノミックアニマル」と言われた記憶も、まだ残っています。結局のところ、どこを諦めてどこを守るかという、Offense/Defenseの話なんですよね。
よく「国内の空洞化を防げ」と言うことで、国内産業へ補助金とか優遇政策で「守る」事をしようとするけれど、結局それってその為の資金を稼いでくれる別の業界・産業が有るから成り立つことで、それが無くなってしまえば、守ることなんかも出来なくなります。国民年金とか国民保険何かも、それに近い状況になりつつありますよね。さらに、時代の流れと共にその攻守の役割も変わっていくわけで、例えば半世紀前なんかだと繊維産業って日本の中でも一大産業だったと思うけれど、今は中国産がほとんど。でも、それで国内の繊維産業が無くなかったかというと、縮小はしたけれどいろいろな分野で世界的に評価の高い製品は残っているし、繊維産業の延長にあるUNIQLOなんか、いまや日本を代表する世界企業になりつつあるわけだし。
TPPで一番問題になりそうな農業に関して言えば、まずは誰のための利益なのかを考える必要が有りますよね。今JAが言っている反対理由を聞くと、どうしても自分達を守るためだけの反対論にしか聞こえず、そう言う意味で彼らに同情する気持ちには慣れません。だって、それを食べるのは我々なわけだから。一方で、そう言う農業の世界でもTPPで世界に出て戦えることを良しとする人も多いわけです。お米だって、海外の安いお米が入ってくると戦々恐々とする人も居れば、日本の高品質のお米を今よりも安く海外に出せると喜ぶ人も多いわけです。どの産業でもそうだと思うんですが、大きく二つのセグメントがあると思うんですよね。生産量はそれほど多くないけれど、高付加価値で高利益率が期待出来るハイエンドの商品と、利益率は低いけれど個数や量的には多く出て行くボリュームゾーンの商品。問題となるのは、このボリュームゾーンの商品何ですが、解決策は2つあると思います。
1つは、スケールメリットを取り込むこと。日本の農業の場合、どうしても個人農家が多くて小規模での生産システムになっています。これを兎に角まとめて大規模化することが第一。で、もう一つの問題である後継者問題だって、ちゃんと組織として利益が出る形になれば次ぐ人も出るだろうし、かりに跡継ぎが居なくて放棄するような場合でも、それを大規模組織が継承して必要なら利益を還元するようなことをすれば、生産効率だって上がるだろうし。ハイエンドの農作物だけを作れば良いというわけでは無く、どうしたって日々の生活に必要なボリュームゾーンの作物、例えば野菜とか米とかだってある程度作らないといけない。その為にも、本当ならJA当たりが耕作地や耕作人の最適化を全国的規模で本当はやって、より効率的なヘルシーな組織体にしなきゃいけないはず。これはTPPとか外的要因以前の話ですよね、組織体として。
もう一つは、今の自動車やその他工業がやっているように、海外での日本農業活動を展開しやすくなるから、そういう部分を利用して付加価値の高い商品を作る事。一番典型的なのは、季節が逆転している南半球の地域で、日本では旬で無い時期に反対側では旬となる作物を育てて日本に入れること。その為には、JAというか農家が会社組織になって、全体として海外の利益が日本にちゃんと環流する事を考えないといけないけれど。確か、そばをオーストラリアで生産して、日本に盛ってきて、季節を問わずに旬の味が楽しめると言うのも、立派な付加価値だと思うし、そういう農業ビジネスのやり方だってあると思います。
勿論、産業によってはいろいろな条件があるだろうし、1つで全て解決出来ないことは事実何だけど、少なくとも自分が30年近く仕事をやって来て実感していることは、「変化に対応出来ない組織・仕事・会社は消える」ことと「お客様(エンドユーザー)が欲しているもの以外は売れない」こと。農家自身が厳しい状況にあることはよく分かるけれど、でもその苦境から脱して自らが豊かになるためには、まずはエンドユーザーである一般消費者のが必要としているものは何かを最初に考えて理解し、その為には何を返れば良いのか、それを考えないと、相手にされないでしょうね。そう言う意味での、JAに対する不信感、と言えるのかも。
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