2011年7月15日

システムを作る

福島原発事故対策で、重要なシステムの一つである汚染水浄化システム。複数の国内外メーカーのコンポーネントをつなぎ合わせて作っているので、当初はなかなかスムースに稼働しませんでしたが、やっとそれなりのレベルで最近は機能している様子。それでも、まだパイプが破損したりとか、接続部分で汚水漏れが発生したりと、どうしてもつぎはぎで構築しているのでトラブルが100%無くなることは無さそう。そう言う部分を非難する意見も聞くけれど、すでにできあがっているシステムパッケージを使うのと異なり、急遽時間のない中で単体のコンポーネントを組み合わせて新しいシステムを作るのはとっても大変だし難しいもの。

今では、パソコンなんて小学生が簡単に組み立てられるような製品になったけれど、自分がこの仕事を始めた頃は本当に面倒な作業が沢山ありました。例えば、今ではCPUはIntel、チップセットもIntel、マザーボードも台湾メーカーから購入するし、後はHDDなりを接続すれば完成という状態ですけど、昔は各PCメーカーはCPU以外のチップは全部自分で回路を起こしていたし(IBMなんかはIntel 368SX/486SX互換CPUも作っていたなぁ)、マザーボードだって自分で回路を引いたものです。チップの中のバグで何度も作り直したり、回路設計だって実際に作ってみたらノイズが乗るとか、アースがちゃんととれないとか、配線が干渉するとか、もう何度も作り直しもの。

「バブル」とは言わないけれど、あの頃はそうやって何世代か作り直して完成度を上げていくのが普通で、それなりに予算も合ったけれど、だからといって無限にそれを繰り返すわけにも行きません。発売までのスケジュールもあるし。だから、最終完成品になっても何か問題が発生すると、"Yellow Wire" と呼ばれる黄色い被覆のジャンパー線を飛ばしたり、場合寄ってはTTLやLSIを二段重ねにして迂回用の回路を後付けしたりなんてこともやりましたねぇ。勿論、問題が洗い出されたら、ちゃんと綺麗にしたマザーボードやチップを発注して、ジャンパーが無いものを作り置き換えましたけど。

結局、すべての問題を事前に想定してそれらすべてに対して対策することが事実上不可能な限り、どうしても実際に使い出して直面する問題は存在するし、それをいかに影響を最小化して修復していくか、それがエンジニアとしてのスキルだし経験でしか蓄積されない重要な事だと思います。今回の事件も、そう言う意味では日々発生する問題に直面しながら、その解決策を見つけて修復しシステムとしての完成度を高めていくしか無いんですよね。仮に、事前にそう言うことも含めて準備しろと言われると、実際に事故をシミュレーションしてちゃんと汚染水が処理されるか、一日何百トン何千トンもの水を処理して負荷や圧力は大丈夫か、ということをやらなきゃいけないわけですが、その時はその時でそう言う事故を想定した対策を使用とすると、世間から「事故が発生することを前提にしているシステムはけしからん」みたいな事を言われるわけです。今回の原子力だけでなく、その他の大規模システムや影響の大きいシステムやプラントを作る場合、ちゃんと最悪の事態を想定して対策することを許すような文化というか雰囲気みたいなものが、これから必要だと思いますね。

0 件のコメント:

コメントを投稿