2011年5月10日

地域バックアップ

震災により発生した問題の一つに、行政機関が津波などで災害に遭い、戸籍や住民票等の市民・住民情報が喪失した事があります。幾つかの市町村では、戸籍の台帳が喪失して、何とか複製のバックアップが残っていてほぼ回復可能な目処が付いたことは不幸中の幸いだと思うけれど、こういう情報のバッアップ、さらには公共サービス等を迅速に立ち上げるために、サービスや必要なリソースのバックアップが必要だなと改めて感じました。企業活動ならば、例えば東京に本社があれば、大阪支社に本社機能のバックアップを置くとか、データセンターが関東にあれば、そのバックアップサイトを九州とか北海道に置くとか、その手の対策はそれなりの規模の会社ならやっていることですが、組織規模として結構大きくてかつ重要度の大きい自治体とか公共機関のバックアップって、実はそれ程ちゃんとしていなかった、限界があったことが今回分かったのではないかと思います。

ただ、企業情報ならばまだしも、住民の個人情報ですから、それ程簡単にバックアップを作ればよいと言うわけにも行かないと思いますけどね。今回静岡県も、東北地方の被災した自治体に応援を送ったりしているけれど、そういう相互協力体制というも今後必要でしょうね。ただ悩ましいのは、何処でいつ震災や大きな災害が発生するか分からないから、分散する地域を何処にするのか決められない事と、余りに距離が離れすぎていては物理的な支援が届かないだろうということ。静岡県の場合、日本のほぼ中央にあり、東名高速道路を初めとして東西にも南北にも移動しやすい位置にあるから、比較的提携先・協力先地域の設定はしやすいのでしょうけど、それでもそれでは北海道の何処かととか、九州の何処かととか言う話になると大変。

ここでふと思ったんですが、こういう状況にこそ「仮想日本列島」みたいな物を作って、自分の地域のバックアップをその仮想日本列島上の自分の地域にマップしてバックアップし、必要なときにはその仮想日本列島からデータをダウンロードするような仕組みって出来ないだろうか。「仮想日本列島」の実態は、全国に分散している例えば自治体のサーバー上にクラウド的に構築しておき、一部が被害にあって停止しても、その部分のデータ派別の場所のデータで復元可能にしておけばよいし。そこに、電力会社とか交通機関、さらには食料関係、飲料関係、生活必需品関係の企業データも相乗りして、今回のような震災が発生した場合には、その仮想日本列島上で物質移動シミュレーションをすれば、それが現実の物流に反映されて管理できるような仕組みってどうだろう。データが1カ所に集められることで、全体の把握も出来るし、今回のように元々のインフラが全て津波で流されてしまっても、それと同じ物が仮想世界に残っていれば、現実世界で使う端末は、iPadでもPCでもインターネットカフェのPCでも何でも良いわけだし。

それだけのデータが集まると言うことは、当然セキュリティに関しての不安も大きくなりますが、今でも同じ種類のデータを現実世界で扱っているわけだから、その仮想世界をまずは閉じた環境で構築するくらいはそれ程問題にならないような気もします。要は、行政のやる気ですよね。それに、一度そういう環境が構築されれば、過疎化している小さな自治体等は逆に通常業務をこの仮想世界で行うようにしたら負担が減るんじゃないだろうか。現実的な物理端末は過疎地域にあっても、そこから入力されたデータの処理とか保管は仮想世界でやって、実はその仮想世界の処理をしている物理世界のリソースは静岡県のある部署だったり、という感じで。被災地の様々様子がテレビや新聞で伝えられるけれど、その中でも印象的なシーンは家族やいろいろな思い出の残る写真やビデオを残そうとしていること。既に喪失した写真でも、デジタルでデータが残っていればもう一度印刷して提供するサービスなども既にスタートしているみたいですが、今後のトレンドの一つとして、どんどんデジタルデータに残してそれをクラウド環境にアーカイブしていく、ストレージサービスビジネスが伸びるような気がします。書籍の「自炊」がブームになったけれど、書籍だけでなく、例えば賞状だとか免許状、さらには3D写真やビデオで自宅の様子を記録してそれを保存してみたりということもあるかもしれない。

これまでにも、例えばSecond Lifeとか仮想現実みたいなサービスは幾つかあって、正直成功とは言えない結果を残してきているけれど、あれって現実世界とは違う事をやろうとして失敗しているわけですよね。それよりも、単純に現実世界のリアルタイム記録を残すだけ、みたいな仮想サービスなんかは、今回の震災を受けて生まれた新しいニーズになるんじゃないだろうか。FacebookとかTwitterは、能動的な記録保管とも言えるけれど、丁度万歩計やGPSを付けて一日の歩行距離を自動的に保管するように、日々の記録を黙って裏でコピー・保管してくれる、裏タスクサービスって伸びそうだなと思います。

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